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昔、シャプラニールに転職すると伝えたときに、知人から「なぜ日本にも困っている人がいるのに海外の支援なんかするのか」と聞かれたことがある。私の回答はシンプル。今自分にできること、やりたいことがそこにあったから、だ。 

私は多くのNGO職員が持つ「NGOを目指すきっかけになった途上国での原体験」というものを持たない。 一般企業に勤めていたときは、ずっと社会の問題を見て見ぬ振りをしていた。目の前の仕事を回すので手一杯で、余裕はなかった。でも、自分がこれまでに経験してきた生きづらさがない世の中になるために、誰もが生きやすい世の中にするために、何かしなければという思いはあった。
ずっと
、ビル・ゲイツのように億万長者になったらドーンと寄付しようと考えていたのだが、ある程度年齢になって無理だなと諦め(当たり前である)、代わりにNGO、シャプラニールに転職した。年収は減ってしまうが、稼げていたであろう分を寄付に換算すれば、ビル・ゲイツには遠く及ばないがそれなりの金額になる。私にしては良いアイデアだと思った。 

ネパールの洪水常襲地域の住民との交流会。3年間の支援活動の結果、この地域で洪水により命を落とす人はいなくなった。防災の取り組みについての意見交換では、日本の私たちが学ぶことも多かった。

ネパールの洪水常襲地域の住民との交流会。3年間の支援活動の結果、この地域で洪水により命を落とす人はいなくなった。防災の取り組みについての意見交換では、日本の私たちが学ぶことも多かった。

シャプラニールに入職してから、バングラデシュ、ネパールの貧困の実態を学び、同時に現地の魅力を知った。支援センターに通い、読み書きができるようになったと話すバングラデシュの家事使用人の少女たちの輝くような笑顔、ネパールの洪水常襲地域で誇らしげに自分たちの防災活動を報告してくれた村の男性。自分の中でどこかで、途上国の人々は可哀想で弱い存在といった固定観念があったように思うが、実際はそうではなかった。むしろ私の方が現地から活力をもらうこともある。
シャプラニールは、すべての人が持つ豊かな可能性が開花する社会を目指している。豊かな可能性が開花するのを阻む、貧困のその様々な要因と半世紀向き合い続け、少しずつではあるが、確実に社会が変わってきている。

きっかけや理由なんてどんなものでも良い。あの時はうやむやにしてしまったけど、「なぜ日本にも困っている人がいるのに海外の支援なんかするのか」と言った知人に、あなたは困っている人のために何か行動しているだろうかと問いたい。自分のために、家族のために、世の中を良くしたいという思いは誰にでもあると思う。もちろん、今の生活で精一杯という方もいるだろう。その場合、今は目の前のことに集中してほしいし、私にもそういう時期が人生のうち何度もあった。

手を差し伸べる先が、海外でも国内でもいい。少しでも生き方を見直したい、何かできることを模索している人がいたら、これも何かのご縁、シャプラニールにはマンスリーサポーター制度というものがある。私は転職という形だったが、ぜひ一緒に一歩を踏み出してくれる人がいたらとても嬉しい。 

広報グループチーフ 原囿(はらその)

マンスリーサポーターになる

<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>