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今、シャプラニールでは、ネパールで新たに児童労働削減事業を始めるための準備が進められています。この準備をする中で、私は一人の友人のことを何度も思い出しました 。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA約10年前、青年海外協力隊としてネパールに滞在していた時に、私はAという女性と出会いました。Aは大学で英語や海外の文化について勉強していたということで、外国人の私にとてもフレンドリーに接してくれ、自然と友人となりました。私は、最初、Aのことを裕福なおうちのお嬢さんなのだろうと思っていました。なぜかというと、教育において地域格差、男女格差がまだまだあるネパールにおいて、彼女は地方の農村地域出身ながらも大学をでており、さらに、行政系のオフィスで仕事をしていて、とても優秀な人だったからです。私の知っている人の中で、そういう経歴の人は、親が行政で働いているか、自らビジネスをしている人が多かったので、彼女もそうなのだろうと勝手に考えていました。

建設現場。こういったブロックをAは運んでいた。

建設現場。こういったブロックをAは運んでいた。

けれども、実際は違いました。ある時、彼女から子どもの頃の話を聞く機会があり、小さいころに建設現場でブロックを運ぶ仕事をしていた時期があったということを知り、とてもびっくりしました。詳しく話を聞くと、当時、彼女の父親はお酒の問題を抱えていて、そのために父親から生活費をえられず、5人姉弟の長女である彼女が家計を支えるために働いていたとのことでした。幸いにも、その後、父親が少しずつ家にお金を入れるようになり、また母親や学校の先生が学才のある彼女を応援してくれ、頑張って優秀な成績をとって、奨学金を得て勉強を続られたことを知りました。私は、そんな彼女の苦労を知らずに、勝手なイメージを持っていたことが恥ずかしくなりました。

これからシャプラニールが始める事業では、Aのように児童労働に陥ってしまった/陥ってしまう可能性のある子どもたちを、行政と地域住民とで協力してサポートし、削減に取り組むというものです。Aは支えてくれる大人がいて、児童労働の苦しい状況から抜け出せましたが、子どもを守る仕組みがきちんと整っていないネパールでは、取り残されている子どもたちのほうが多くいる状況です。Aのことを思うと、個人的にもこの事業には特別な思いがあります。
ネパールで児童労働に陥ってしまう子どもがいなくなり、多くの子どもたちが可能性を実現できるように事業に取り組んでいきますので、皆さま応援よろしくお願いします。
そして、このエピソードを紹介していいと言ってくれたAに感謝を伝えたいです。

sugano-1菅野冴花(すがの・さえか)
海外活動グループ/ネパール事業・ドナー対応担当
大学時代にシャプラニールのバングラデシュスタディーツアーに参加。その後、青年海外協力隊でネパールへ赴任。外国人留学生・研修員のサポート、ソーシャルビジネスでの経験を経て、2019年6月にシャプラニールへ入職。

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<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>