2020年5月に発生したサイクロン・アンファンは、堤防を決壊させ、道を壊し、家や農地を浸水させました。緊急救援活動の実施後、災害への脆弱性を軽減することを目的に、被害の大きかった3つのユニオン(最小単位の行政村)にて復旧支援事業を実施しました。本事業で取り組んだ主な内容を紹介します。

サイクロンシェルター管理委員会のミーティングの様子

①避難道路のかさ上げ

サイクロンシェルター(避難所)につながる道10カ所を再建。約2220世帯が利用しています。道路の高さは前回のサイクロン時に上がった水位よりも高くし、緊急時の救助・避難活動を安全、円滑に行えるようになりました。

かさ上げされた道路と貯水地(右奥)

②共同トイレの設置

27カ所に共同トイレを設置。災害時、特に女性や少女たちは野外で用を足すわけにいかず、夜まで我慢をしていました。

かさ上げされた共同トイレ

③サイクロンシェルターでの安全な水へのアクセス整備

14カ所に貯水タンクと洗面台を設置。約6960世帯が災害時の手洗いや飲料水を確保できています。建物は平時、学校として利用するため、生徒の飲料水にもなっています。

建物の上に設置された貯水タンク。フィルターを通して飲料水にします。
被災時、塩水により使用できなくなった井戸
かさ上げされた井戸

避難道路のかさ上げは、当初予想していた以上の成果がありました。押し固められ整備された道路は、歩行者だけでなく荷車、移動販売者、バイクタクシーなども利用できるようになり働く機会も増えました。また、かさ上げ用の土を採取し、掘り下げられた場所は、雨水の貯水地として、かんがい用水や魚の養殖にも利用できるようになりました。こうして基本的な生活インフラへのアクセスが改善され、地域の住民自身がワークショップで防災への対応能力を高めたことにより、災害への脆弱性が軽減され日々の生活を向上させることができました。


住民の声

災害に対応できる力

フルジュリ・ムンダさん

サイクロンで家は壊され、周辺は浸水し、夫の日雇い仕事も無くなりました。病気になった長男を医者に見せるためローンを組みました。この事業が始まり、道路のかさ上げ作業の仕事に夫と二人で参加しました。おかげでローンを返済でき、土地も購入することができました。共同トイレと井戸のおかげで災害時の不安が減り、そして私たちが作った道路を使って安全に避難することができています。

道路のかさ上げ作業の様子

報告/アシスタント・プロジェクト・コーディネーター シェイク・ナズムル・フダ

活動概要

2020年5月に発生したサイクロン・アンファンの被災地で緊急救援を実施した地域で、2022年2月から1年間、復旧支援事業を実施。災害時における避難路や安全な水及びトイレへのアクセスを確保することを目的にインフラ整備や防災力の向上に取り組んだ。

会報「南の風」300号掲載(2023年6月発行)