2025年11月17日、「家事使用人(英:Docmestic Workers)」が、正式にバングラデシュ国における「労働」として法の下に定められました。

私たちは長きにわたりバングラデシュにて家事使用人として働く少女たちを支援してきました。(事業詳細はこちら)

家事使用人はこれまで、労働として認識はされていたものの、日本で言うところの労働基準法で守られる「労働者」とはみなされておらず、労働法には「家事使用人を除く」と明記されていました。それが故に、労働時間、休日、賃金など、労働者として当たり前に守られるべき権利が保障されていなかったのです。

家事使用人として働く少女

「家事使用人」という仕事がもつリスク

また、家事使用人は閉ざされた家の中で働くことから、暴力が降りかかろうが、家の外からは全く事情を知ることができなく、危険を伴います。加えて、「家事使用人として働く=けがれる」といった蔑視が存在することから、社会的地位を下げる労働でもあります。

身の危険や個人の尊厳を失うリスクが高い労働にも関わらず、2022年に発表されたバングラデシュ労働研究所(BILS)による家事労働状況調査報告書では、家事使用人を雇用する人口は約800万人(人口の約5%)に及ぶとされており、そのニーズが高いことがわかります。

今からさかのぼること10年前、「家事使用人保護・福祉政策(英:The Domestic Workers Protection and Welfare Policy)」が制定され、14歳未満の子どもを家事使用人として働かせることを禁じ、病気休暇や産前産後休暇中に雇用主が給料を支給する義務なども加えられ、家事使用人が公的に保護される兆しが見えてきました。

しかし現実には、家事使用人の少女を送り出す保護者においても、雇用主においても、都合の良い働き口として見られ、ローン返済のためや結婚式の資金作りのために少女たちを働かせています。

シャプラニールは、この政策が発表された2015年から、家事使用人として働く少女たちが、教育や安心して眠ることのできる環境といった子どもとしての権利が守られるよう政策の法制化をめざし、より一層バングラデシュ政府へのアドボカシー活動に取り組んできました。

そしてようやく「労働」の枠に「家事使用人」が入りました!!

冒頭でもお伝えした通り、今年2025年11月17日に「家事使用人」は、正式にバングラデシュ国における「労働」として法律上認められました。これは、バングラデシュの社会発展による市民の意識の変化だけではなく、これまでのシャプラニールが取り組んで来たアドボカシー活動によって実った成果とも言えます。

まだ多く残されている課題

しかし、まだまだ課題は山積です。そもそもバングラデシュでは「危険な労働」に従事するのは18歳以上と限定されていますが、家事労働は「危険な労働」に入りません。現状、14歳以上であれば家事使用人として働いていても「違法」にはならないのです。

2022年時点のブログでは、14歳〜17歳に従事させてはいけない「危険な労働」として家事使用人が追加される見込みだと伝えていましたが、結果として、危険な労働の種類が38業種→43業種に増え、路上での売り子や、廃棄物処理などが加えられたものの、「家事使用人は労働ではない」という判断から、危険な労働のリストに加えられなかっただけではなく児童労働の人数からも除外されています(National Child Labour Survey 2022)

また、他人の家で働いている少女たちを、誰が見つけ、どこに報告し、誰が取り締まっていくのか、そして農村から送られてくる少女たちをどのように減らしていくか、という点も非常に難解な課題です。

現地パートナー団体ASDとの間では、家事労働は密室内での仕事で、ハラスメントや虐待の事例も掴んでいることから、危険な仕事であることは間違いないとの理解から、「家事使用人の少女」に対する個別の法律が必要ではないか、との議論も進行中です。

まずは、14歳未満の少女たちが、家事使用人として働くことのない社会を目指し、今後ともアドボカシーや農村・ダッカ市内での啓発活動に取り組んでいきます。

シャプラニールが支援する家事使用人の少女たち
シャプラニールが支援する家事使用人の少女たち

バングラデシュ事務所長 柳下優美