地域の女性たちへオリエンテーションをするコマルさん

地域の女性たちへオリエンテーションをするコマルさん


カトマンズ都市部の女性を対象として地震発生時に家の中に潜むリスクを学び、リスクを軽減するための研修・キャンペーン事業を実施しています。
2015年4月のネパール大地震の際、カトマンズは震源から約80km離れていたとはいえ、大きな揺れを感じ、古い家屋が倒壊しました。自分たちの体験を振り返りつつ、家の中や周辺のリスクを認識し、その対処法を学ぶことがこの研修の目的です。

しかし、研修を実施するだけで学んだことが生かされるでしょうか?私たちが特に意識して行っているのは研修での学びが地域に広がっていくように促すことです。頭の中に知識があっても、実際の行動に移されなければ研修の意味は半減してしまいます。また、災害の備えは各家庭内だけでなく、地域の中で共有されることによって地域の防災力アップが期待されます。そのために研修受講者には地域の防災リーダーの役割を期待しています。

業開始から半年たって、参加者は少しずつ自分たちができる方法で、地域に学びを広め始めています。例えば、コマル・シャキャさんは、行政事務所の場所を借り、地域の女性たち向けに、地震に備えた安全な家具の配置方法や、非常持ち出し袋の作り方を共有するオリエンテーションを開きました。一方、レシュマ・シャキャさんは周辺の家を訪問し、地震発生時ガスボンベ※が転倒することの危険性を周知して、その固定作業を行っています。

レシュマさんは、「研修を受講する前は『地震の備え=頑丈な家を建てる』ことだと思っていました。けれど、主婦の私たちにできるちょっとした工夫が家族を守るとわかりました。今、近所を回って、ガスボンベの固定作業をしていますが、『こういうところが危ないのよ』といったおしゃべりをしていると、みんなが興味を持って話を聞いてくれるのがうれしいです」と話してくれました。研修の学びを活かして、コマルさんやレシュマさんのように地域に学びを共有する人々がさらに増えていくように、引き続き努力していきたいと思います。

(カトマンズ事務所長 宮原 麻季)

ガスボンベの固定作業を見せてくれたレシュマさん

ガスボンベの固定作業を見せてくれたレシュマさん

※ネパールでは、ガスボンベのガスを利用することが一般的です。