窓辺の泣き声

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バングラデシュは本格的なモンスーンの時期に入ったようで、毎日のように雷雨があります。一時40度近かった最高気温は32度ぐらいに下がりましたが、湿度は約90%。なんだか毛穴をサランラップで覆われたような息苦しさを感じます。土曜日の今日も朝からどんよりとした曇り空。なんだか憂鬱になってくるような天気です。
朝昼兼用の遅い食事をとった後、台所で食器を洗っていたら、うちと向かい合わせになっている隣の台所の窓からすすり泣く声がします。以前、隣のお手伝いの少女、ナシマがよく顔を出していた窓です。
驚いて見ると、ナシマが村に返された後に来たお手伝いの少女が窓辺で泣いているのです。彼女の名前はアスマ。ナシマよりはだいぶ年上で、16~17歳ぐらいでしょうか。来てすぐの頃はとてもおとなしく内気な感じで、見かけても話をすることもなかったのですが、ちょっと前に私が屋上で風に当たっていたら、「こんにちは」と話しかけてきて、あれ、ずいぶん感じが変わって明るくなったな、と思っていたところでした。
彼女の雇い主である隣人のナディムからは、彼女は故郷のノアカリに赤ちゃんがいて、時々その子のことを思い出しているのか、ぼーっとしているときがあるんだ、という話を聞いたことがありました。ということは彼女は結婚しているのでしょうが、夫はどこにいるんでしょう。泣いているのは、その赤ちゃんに何かあったんだろうか。それとも何か失敗して叱られたのか。
窓から「どうしたの?」と声をかけたら、泣き腫らした顔を上げて、「姉が死んだの」と言います。
「病気だったの?」「そう」
彼女は女4人男2人の6人きょうだいで、2人いた姉のひとりが亡くなったという知らせが、今日届いたようなのです。
「故郷には帰るの?」「うん」
答えながらも泣き続けています。それ以上話しかけるのもかわいそうなので、そっとしておくことにしました。
彼女がダッカへ働きにきているところをみると実家は貧しい家なのでしょう。亡くなったお姉さんは結婚していたのか、実家にいたのかわかりませんが、いずれにしてもまだとても若かったはずです。お姉さんの治療費の負担もきっと積もっていることでしょう。
アスマは隣のお手伝いさん用の小部屋に籠もってまだ泣き続けています。

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