こんにちは、バングラデシュ事業担当の峯です。昨年2022年12月にバングラデシュに出張し、家事使用人として働く少女の支援事業のモニタリングを行いました。今回はシャプラニールがパートナー団体Phulkiと運営している3つの支援センターを訪問し、センターに通う家事使用人として働く少女たちや、雇用主、保護者、地域住民への聞き取りを行いました。事業に関わる様々な関係者と話をする中で、私たちの活動による成果を確認することができた一方、問題の複雑さや現地で活動することの難しさを改めて実感しました。

特に印象に残ったエピソードとして、なかなかドアを開けてくれない雇用主の家を訪問した際の出来事をお伝えします。

閉ざされた扉と心を開くために

事業との関わりがまだない雇用主の家を訪問した時のことです。応答のない雇用主に対し、スタッフが何回もノックをして、大きな声で「話す時間が欲しいので、ドアを開けてください」と呼びかけました。「今日は珍しく日本人の訪問者が来ていますよ」と声をかけても、返事はなし。あきらめかけていたところ、ある男性がその家に荷物を届けに来ました。男性が荷物を渡す際に一瞬だけドアが開き、幼い少女の姿が見えました。スタッフはその隙を狙い、中にいる少女に懸命に話しかけ、ドアを開けてくれるよう再度交渉しました。また、荷物を届けに来た男性にも事情を話し、協力を依頼しました。

雇用主の家を訪問するスタッフ
ドアを開けてくれるよう、雇用主に呼び掛けるスタッフたち

すると、外が騒がしいことに苛立ちを感じたのか、雇用主が突然ドアを開け、すごい剣幕で「いいかげんにしてほしい」と怒鳴りました。彼女は、子どもの期末試験の時期であると同時に、幼い子どもの面倒も見なければならず、忙しくて外部の訪問者に対応している暇がないと説明しました。スタッフは、丁寧に自己紹介と訪問目的の説明を行い、すぐ近くに支援センターがあるので是非一度見に来てほしい、とお願いしました。

話すうちに雇用主の表情は少しずつやわらぎ、最後は笑顔も見せるようになり、センターを一度訪問することに合意。帰り際には荷物を届けに来ていた男性に再び遭遇し、彼も協力してくれると言ってくれました。(男性は雇用主の専属ドライバーであることが後から分かりました)

絶望的な状況だと思っていた中、一瞬で起きた状況の変化にとても驚きました。雇用主に怒鳴られたことは正直ショックでしたが、スタッフと会話をする中で彼女が笑顔になったとき、希望が見えました。後からスタッフが話してくれましたが、最初は彼女のように非協力的である雇用主が多いため、懸命に働きかけて少しずつ意識を変えていくのだそうです。あきらめずに、様々な手を使って何度も雇用主にアプローチするスタッフの折れない心、力強さに圧倒されました。

諦めずに続けることで少女たちの周囲が変わっていく

同じ日に訪問した別の雇用主は、スタッフとの関係がとても良く、雇っている家事使用人の少女を快くセンターに通わせていました。少女とは同じ部屋で寝ており、自分の家族のように扱っているとのことでした。このような良い事例も、スタッフが苦労して少しずつ雇用主の意識を変えていったことにより、たどり着けた結果なのだと思います。

雇用主と家事使用人の少女
スタッフの働きかけにより、家事使用人の少女を家族のように扱うようになった雇用主

スタッフの地道な努力があるからこそ、現地の活動が成り立っていることを改めて実感した瞬間でした。この出張で見たもの、感じたものを忘れずに、今後も現場、そして人びととの対話を大切にしながら、活動に取り組んでいきます。

海外活動グループ/バングラデシュ事業担当 峯