シャプラニールはこれまでバングラデシュ、ネパールにて防災分野での様々な取り組みを行ってきました。2021年6月に終了したバングラデシュ・サイクロン常襲地での防災事業においては、事業地全体で防災・減災力を高めることができたと言えます(詳細はこちら)。一方で、バングラデシュ全国を見ると、まだまだ災害への備えが十分でない地域が多く存在します。シャプラニールはこれまでの経験を活かし、サイクロン常襲地であるクルナ県コイラ郡で防災活動を展開していくこととしました。

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この地域は2020年にサイクロン・アンファンによる多大な被害を受けており、地域住民が多くの課題に直面しています。

シャプラニールはサイクロン・アンファンの被害状況を受け、2020年に緊急救援活動を実施。その後の調査で、2009年のサイクロン・アイラ以降、復旧作業が行われておらず、堤防が壊れたままだったことが原因で、常に浸水被害が出続けていることがわかりました。そこで、2022年に道や井戸、トイレなどのかさ上げやシェルターの整備といった復旧・復興支援を開始し、2023年以降には地域全体の強靭性を高めることを目的とした防災事業を実施する予定です。

対象地におけるサイクロン・アンファンによる浸水被害
対象地におけるサイクロン・アンファンによる浸水被害

ニーズ把握調査の内容とその結果

対象地のニーズを把握するために、災害時に最も脆弱な立場に置かれる世帯(女性、子ども、障害者、高齢者のいる865世帯)への聞き取り、関係者へのインタビュー、視察によるインフラの状況確認を行いました。

世帯調査(地域住民への聞き取り)の様子

その結果、以下の課題が明らかになりました。

・対象地域の住民は一般的な防災行動についての知識が浅く、平時の備えが十分でない。

例:対象世帯の16%のみが災害に備えて家の基礎を高くしている。

・実際に災害が起きた際には適切な避難行動等が十分に行われていない。

例:家族全員で避難している世帯は58%で、災害発生時に要援護者に手助けをして先に避難させている世帯は15%のみ。

・行政やその他防災アクターがその役割を果たしていない。

例:各ユニオンの災害管理員会は災害時に緊急会議を開催しているものの、定例会議の開催率は26%と低い。

・サイクロンシェルター、トイレ、井戸等のインフラの災害への強靭性が不十分であり、特に女性など脆弱なグループが不便を感じている。

例:調査の対象となった51%の井戸に関しては何らかの不具合があり、修繕が必要となっている。水汲みは伝統的に女性の役割となっており、女性が日々の飲料水を確保するために遠い井戸まで水汲みに通わざるを得ない状態にある。

クルナ県コイラ郡はここまでサイクロン被害が多いエリアであるにも関わらず政府や他のNGOがほとんど活動していない「取り残された地域」です。今後はこれらの課題に取り組んでいくために最も効果的なアプローチについて検討し、防災事業の立案を進めていきます。

視察の対象となった井戸。サイクロ時に浸水して井戸水が塩水化してしまう。

バングラデシュのCOVID-19感染状況(12月21日時点)

COVID-19の累計感染者数は、12月21日時点で158万人に達し、累計死者数は28,051人となりました。新規感染者数は8月以降減少傾向にあり、12月に入ってからは1日300人前後となっています。しかし、12月11日にはバングラデシュ国内でオミクロン変異株が確認されており、感染拡大のリスクもあるため、引き続き警戒が必要となっています。

現地の支援進捗は定期的に更新いたします。今後とも活動の応援どうぞよろしくお願いいたします。