バングラデシュ政府は、SGDs達成にむけて今年2025年までに危険な児童労働の撤廃、2030年までにあらゆる形態の児童労働撤廃を目指しています。しかし実態は、達成には程遠い状況にあります。児童労働の数は減っておらず、児童の家事使用人への暴力事件などが後を絶たちません。
バングラデシュには児童保護法などの児童の権利を守る法律があり、国際憲章にも合意していますが、法的枠組みの脆弱性と政策の適切な実施がされていないため、多くの働く子どもたちは、教育の機会を奪われており、身体的虐待など深刻な危険にさらされています。
シャプラニールでは長年、「家事使用人」として働く子どもの権利に対して活動を行っています。家事使用人の仕事は、児童労働のなかでも危険な労働リストに入っておらず、児童労働としては認知されながらも、具体的な状況把握と撤廃に向けた施策が行われていません。

諦めずに法整備にむけた働きかけを
5月27日、ASD、Educo、シャプラニールの3団体主催で「家事使用人として働く児童の権利と保護のための特別立法の必要性」と題したバングラデシュ法務委員会メンバーとの対話の場を開きました。法務委員会委員長の判事、労働雇用省の副次官、女性児童省の上級次官、児童労働防止国家委員会議長、主催3団体の代表が登壇し、ILO 、ユニセフ、子どもの権利に関わる活動を行うNGO関係者が出席しました。

法務委員会委員長の判事から「児童の家事使用人に法的保護を与えるためには、まず児童保護法と憲法との矛盾(労働可能な年齢など)を正さなければならず、新たな法律を策定し、実施することが重要」と指摘されたことは期待を持たせてくれました。

この法制化と実行のためのモニタリングの重要性について、長年政府間関係者に対する働きかけを続けていますが、実現には時間がかかっています。昨年8月の政変により現在は暫定政権となり、各関係省庁のメンバーも新しくなりました。
すべての子どもたちの権利が守られる社会をめざして、次の選挙で新たな政権が生まれる前に少しでも前進できることを期待し、この1年、働きかけを強めていきます。
バングラデシュ事務所長 内山