2017年8月下旬に発生したロヒンギャ難民危機。ミャンマーからバングラデシュに逃れてきたロヒンギャ難民の数は、現在60万人を超えています。

シャプラニールは現在も現地パートナー団体と協働し緊急支援活動を実施しています。2017年9月下旬には事務局次長の藤﨑文子をバングラデシュ国内のロヒンギャ難民キャンプに派遣し、現地視察及び支援状況などの情報収集を行いました。

この現地視察を踏まえ、シャプラニールでは2017年10月26日に緊急報告会「ロヒンギャ難民の今~バングラデシュ 現地の現状と今後に向けて~」を開催致しました。
報告会では、小松豊明事務局長及びスカイプで参加した藤﨑事務局次長より、今回のロヒンギャ難民問題の背景、及び現地の状況についてご報告させていただきました。

直前の告知であったにもかかわらず、当日は多くの方にお越しいただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
当日の緊急報告会の様子

1. 今回のロヒンギャ難民危機の背景


報告会では、まず小松事務局長より今回のロヒンギャ難民危機の背景についてご説明しました。

ロヒンギャとは、バングラデシュの国境に近いミャンマーのラカイン州北西部に居住するインド・アーリア系ムスリムの人々のことです。ミャンマー政府はロヒンギャの人々を「バングラデシュからの不法移民」とみなし、ミャンマー国籍を付与していません。1970年代、90年代にミャンマー軍による掃討作戦、弾圧が起こり、バングラデシュには既に数十万規模のロヒンギャ難民が逃れていたといわれています。

そして今年2017年8月25日にロヒンギャの武装勢力による警察署襲撃が発生、ミャンマー軍が「テロ掃討作戦」を開始しました。そして100人以上のロヒンギャが殺害されたことをきっかけに、弾圧を受けた多数のロヒンギャの人々が難民となり、隣国であるバングラデシュに近年類を見ない速度で逃れてきているのです。

2. 現地の状況 ・シャプラニールによる支援


次に、小松事務局長及び藤﨑事務局次長より現地の支援状況、ミャンマー・バングラデシュ両政府の対応、シャプラニールが実施している緊急支援活動について動画と写真を交えながらご報告しました。

ロヒンギャ難民のうち18 歳以下が58%、うち5歳以下の子どもは29%を占めており、親を失った子どもも多くいます。難民キャンプでは安全な水が足りておらず、肺炎、下痢、呼吸器系疾患にかかる難民が増えています(※)。現地では支援機関の調整が進み、最低限の食糧支援はほぼ行き渡るようになりましたが、まだまだ必要な支援が足りていない状況です。
※IOM「Need and Population Monitoring Round 5」より

ロヒンギャ難民を取り巻く深刻な現地の状況を踏まえ、シャプラニールでは9月中旬に支援開始を決定し、下記の通り複数のパートナー団体と協働しながら緊急支援活動を進めています。

<シャプラニールによる支援実施内容>
1. パートナー団体ジュマ・ネット及びAssociation for Pisciculture and Cattle Development (APCD)と協働し、ウキア郡とクトゥパロン郡にある非登録難民キャンプの約1,000世帯を対象に食糧配給を実施
※詳細はこちら

コックスバザール県ウキア郡バルカイキャンプ

コックスバザール県ウキア郡バルカイキャンプ

米、圧縮米、ジャカイモ、砂糖、ビスケット、塩

米、圧縮米、ジャカイモ、砂糖、ビスケット、塩

2. パートナー団体Asian Resource Foundation (ARF)と協働し、クトゥパロン難民キャンプ、バルカリ難民キャンプの700世帯(約4,900名)を対象に食料、生活用品、仮設テントに必要な資材の配布を実施予定

3. パートナー団体Young Power in Social Action (YPSA)と協働し、モイナールゴナ難民キャンプにて高齢女性・授乳中の女性がいる1636世帯を対象に、毛布の配布支援を実施予定

3. ロヒンギャ難民支援に何が必要か


また、藤﨑事務局次長からは現地の支援を実施する際に以下のような視点をもつことが重要であるとの指摘がありました。

・一律の食糧配布では難民の栄養状態を改善できない
・トイレ等の設備が未整備のため、女性や少女のプライバシーを守れない
・DV、人身売買を防止するための対策が必要
・ロヒンギャ難民の生活スタイル・文化に配慮した支援が必要(食料、衣類)
・過酷な経験を経た人々への心理ケアサポートが必要
・人々、コミュニティの持つ「強さ」を活かす支援のあり方
・大勢のロヒンギャ難民を受け入れるホストコミュニティへの配慮

当日配布したアンケートにおいては、参加者の方から様々なご感想をいただきました。
 
【参加者の方々からの声】※アンケートより抜粋
・あまり報道されていないこと(生活スタイルや文化などへの配慮が不足している)見過ごされていることが聞けて良かった
・今後具体的に支援活動に関わっていきたいという思いが強くなるきっかけになった
・生のレポートは貴重だった、現場のリアルが分かるイベントで良かった
・難民、避難者からの視点だけでなく、バングラデシュ(政府)側の立場視点を話してもらえたのが良かった
・ホストコミュニティへの配慮という視点は重要だと感じた

 
シャプラニールでは現地ニーズに合わせ緊急救援を行っています。
引き続き、募金および情報シェアのご協力をお願いします。

 

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