こんにちは、国内活動グループインターンの廣瀬です!

前回に引き続き、バングラデシュと日本の学生の交流プログラム『ユース交流プログラム バングラデシュ×日本~児童労働のない社会を一緒につくろう~』の第2回セッションの様子をお伝えしていきます。

バングラデシュチームに引き続き、日本側2チームもそれぞれ日本における子どもを取り巻く社会問題について、調べた内容を発表しました。

日本チームによるプレゼンテーション

 日本Aチーム

まず私自身も一緒にプレゼン作成を進めていた日本Aチームでは、日本の子どもを取り巻く問題の中でも性産業に関わる課題について問題意識を持つメンバーが多く、実態を知りたいという意見が多かったことから、“JKビジネス”を取り上げることになりました。

JKビジネスはJK(Joshi Kousei)と呼ばれる女子高校生たちが会話やマッサージなどのサービスを提供するビジネスのことを指します。しかし実際にはそういった健全なサービスではなく、性的なサービスが提供されていたり、意図しない性被害にあってしまうことがあるなど、少女たちにとってあまりに危険の多いものです。

日本Aチームの発表スライド

日本Aチームの発表スライド

日本とバングラデシュで“貧困”と定義される状態は異なりますが、バングラデシュにおける児童労働の背景と同様、ここでも少女たちをJKビジネスに導く背景の一つには“子どもの貧困”があります。ただ危険性を知らず、アルバイト感覚で始めてしまう少女がいることも事実で、学校や家庭での教育・啓発の不足も大きな要因です。

また学校や家庭での“居場所のなさ”も少女たちがJKビジネスに居場所を求めてしまう理由とされていることから、コロナ禍で学校に行く機会が減ったことで、JKビジネスに関わる少女も、バングラデシュにおける児童労働と同様に増加しているのでないか、と感じました。

▶日本Bチーム

そして日本Bチームが取り上げていたのは、最近問題性がよく指摘されている”ヤングケアラー”

「ヤングケアラー」とは本来保護者が担うべき、家事や介護といった仕事に従事している子どもたちのことを指します。彼らは本来、勉強や友達との交流、自分自身の人生を歩む上で重要な経験をすべき年代であるにもかかわらず、その時間の多くを本来は大人が担うべき家事や家族の介護、ケアに奪われてしまっています。

親が責任をつとめていないなどそれぞれの家庭環境がヤングケアラーを生んでしまっていることは事実ですが、世間がヤングケアラーの存在を認識していないこと、また子どもたち自身が家事や家族のケアを自分がすることを当たり前のことだと思っており、自分が「ヤングケアラー」だと認識できていないことで、問題がよりおもてに出にくくなっています。

日本Bチームの発表スライド

日本Bチームの発表スライド

ダッカ大の学生からは”JKビジネス”や”ヤングケアラー”といった言葉自体初めて知ったという声も多かったうえ、日本のチームメンバーからも自分の国のことだけど、今回調べたことで初めて知ることが多かったという声もあり、両者にとって学びの機会となりました。

“ヤングケアラー”は日本の差し迫った社会課題であり、自分と同年代の学生も直面している問題であるにもかかわらず、私自身も今回の発表で初めてその実態や背景に触れました。

 

ワークショップ 私たちには何ができるのか

各グループの発表とQ&Aを終えた後は、実際に私たち一人一人がそういった子どもを取り巻く課題の解決にどう貢献できるのかどんなアクションを起こしていきたいかを話し合うワークショップを行い、個人やグループで考えた意見を共有しました。0917Dhaka Group photo1具体的にどんな意見が出ていたか、一部ご紹介します!

【周囲の人々に広める】

・このプログラムの後、家族と児童労働について話し合う

・児童労働のような社会問題について家族や友人に伝える

・自分の友人、家族、知人の間で啓発活動を行う

【ソーシャルメディアで広める】

・ソーシャルメディアを使って児童労働に関する知識を共有する

・ソーシャルメディアを利用して、インフルエンサーに児童労働問題を取り上げてもらい、彼らに影響を受けている若い世代がこの問題について学べるようにする

・SNSで日常生活と結びついた児童労働の情報を共有する

【団体やイベントを通じて働きかける】

・青年グループを結成し、雇い主、関係者、親、若者、その他の社会構成員の間で、認識を深めるためのワークショップやセミナーを行う。また、保護者に児童労働の弊害、防止のための政府の取り組み、法律、教育の重要性について知ってもらうためのワークショップも行いたい

