引き続きニーズ現地調査を担当。朝から担当地域を自転車で回るものの人影はまばら。そんな中、自宅の倉庫でくつろいでいる男性がいたので「ボランティアセンターの者です。ボランティアでお手伝いできることがあればと思い、この辺を回っています」と声をかけたところ、しばらく考えて「ちょっと床をはがしてほしいところがあるんじゃけど」と言うので、現場を見に家に入りました。
ほとんどの床ははがしてあったのですが、フローリングの廊下の一部が残っています。畳の部屋と違い、フローリングは技術的に難しく、ボラセンでも全てを引き受けられるわけではないので「帰って確認します」と伝え、記録のために写真を撮影。

はがせずに残っている廊下の板

はがせずに残っている廊下の板

帰ろうとしたところ色々と話が始まり、結局1時間以上話し込みました。そのうち印象に残ったお話をいくつか・・・
・決壊した小田川に最近掛けられた橋の路面が前後の道路と同じ高さであるため、橋の下部は道路(堤防)の高さよりも2メートルほど低くなっている。普通はそれを避けるために(増水時に水の流れを妨げないよう)高く作るはずである。また柳・桑の木・竹などが生茂っていたため川の流れをせき止め危険であると撤去を要望していたにもかかわらず、長い間放置された。こうしたことから100%天災とはいいきれない。
・水害は、時間が経つと被害がだんだん大きくなるものだということがわかった。水にぬれた土壁だけを取り除けばよいと考えていたら、断熱材の入った壁の中も濡れており、カビが生えていて、結局壁は全て取り除かなければならない。しかし、電気製品は意外と大丈夫だということもわかった。エアコン、冷蔵庫、ボイラーなども使えている。
・広島にいる子どもやお嫁さんが、色々とモノを持って来てくれた。広島から直接来ることができなかったので島根⇒鳥取を経由して、大型扇風機3台を嫁と孫が2人で運んできた。こっちではホームセンターでも手に入らないので助かった。

サテライトに戻り、一日の活動を終えようとした時、近くに住む女性とばったり。前回7月の滞在時にもサテライトに一輪車を借りに来て話したことがあり、覚えていてくれました。とても明るく話してくれるのですが、彼女の話を聴くうち、私は心が痛くなりました。
・この辺で毎日のように戻って片付けや修復をしているのは、自分のところともう1軒だけ。他の人たちは帰ってこないかもしれない。
・賑やかなところに出ていけない。イオンへも行けない。普段の買い物に行くにも、人がいない時間を狙って、必要なものだけ買って帰ってくる。(自分でも自分の気持ちをどのように表現したらよいのか分からない様子で)かわいそうな被災者と思われるのも嫌だ。
・娘の担任の先生は普段穏やかで怒ったところを見たことがないような人。ところが、先日キムタクが慰問に来た時に、関係ない女の子たちが被災者の中に混じって見に来ていたことに対して非常に腹を立て、それを自分に向かって吐き出していた。いろんなことが心の中に溜まっていたのだと思う。
・以前夜市で買った金魚を大切に育て、大きくなった。避難する際に娘が「どうせ朝には帰ってくるからちょっとでいいよね」と少しだけ餌をあげた。結局それっきりになってしまい、どこに行ったか分からない。金魚がいなくなったのが悲しくて涙が出てきた。それを見た近所の人が「何そんなことで泣いてんの」「どうせどっかで生きてっから」とあしらわれ、また悲しくなった。

今回、多くの被災した方たちから長い時間話を聴く機会がありました。みなさん、誰かに伝えたい、聴いてほしい、という気持ちが強いのではないかと感じました。一方で、全く片付いていない自営のお店に暗い面持で座り込む男性に「ボランティアセンターから来ました・・・」と話しかけたところほとんど反応がなく「今は暑いから・・・9月になってから頼むわ」とボソッと一言だけ返ってきたこともありました。

借上げ住宅への入居もかなり進み、同じ地域に暮らしていた人々がバラバラになっています。孤立の問題を含め、「心のケア」を本気で考えなければならない時期になっていると、改めて感じました。

真備町の名前の由来となった吉備真備像。箭田サテライトが設置されている倉敷市真備支所にあります。

真備町の名前の由来となった吉備真備像。箭田サテライトが設置されている倉敷市真備支所にあります。

(文:小松豊明)

これまでの動き
2018年8月17日最新情報(2018年8月19日)
2018年8月16日最新情報(2018年8月18日)
2018年8月13日~15日最新情報(2018年8月16日)
2018年8月12日最新情報(2018年8月15日)
2018年8月11日最新情報(2018年8月14日)
2018年8月10日最新情報(2018年8月13日)
2018年7月16日・17日最新情報(2018年7月18日)
2018年7月14日・15日最新情報(2018年7月18日)
ネパール現地パートナー・RRNからの応援メッセージ(2018年7月17日)
2018年7月13日最新情報(2018年7月14日)
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小松事務局長、長瀬職員が現地に向け出発へ(2018年7月11日)
大雨による被害に遭われたみなさまへお見舞い申し上げます(2018年7月7日)

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