2024年8月5日、バングラデシュでは、約15年間政権を握っていたシェイク・ハシナ元首相が、市民による抗議活動の激化を受けて首相職を離れ、インドへヘリコプターで退避しました。

民衆蜂起のきっかけ

同年6月、1971年の独立戦争における功労者を公務員へ優先採用する仕組みに対し、主に学生からの反感が高まったことが民衆蜂起のきっかけとなりました。

当時、多くの市民が命を失った独立戦争において、パキスタン軍と戦った人々(功労者)を、「フリーダム・ファイター」と呼んで敬意を示すようになりました。また、フリーダム・ファイター本人が、公務員として優先的に採用されるシステムができました。その後、対象は子どもや孫へと拡大され、特に孫世代まで優遇対象となったことが2024年の大きな争点となりました。

時は2018年、独立から時間が経ってもなお、フリーダム・ファイターの血を受け継ぐ孫までが公務員採用で優遇され続けているという点に疑問を持つ学生が増え、大規模デモが発生していました。

この事象を受け、当時のシェイク・ハシナ前首相率いる政府は、公務員採用における優遇制度を撤廃すると発表しました。

しかし、2024年6月、高等裁判所が2018年の撤廃決定を無効とする判断を示したことで、制度復活への懸念が広がり、学生デモが急速に拡大しました。

学生デモは、当時の政権への別の抗議や疑義なども加わり、さらに加速していくばかりとなり、警察や警備隊が治安部隊として武力行使をした結果、国連の報告では約1,400人(主に若者)が命を落としたとされています(12~13%は子ども)。

2025年11月17日、シェイク・ハシナ元首相及び元内務大臣に死刑判決が下され、インドへの身柄引き渡しを求めましたが、現在まで実現していません。

2年ぶりに公の場に登場

2026年8月5日、インドでハシナ氏による記者会見が開かれ、報道によれば、以下のような趣旨の発言をしました(一部略)。

「今年の12月にバングラデシュへ帰ります。母国へ戻れば、投獄され、死刑となるかもしれない。それでも、国のために行かないといけない。」

「学生たちの不満は、アワミ連盟(前政権)を打倒するために利用された。」

(現政権に向け)「アワミ連盟の政治活動制限を解除するように求める。」

インドとバングラデシュの緊張高まり

8月5日の記者会見に対し、バングラデシュ現政権はインド政府を強く抗議しています。

外務省の声明では、2024年民衆蜂起時の犠牲者を侮辱しているとの強い表現も見られました。

また、この記者会見の後、バングラデシュでは同イベントに参加した元クリケット代表選手及び元アワミ連盟議員のシャキブ氏の実家に火炎瓶が投げ込まれる事件も起きており、今後も緊張状態がしばらく続く懸念があります。

これから12月にかけて、どのような変化が起こるのでしょうか。

バングラデシュ事務所長 柳下優美