・ボランティアをして人々の意識を高めるために貢献する

・児童労働を防止するために活動しているNGOを支援していく

【自分の行動を見直す】

・まずは自分自身が児童労働とその原因や影響、根絶するための方法をもっと学ぶ

・私たちの日々の行動が児童労働につながっているという事実を認識し、児童労働を利用した製品やサービスを個人的に使わないようにする

それぞれのグループが発表で扱っていた課題は異なりましたが、すべてに共通していたのは”社会における認識が足りていない”ということであったため、ワークショップにおいては主に”児童労働への認識を広めるためのアイデア”に焦点が当てられていたように思います。

また実際に単身で始められるようなアイデアが多く、児童労働削減へ貢献することを自分事として考え、実際に自分にできることをやろうとする、双方の学生たちの前向きな姿勢を感じました。

ダッカ大の学生たちの中には既に子どもを取り巻く問題や児童労働について大学で専攻として勉強している方も多く、”団体を作って関係者にセミナーを行う”など、より直接的で具体性のあるアイデアも出ていました!

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バングラデシュの大学生が自国の児童労働問題についてどう考えているのか、どう向き合おうとしているのかを知れたことは、児童労働とバングラデシュ社会の関係を知るうえで非常に貴重な経験だったうえ、自分自身の日本における問題との向き合い方を見つめなおす機会にもなりました。

そして、今回のイベントで初めてダッカ大の学生の発表を聞き、意見を交換できたことで、シャプラニールでのインターン業務を通じて触れてきたバングラデシュにおける児童労働が、より身近な出来事として感じられ、改めて差し迫った課題であることを認識しました。

さらに、自分がプレゼン作成に加わったJKビジネスも含め、日本チーム側の発表でさえ初めて知ることが非常に多く、いかに自分が身近にある課題に目を向けられていなかったのか、気づかされました。

”児童労働”は他の社会課題と比べてバングラデシュ社会の内部でどれほど焦点を当てられているのか?

バングラデシュにおける児童労働は今回参加していたダッカ大の学生一人一人にとって実際どれほど身近な出来事なのか?

ヤングケアラーのような状況がバングラデシュ社会にあったとして、果たしてそれは問題として認識されるのか?

など、まだまだバングラデシュと日本を照らし合わせて考えたいことや、気になるけれどダッカ大の学生に聞けなかったことはたくさんあるので、ぜひ今後もイベントや個人的なかかわりを通じて認識を深めていきたいです。

そして何よりも、今回のイベントを通じて出たアイデアを”実行すること”が重要であると思うので、イベントを通じて得たダッカ大や日本の学生とのつながりを大切にし、できたら協力しながら、今回学んだことを自分の今後の行動に活かしていこうと思います。

国内活動グループインターン 廣瀬瑞帆

▼参加した学生の声を一部ご紹介します▼

・児童労働の問題は、発展途上国に限ったことではないということを知りました。また児童労働問題の背景には、それが”顕在化していないこと”、”意識が低いこと”があると学んだので、周りの人にこの問題について話してみることから始めてみようと思います。

・恥ずかしながら、児童労働の内情を始めとし、自分たちの調べたヤングケアラーなどほとんどの貧困問題は自分が知識のないものばかりでとても勉強になりました。今回のようなプレゼンテーションをする機会は高校ではなかなかないので大学生の皆さんと一緒に作ることができてとても楽しかったし、将来自分が先陣を切って引っ張って行けたらいいなと思います。いつかはアフリカや東南アジアなどの貧困地域へ自分の手で直接、支援をしに行きたいと思います。

・このプログラムを通して、児童労働の背景、責任の所在、児童労働をなくすために何をすべきかなど、様々なことを学ぶことができました。将来自分が児童労働を支援する機会があれば、今回得たアイデアを使って児童労働を減らす努力をしたいと思います。

・日本にも児童労働があり、私たちの生活に直接・間接的に関わっていることを知りました。今回のプログラムをきっかけに、今後も児童労働について学んでいきたいと思います。

・児童労働について多くのことを学んだので、その削減に貢献できるよう、日々の生活から行動を変えていきたいと思います。