専門家にインタビュー-01

「海外にルーツを持つ子ども」とは国籍に関わらず、両親またはそのどちらかが外国出身者である子どものことです。

タイでの日本語教師の仕事、日本の小・中学校で海外にルーツを持つの子どもたちへの日本語指導の仕事などを経て、現在の東京学芸大学で南浦涼介さんに、日本における海外にルーツを持つの子どもたちの教育現場の現状や、子どもたちに必要な教育とは何か、また、大学の授業やそのほかに取り組まれている活動などについて伺いました。

PROFILE

南浦涼介(みなみうら・りょうすけ)
1979年鳥取県生まれの阪神間育ち。東京学芸大学 教育学部 日本語・日本文学研究講座 准教授。外国人児童生徒に対する日本語教育、および学校における教科教育のフィールドを中心に据え、「学校教育における子どもたちの言語的文化的多様性をふまえた教育の実現」をめざした教育研究を行っている。

【CHAPTER.1】 海外にルーツを持つ子どもたちのいる学校
【CHAPTER.2】 海外にルーツを持つ子どもたちにとってどんな教育が必要なのか
【CHAPTER.3】 「ちがうこと」を認めあえる多文化共生社会に向けて

 

CHAPTER.1 海外にルーツを持つ子どもたちのいる学校

海外にルーツを持つ子どもたちがいる学校で行われているサポート

地域や学校によって違いがありますが、普通の授業を受けながら週に何回か日本語の指導を受けたりですとか、心のケアを行うとかといったサポートが行われているところだったり、もっと先進的な学校だと、普通の教科の授業が受けられなくなる状況を防ぐために教科の授業をする中で必要な日本語を教えるというところもあります。また、大阪などを中心に母語の力を伸ばしていくといったような言語権の保証もきちんとサポートしているところも場合によってはありますね。ただ、これは地域格差がかなり大きく、サポートしきれていない学校ももちろんまだまだ多くあって、適切な支援を受けられず日本語がわからないまま授業を受けている子どもたちもいます。

専門家にインタビュー-04

 

教育現場で子どもたちを支えてきた「熱意ある先生」

もともと学校として海外にルーツを持つ子どもの支援体制を作らなければいけませんよっていうことを文部科学省から制度として明確に位置づけられたのは2014年(注1)からなので、それまで子どもたちの支援はそうした子どもが多い地域、学校を中心に対応がなされ、それが広がってきたという側面があります。熱意のある先生方によって草の根的に成り立っていった部分もあるので、そういった先生や教育委員会の中でそれを支えてきた指導主事さんが移動したことによってサポートがなくなることもありますね。

(注1) 2014年に外国につながる子どもたちの日本語指導を「特別の教育課程」に位置づける制度が改正された

 

「子どもを育むこと」と「日本語を教えること」のスキルの違い

実際、海外にルーツを持つ子どもたちの日本語支援学級を担当できる先生は誰か? という問題もあります。大学の教員養成過程の中には今のところ日本語教育支援についての専門性をきちんと学ぶシステムが整っていません。あっても1コマだけ「外国人児童生徒の教育」の授業があるくらいで、大学の教育課程してちゃんとそういう教員の資質・能力を育成するシステムが整っているところは非常に少ないんです。

公式サイトには「ストップいじめ!ナビいますぐ役立つ脱出策」など大人・子ども向けに役立つ情報を掲載されている。

南浦さんの「外国人児童生徒への日本語教育」の授業。東京学芸大学は国語教育と日本語教育の両者を専門的に学ぶことができる日本語教育コースのある数少ない大学の1つ。

なので、外部の日本語教師(注2)が学校に入って担当するというのも1つの方法です。ただ一方で難しいのが「子どもたちの力を伸ばす教育」ということを考えた時に、日本語教師は言葉や異文化に対する視点というのはすごく卓越しているけれど、小学校、中学校教員のように子どもたちを学校という場所で育んでいくという意味での専門性が高いというわけでは必ずしもないというところです。逆に、学校教員は子どもたちとの接し方や育み方という視点では長けていますが、日本語の教え方であったり、異文化理解に対する視点という意味ではそこまで専門性が高いわけではない…という2つの異なる場の教師の専門性の溝みたいなものをどうしていくかは大きい課題としてあると思います。

(注2)日本語教師: 国語を教える教師ではなく、外国語として日本語を教える語学の教師。教員免許ではなく、大学の日本語教育の専攻・副専攻課程を修了、または養成講座を終了、検定試験に合格することで資格が得られる。

学校の先生が担いきれない部分を外部から支える

これまで海外にルーツを持つ子どもたちの支援において学校と外部との連携というのは地域のボランティアの人との関わりという話になることが多かったのですが、新しい動きとして学校外でNPOなどの専門家集団と協力関係を作るというのは支援体制を整える一つの方法だと思います。例えば海外にルーツを持つ子どもたちへの学習支援を行うYSCグローバル・スクール(注3)ではオンラインで遠隔の日本語教室を行いながら、学校との連携を取っていたり、一般社団法人kuriya(注4)では、外国につながる子どもたちの進路やキャリアを考える会を行ったりしていますが、そのように学校の中では担いきれない、でも教育として本来必要としているものを提供できる外部の方々と協力して問題を解決していくというのが今後の学校教育現場に必要なことだと思います

(注3)YSCグローバルスクール:NPO法人青少年自立援助センターが運営する、海外にルーツを持つ子どもと若者のための専門的教育支援事業。代表の田中宝紀さんのインタビューはこちら

(注4) 一般社団法人 kuriya:東京を中心に、海外にルーツを持つ若者をはじめとする多様な人々が集う場作りや、アートプロジェクトなどを行なっている。

 

>>>【NEXT】CHAPTER.2 海外にルーツを持つ子どもたちにとってどんな教育が必要なのか

 
 
 

【CHAPTER.1】 海外にルーツを持つ子どもたちのいる学校
【CHAPTER.2】 海外にルーツを持つ子どもたちにとってどんな教育が必要なのか
【CHAPTER.3】 「ちがうこと」を認めあえる多文化共生社会に向けて


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