リレーエッセイ「ネパールという国」

 

私が住んでいたポカラはネパールの中で、リゾートと呼ばれる風光明媚なところ。フェワ湖があって、半袖を着ていながら、澄んだ青い空と庭に咲くブーゲンビリアのかなたに雪を纏った山を見ることができました。

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ポカラからヒマラヤ山麓の村に向かうと、一面の菜の花が楽しめる季節があったり、蛍光オレンジのケシの花が盛りだったりとネパールの自然の色はとても鮮やかでした。村の建物は白い壁に青い柱。転々と緑の畑の中に見える畑仕事の女性たちの真っ赤なサリー。

当時に比べ少なくなってしまいましたが、ポカラのような街の女性たちの多くはクルタスルワールという日常服を着ていました。クルタは上着で、スルワールがズボン、肩にかけるショールがセットになっているものです。私も、滞在中はクルタのお洒落を楽しんでいました。

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クルタのお洒落の楽しみはオーダーメイド。初めから形になっている既製品は少なく、採寸して自分に合ったサイズのものを作りました。クルタ、スルワール、ショール用の布のセットを購入し、襟ぐり、見頃の丈、袖の長さ、ズボンの形を選びます。
ネパールで1週間ほどの滞在ができるなら、オーダーメイドのクルタを作ってみるのもすごく楽しいですよ。

 

私はポカラにあるWSDO(Women’s Skill Development Organization)という女性ばかりが働くNGOで活動していました。新しいクルタで出勤する日は、入り口のゲートをまたいだ直後に誰かに目ざとく見つけられてチェックが入ります。みなお洒落に関心があり、誰かが新しいクルタで出勤すると、いい色だの、流行りの柄だのと言い合っていたことが懐かしい思い出です。

ネパールの女性たちが纏うサリーやクルタの色は、日本ではお目にかかれない鮮やかな色が多く、牡丹色のクルタに抜けるような空色のスルワールという喧嘩しそうな色でも、ほどよく日焼けした肌によく似合って上手に着こなしていました。そんな環境の中にいると、赴任して間もない頃に買ったクルタが地味に見えてきて、だんだんと私も今では考えられない色合いのものにもチャレンジしていました。

p1100801例に漏れず、滞在中には怒ったり、呆れたり、傷ついたり、悲しくなったり、マイナスの感情もたくさん抱くことがありましたが、今、ネパールという言葉を聞いて連想するのは、自然や女性たちの纏う鮮やかな色とこっちまで元気になる明るい笑顔、誰しもが好きになるネパールの姿です。

大地震の後も、普通の人が生活に不便を強いられるようないろいろなニュースが多いネパールです。どうかがんばって・・・とエールを投げながら、社会的弱者といわれるネパールの女性たちの逞しい姿を見てきた身としては、あの人たちならきっと大丈夫、とも思えます。

 

 

p9230249<プロフィール> 赤座 早苗(あかざ・さなえ)
クシクシ倶楽部ボランティア。民間企業に勤務していた時の旅行好きが高じ、ワーキングホリデーでフランスに滞在中、多種多様な価値観に面白味を感じたこと、デザインの仕事を人の役に立てられる場所があるのではないかと考えたことから青年海外協力隊に参加。シャプラニールのパートナー団体でもあるWSDOに配属される。現在は、ネパールなどの自然素材で手づくりする化粧品のメーカーで、デザイン、情報発信の業務に携わる。
<シャプラとのかかわり>
WSDOに配属され、クラフトリンクのものづくりにつくり手として関わったことをきっかけに、帰国後ボランティア活動に参加。会員。

この記事の情報は2016年12月27日時点です。