こんにちは!インターンの佐藤です。 今回のブログでは、ネパール・コシ州モラン郡にて、2026年5月末に3年間の事業が終了した「気候変動による水害リスクに対するコミュニティレジリエンス強化事業」について紹介します。
この事業は、一つの河川の上流から下流までを一つのコミュニティとして捉え、コミュニティ、区、市村の災害管理委員会が連携し河川防災に取り組みました。その中で、緊急時に対応できるように地域における防災や気候変動に関する理解を深めたり、インフラ設置を進めたり、生計向上のための農業支援をしたりして、地域全体の強靭性を高めるということを目的にしていました。
地球温暖化の影響によって、近年、日本でも豪雨や洪水、土砂災害などの自然災害が多く発生しています。災害が起きたとき、私たちはどのような行動をとればよいのでしょうか。また、地域の中で誰が指揮をとり、どのように避難や支援を進めるのか、普段から考えたことはあるでしょうか。学校や職場では防災訓練の機会があっても、地域で防災について考える機会は、必ずしも多くありません。だからこそ、災害が起きてから対応するのではなく、日頃から地域全体で備えておくことが重要です。
ネパールも日本と同様に、地震、土砂災害、洪水などの自然災害が多い国の一つです。特に、ネパール南東部に位置するコシ州モラン郡は、洪水リスクが「非常に高い」地域に分類されています。過去には、雨期の洪水や地滑り、豪雨によって大きな人的・物的被害が発生しており、過去5年間だけでも2,000世帯以上が家を失い、数百人が亡くなっています。(ネパール国家災害リスク軽減管理庁、2021年)
こうした地域で、シャプラニールは、インフラを整備するだけではなく、地域住民が災害リスクを理解し、自ら備え、災害時に助け合えるコミュニティをつくるための活動を行っています。
コミュニティ災害管理員会の活動
活動の中心となっているのが、Community Disaster Management Committee (コミュニティ災害管理員会、以下CDMC)です。

CDMCでは、地域住民が主体となって毎月定例会議を開催し、地域の災害リスクについて話し合います。例えば、災害対策に必要なインフラの修繕費を集金したり、地域の課題や要望を区や市などの行政に伝えたりするなど、地域に根差した防災活動を行っています。
ある時の会議では、「ハザードマップ」について話し合いました。地域の人々自身がハザードマップを確認することで、「どこが危険なのか」「どこに避難すれば安全なのか」「どのような経路で避難するのか」といったことを具体的に考えることができました。また、避難時に貴重品や個人を証明する書類、常備薬など緊急時に持ち出すための非常持ち出し袋を準備しておくなど、災害が起きる前から準備しておくべきことについても話し合われました。
5月には、降水量が増える雨期(ネパールでは、5月下旬から10月上旬頃まで)を前に、より具体的な災害への備えが行われました。
緊急連絡網を整備し、洪水被害にあうリスクが高い家庭には非常持ち出し袋を配布しました。また、安全な避難場所やシェルターについて情報を共有し、災害時に備えて食料や土のうを準備しておくことについても説明しました。
また、「啓発カレンダー」を地域住民に配布しました。これは、月ごとに想定される災害リスクや、その時期に必要となる対策をまとめたものです。年間を通して防災を意識し、必要な時期に必要な準備ができるよう工夫されています。

避難訓練の実施
モラン郡ウルバリ市のテリ川沿いの2つの集落で洪水が発生したことを想定した避難訓練も実施しました。地域住民やCDMCのメンバーだけでなく、地元警察、赤十字、子どもクラブメンバーなどが参加しました。このような訓練を行ったことで、災害が発生した際に「何をすればよいのか分からない」という状況を少しでも減らし、地域全体で迅速に行動できるようになったと思います。

「もしも」に備えること
これらの活動を通して私が感じるのは、防災は災害が起きたときだけのものではない、ということです。災害が起きた瞬間に適切な行動をとるためには、その前から地域で話し合い、危険な場所や避難場所を知り、役割を決め、必要なものを準備しておくことが大切です。
そして、それは一人だけで取り組むものではありません。地域の人々、行政、警察などが日頃からつながり、互いに協力することで、災害が起きたときにも支え合うことができます。
「いつか起こるかもしれない」災害だからこそ、起きてから考えるのではなく、起きる前にできることを考える。モラン郡での活動は、地域の人々が主体となって防災に取り組み、災害に負けない「コミュニティレジリエンス」を高めていくための取り組みです。
必要なときに、必要なことができるように。そのための日々の備えが、災害から地域と人々の暮らしを守る力につながっていくのだと思います。
事業推進部インターン 佐藤
会報誌「南の風」Vol.308では、本事業の成果と課題を報告しています。
ぜひご覧ください 〉〉〉<特集> 人々の暮らしに立脚した防災へ
