0601.jpgいわき市では今、ようやく一時提供住宅が決まり、避難所から移り住む人が増えています。そんな中で心配なのが、新しい土地で一人で暮らすことになる高齢者の方々です。

5月27日、生活支援プロジェクトの日用品を届けた中で出会った鈴木正之(すずきまさゆき、82歳)さんもその一人です。

鈴木さんは以前から脳梗塞を患っており、震災が起きた時も、一週間前に病院から退院したばかりでした。

津波で家は破壊され、どうにか避難所に逃げ込んだものの、翌朝から「腰が抜けて」歩けなくなったと言います。

次第に回復し、甥御さんなどの助けで生活を建て直してきたものの、2カ月あまりの避難所生活はつらく、「他の人が先に決まって行くのを見るのは切なかった」と今にも泣きそうな表情で語ってくれました。

鈴木さんが入居したのは、冷蔵庫や電子レンジも備わった民間の賃貸住宅で快適な様子です。しかし、調理道具はありませんので、受け取った箱から早速フライパンや鍋を取り出して、「これはありがたい」と嬉しそうにラベルをはがしていきました。

鈴木さんは今後も親族の助けを得て生活を送れるそうですが、当面の問題は持病の薬をどこで手に入れるかです。これまで通っていた病院は避難所からも近かったため苦労はしませんでした。しかし、一時提供住宅からは通える距離ではないため、近隣で探さなくてはなりません。

別の避難所を運営していた方からも「避難所で元気で何も欲しがらなかったお年寄りが、出て行く時になるとあれこれ求め出し、とても不安そうにしていた」という話を聞きました。

神戸出身の私も、阪神大震災の時に高齢者が仮設住宅に入居してから孤独になり、逆に弱っていったという経験を思い出します。

ようやく落ち着き始めた被災者のみなさんの生活ですが、特に慣れない土地で暮らすことになる高齢者のみなさんへのフォローアップは今後も欠かせないと感じます。

(井坂)