「海外にルーツを持つ子どもたちの今」 田中宝紀さんインタビュー【CHAPTER.2】

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「海外にルーツをもつ子ども」とは国籍に関わらず、両親またはそのどちらかが外国出身者である子どものことです。

10年以上前から海外にルーツをもつ子どもたちへの支援に取り組む田中宝紀さんに、日本で暮らす海外にルーツをもつ子どもたちが直面している問題や、多くの子どもたちの成長を支えるYSCグローバル・スクールでのご活動、共生社会実現に向けて私たち市民ができることなどについて伺いました。

【CHAPTER.1】 海外にルーツを持つ子どもたちを取り巻く問題
【CHAPTER.2】 子どもたちを支えるYSCグローバル・スクールの取り組み
【CHAPTER.3】 子どもたちの可能性を広げられる社会にむけて

 

CHAPTER.2 子どもたちを支える「YSCグローバル・スクール」の取り組み

 
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海外ルーツの子どもたちを専門家の力で支える「YSCグローバル・スクール」。東京都福生市と足立区にある教室とオンラインで、ニーズに合わせた日本語教育、学習支援を行う。

海外ルーツの子どもたちを支える「YSCグローバル・スクール」

2010年から海外ルーツの子ども、若者のための教育支援事業を開始しました。ボランティアではなく有給の日本語の先生、教科学習の担当者、多文化コーディネターとよばれるスタッフが、子どもどもたちが日本の学校で元気に過ごせるように、あるいは社会の中で自信を持って自分らしく生きていけるように教育を通してサポートするという活動を続けています。これまで千数百名の海外ルーツの子ども、若者をサポートしてきました。2016年からZOOMを使ったハイブリット型のオンライン教育も実施しているので全国各地から利用してくれる子どもたちがいます。

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写真提供:YSCグローバル・スクール/YuichiMori (COVID-19感染拡大前に撮影)

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YSCグローバル・スクールのハイブリット型授業の様子。北は北海道から南は沖縄まで受け入れ実績があり、ときには海外から来日前に受講してくれる子どもたちもいるそう。写真提供:YSCグローバル・スクール/YuichiMori

多様なニーズに応えるプログラム

YSCグローバル・スクールでは、昼間は日本語学校、高校受験を控えた子どもたちの予備校、学校外の学びの場を必要とする子どもたちのフリースクールという3つの側面から、学校へ行く手前の段階にいる子どもや若者が学んでいます。

一方で15時〜19時までは、普段学校に行っていて、日本語の会話はほとんど問題ないけれど、学校の勉強が難しいと感じる子どもたちが塾代わりに通う、放課後支援の時間帯になっています。

なので、年間200日、月曜〜金曜9時~19時まで常に何かの授業がある、学校に近いような形態で教育の場を運営しています。就労支援事業も実施しているので、日本語教育受けた後、就労のコースに進む若い人たちもいてある程度んなニーズが来ても、どこかのコースで学ぶことができるような体制が整っています。

 

公式サイトには「ストップいじめ!ナビいますぐ役立つ脱出策」など大人・子ども向けに役立つ情報を掲載されている。

海外ルーツの子どもたちが置かれている状況はさまざまで必要な教育もそれぞれ異なる。YSCグローバルスクールでは多様なニーズに対応する丁寧なサポートが行われている。

 

オンライン授業導入による変化

もともと海外ルーツの子ども支援に関してはかなり自治体間の格差がありました。冒頭でお話した外国出身者があまり暮らしていない「散在地域」で、子どもたちへの日本語教育機会をどうするかが積年の課題だったんです。

例えば、身近に日本語を教えてくれるボランティア団体がある場合でも、開いているのが週1回とか月に2回だけだったりとか、あとは東北地方などの豪雪地帯ですと、雪が降るとボランティアが活動できない、ボランティアのところまで行けないっていう課題が出たりしていてなかなかうまく教育を届けることができていませんでした。

そんな中、2016年にZOOMを導入してから、動画教材のようにただ見るのではなく、画面の向こうの先生と受講者が会話しながら進める双方向同時型のハイブリットの授業を届ける仕組みを整えたことで、これまで日本語教育機会にアクセスできなかった子どもたちへ、オンラインであっても支援を届けられるようになりました。

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YSCグローバル・スクールが取り組むオンライン教育支援サービス 「NICO PROJECT」

ただ当初は、支援に携わる方々などからは、オンラインでは子どもがちゃんと学べないといったお声をいただいたり、動画教材を見せるだけと誤解されたりなど、なかなか理解を得ることが難しい状況が続きました。それが、2020年COVID-19の影響もあって、そんなこと言ってられないという状況が一気に広まり、COVID-19で活動が十分にできない状況にある団体の方々などから、その間、YSCグローバル・スクールで子どもをサポートしてほしいという依頼が届くようになりました。もちろんオンライン上で100%必要なサポートをカバーできるわけではないですが、オンラインの導入と広がりによって、子どもたちの教育機会へのアクセスが格段に上がったというのは間違いないところかと思います。

オンラインでの支援も、最後は人の手が必要

例えば、地方住んでいる海外ルーツの子どもに日本語を教えるとき、基本標準語です。でも本当は地方の子どもたちにとっては、その地域で話されている方言を習得したりとか、同じ学校の子がよく通っている駄菓子屋の名前とか、地域の中でよく利用される電車の駅名とか、そういうことの方が日常生活では重要になってきますよね。でもそれを私たちは届けることはできないので、オンラインで地方の海外ルーツの子どもと繋がったときには、子どもたちの身近な地域で活動する支援者や団体を探すようにしています。そして、協力団体、協力個人という形で連携をお願いして、地域情報やリアルでないと届かないものをその子に届けてもらうようにしていただいています。そういった、最後は必ず人の手が必要だという認識の中で、私たちが届けられるものはここまでで、そこから先は地域の中でサポートしてあげてくださいという流れを作るようにしています。

公式サイトには「ストップいじめ!ナビいますぐ役立つ脱出策」など大人・子ども向けに役立つ情報を掲載されている。

オンラインから日本語の授業を受ける子どもたち。勉強するだけでなく、画面の向こうにいるほかの子どもたちとダンスをしたり、交流する姿も見られるそう。

 

>>>【NEXT】CHAPTER.3 子どもたちの可能性を広げられる社会にむけて

 
 
 

【CHAPTER.1】 海外にルーツを持つ子どもたちを取り巻く問題
【CHAPTER.2】 子どもたちを支える「YSCグローバル・スクール」の取り組み
【CHAPTER.3】 子どもたちの可能性を広げられる社会にむけて


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