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2019年、台風19号が襲来した時、河川近くに住んでいる私はシャプラニールの活動を通じて聞いた被災体験談を思い出していた。どこが安全か、避難所の情報などについて調べながら、「いつ川が決壊するのかと恐怖と隣り合わせで一晩を過ごした」という話を身をもって感じ、十分だと思っていた自分の防災に対する意識はまだまだ不足していることを痛感したのだった。

「防災について取り組んでいることは」と聞かれても恥ずかしながら「あまりできていない…」と答えざるを得なかった私がシャプラニールと出会い、改めて自分の防災意識と向き合うきっかけとなった。私自身、自然災害で被災した経験はないが、シャプラニールで緊急救援活動や洪水防災事業を通じて、特に水害への恐ろしさを目の当たりにし、改めて防災への危機意識を強くもった。

蛇篭(じゃかご:ワイヤーを籠状に成型し中に石をつめる)を利用し急流を緩めたりや上流から流れてくる土砂などをせき止める等の役割を果たしている。住民が作業している様子。

住民たちが自らインフラ整備の作業をしている

以前、私は洪水防災の事業地・ネパールのチトワン郡マディ市を訪れ、地域コミュニティ全体で防災減災に取り組む住民の意識の変化について話を聞いた。「いつになったら事業の効果が出るんだ…と思っていた」と市役所のスタッフが本音を語ってくれた。住民の意識の変化、そして行動変革には時間がかかる。早く安心して生活できる場所にしたいという強い思いと、この事業への期待からの発言だったと感じた。

今では住民組織を結成するほか、インフラ修理費の積立て、学校での防災教育、市民への研修、コミュニティラジオ・マディFMを通した情報拡散など、地域コミュニティがそれぞれの立場で役割を担い、住民たちの生活を守っている。

そして、これまでは洪水が起こるたびに家屋や家畜が流されたり、人口が流出したりと厳しい自然環境の中で生活していた住民たちも「事業のおかげで自然災害が多いこの地域にも人が戻ってきた」「商店もできて暮らしやすくなった」「田畑に元気が戻った」などと口々にした。今では人的被害はなく、安全な暮らしができていると嬉しそうに話してくれたのが印象的だった。

避難を促す手動サイレンの使い方を見せてくれている様子

避難を促す手動サイレンの使い方を見せてくれた

私にとってこの訪問は、生まれ育った愛着のある地域を守るために奮闘するネパールの人々の災害対応力「レジリエンス」精神を改めて知る機会となった。そしてシャプラニールが目指す「生活上の問題解決に向けた活動」が「すべての人々がもつ豊かな可能性が開花する社会の実現」に少しずつ近づいているということを肌で感じた。

今できること、それは今しかできないことでもある。シャプラニールの活動を止めないために、これからも私も動き続けたい。そして自然災害が多い日本で暮らす市民として、私たちの活動を通して、まずは日本でも減災・防災の取り組みに注目してもらうきっかけとしてくれたら嬉しい。ネパールの人々のように、一人ひとりが環境の変化にどう対応していくか、地球で暮らす市民として、持続的な生活を一緒に考えていきませんか。


interview_nagase長瀬桃子(ながせ・ももこ)
広報グループ
バングラデシュの伝統刺しゅう「ノクシカタ」に惹かれ、商品を通じて見える人々の繋がりの大切さを伝えたい、と思ったことがきっかけで2012年にシャプラニールへ入職。クラフトリンク担当を経て現職。ネパールには「モモ」という蒸し餃子があり、ご縁を感じている。

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<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>