2017年10月に続いて、今後の支援の可能性を探るため2018年3月7日から10日までの間、事務局次長の藤﨑文子がコックスバザールの難民キャンプを再訪しました。難民急増から半年が経過した今、難民支援の現状とシャプラニールの支援について報告します。

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昨年8月以降、バングラデシュ政府や地域住民、NGO、国際援助機関が難民の人々の支援を行ってきました。10月に比べると、現地におけるコーディネーションは各段に進んでいました。一方でギャップがあるのも現実です。例えばバングラデシュ政府が中心となって行っている難民登録と、今回WFP(国連食糧計画)が実施している食料配布のための登録制度は連動していません。目的が異なるとはいえ、それぞれかなりの人と時間を投入していることを考えると、一つのシステムに統合されるのが望ましいと思います。

食料配布カード作成に訪れた男性の相談を受けるボランティア

食料配布カード作成に訪れた男性の相談を受けるボランティア


コックスバザールの細かい砂質の土地に新しく拓かれたキャンプは、災害に脆弱です。4~6月、9~11月に発生するサイクロン(インド洋北部・インド洋南部・太平洋南部で発生する熱帯低気圧)がこの地域を襲ったら、ビニールシートと竹でできた仮設テントはひとたまりもありません。また6月から本格的に始まる雨期は、地滑りや冠水を引き起こす可能性が高く、危険カ所の特定と対策が早急に必要とされています。

土壌浸食を防ぐため土嚢と竹の柵の対策が施された地区

土壌浸食を防ぐため土嚢と竹の柵の対策が施された地区

ロヒンギャの人たちをできるだけ早く帰還させたいバングラデシュ政府は、難民という言葉は避け「強制的に退去させられたミャンマー国民」という呼称を使い続けています。ロヒンギャの人々に対するNGO等の支援も、物資配布やシェルター建設、トイレや井戸を含めた衛生環境整備などの物的支援、医療支援および家族計画などに制限しています。人々をバングラデシュに引き留める動機となりそうな生計向上や技術訓練、啓発活動は原則行うことができません。

しかし、ロヒンギャの人たちが支援物資だけに頼る生活には限界があります。生活を支えるための手段の確保、子どもたちへの教育、人身売買や家庭内暴力に関する啓発活動、心に傷を負った人たちへのケア、青少年のような既存の活動でカバーされていない若者を対象とした活動など、今必要とされている活動があります。政府の方針によって活動許可がでないため、必要とされている活動が後回しになっている状況には強い危機感を禁じえません。

日本のNGOピースウィンズジャパンが運営するコミュニティクリニック

日本のNGOピースウィンズジャパンが運営するコミュニティクリニック

忘れていけないのはコックスバザールの人々です。シリア難民を上回る規模のロヒンギャ難民が、地元に与えた影響は計り知れません。難民を受け入れていることで物価上昇や労賃の下落、環境破壊によって生活に大きな影響を受けている地元住民に対して国連機関やNGOの中には支援を始めているところもあります。今後積極的に検討されるべき視点だと考えています。

ロヒンギャの子ども、シャムラプールにて

ロヒンギャの子ども、シャムラプールにて

タナカという木のパウダーをつけたロヒンギャの子ども

タナカという木のパウダーをつけたロヒンギャの子ども


シャプラニールでは現在、今回の現地視察で得た最新情報をもとに、政府や国際機関などの大きな支援から「取り残された人々」を対象に新たな支援を検討しています。
2017年11月23日、ミャンマー、バングラデシュの両政府はロヒンギャ難民のミャンマー帰還に向けた合意書に署名しました。しかしながら、具体的な帰還終了の時期は定まっておらず、ロヒンギャ難民問題は長期化することが予想され、国際社会による継続的な支援が必要とされています。どうか更なるご支援をお願いいたします。

引き続き、皆様からのロヒンギャ難民緊急救援募金および情報シェアのご協力をお願いします。

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