「子どもの権利」専門家に聞きました 今注目すべき、子どもの権利に関する国内・海外の課題 その2

専門家に聞く「子どもの権利に関する国内・海外の課題」

日本の不登校の子どもたちの居場所をつくっている特定非営利活動法人東京シューレの理事・事務局長の中村国生さん。今回は、日本のフリースクールと不登校の子どもへの取り組みや、「子どもの“働く”権利」を訴えるペルーで働く子どもたちについてお話を伺いました。
PROFILE

中村 国生(なかむら・くにお)
特定非営利活動法人東京シューレ事務局長・理事。不登校やフリースクールの現場 で、主に日本の子どもたちの権利・教育について活動を続ける。2016 年に「教育機会確保法」が実現するなど政策提案にも力を入れている。

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フリースクールを知っていますか?

特定非営利活動法人東京シューレは、日本の不登校の子どもたちへ向けた学校外の居場所・学びの場づくりを34 年にわたって続けてきました。いわゆる「フリースクール」と呼ばれています。

日本では、子どもが学校へ行くのは当たり前、不登校は問題行動、心の病、自由のはき違えなど、長年、否定的な眼差しで捉えられてきました。フリースクールは、こうした差別や偏見も根強い社会の意識や、学校しか選択肢のない教育制度を変えていこうと、子どもとともに親・市民の手で進めてきた運動です。

実は文部科学省が「不登校はどの子にも起こり得る」との認識を示してから28年もの年月が経つのですが、近年になって、ようやく子どもや家庭の問題という見方から、学校や社会・制度の問題であり、学校以外の選択肢もありだな、という認識が広がってきたように思います。

私たちの活動は、重要な根っことして「不登校」とともに「子どもの権利」があります。人は基本的人権として学習権を持っています。日本の憲法や教育基本法では、「教育を受ける権利」と言われていますが、子どもの学習権を保障する義務を一義的には保護者に「9 年間の普通教育を受けさせる義務」として課しています。しかし、子どもの最善の利益の立場に立って学校もよく考えるべきだし、そもそも学校以外にも多様なかたちでの普通教育があっていい、あるべきだと思っています。学校オンリーだから“不登校”が問題となり、学校を休めないことで長期休み明けの子どもの自殺が突出するのです。

2016年12月、私たちの政治への働きかけが実を結び「教育機会確保法」が成立しました。フリースクールや家庭での学習が認められ、不登校を国や自治体が教育機会確保の観点に立って支援するよう定められました。まだ財政支援や経済支援もなく、学校に籍は置かねばならないので課題はありますが、ようやく一歩、道が拓かれたと思っています。

 

働く権利を主張するペルーの働く子どもたち

さて、私たちのフリースクール運動は、子どもの権利や市民でつくる学習の場・教育機関という共通点で、海外の子ども団体や組織、フリースクールなどと交流しています。今回はその中で出会った、ペルーの働く子どもたちをご紹介したいと思います。彼らは一貫して、児童労働の禁止を頭ごなしに掲げる国際社会に異を唱えているのです。

最初に出会ったのはパトリシアという16歳の少女でした。パトリシア(愛称パティ)は「ナソップ(MNNATSOP)」という働く子どもの全国組織の代表の一人でした。パティは東京シューレにやって来たときに、ペルーの働く子どもたちの過酷な環境や自らの境遇、社会状況、その中で自分たちの権利を守るための組織をつくって闘っていること1万人以上の子どもがつながっていること、そういった運動が中南米の各国で組織され、交流があり、アジアの働く子ども団体ともつながっていることなど、力強く明快に語ってくれました。

パティたちは、自らの境遇や置かれた状況に照らして、児童労働の禁止を求めるのではなく、働くことによる自己形成や成長、尊厳ある仕事を求めて運動しているというのです。

 

条約に批准したことで悪化した環境

ペルーでは 2017 年の貧困率が 21.7%、人口 3310 万人のうち 719 万人が貧困層で増加しており、 経済協力開発機構(OECD)は「ペルーの中間層のうち 40%はいつでも貧困層に転落する脆弱性があり、インフォーマル就労者の 80%は貧困層が占めている」と報告、改善を警告しています。

フジモリ政権以後、新自由主義経済政策を採り国際通貨基金(IMF)のもとでのインフラ整備、国営企業の民営化等により貧富の格差が拡大、国際的な投資を得るためには国際ルールにのっとることが重要ということで、2002年に国際労働機関(ILO)が労働環境整備のため定めた ILO 条約 182号(最悪の形態の児童労働禁止)、138号(14 歳以下の児童労働禁止)に批准します。

ところが、 すでに子どもが働くという日常、社会、経済が現実としてあり、必要となっているにもかかわらず、それが「違法」とされアンダーグラウンド化したことでよりブラック化し、見えない搾取が横行するという構図ができてしまいました。ナソップの子どもたちはその批准に反対していました。自分たちを守るはずであるものが、より悪い環境をもたらしている、警官は自分たちから見逃し料だと言って働いて得たお金をピンハネしていく、と。

 

ナソップが目指し取り組んでいること

ナソップはペルー働く子ども・若者全国運動(MNNATSOP:Movimiento Nacional de Ninos, Ninas y Adolescentes Trabajadores Oragnizados del Peru)の頭文字をとった略語で、宗教、民族、地域を超えて子どもと若者が中心となった運動が必要だということで1996 年に結成されました。現在では1万4千人の働く子どもたちがつながる運動組織になっています。2 年に1回全国大会を開き、およそ100人が集まって約5日間の合宿が行われ、活動の見直し、困難やトラブルなども含めた活動状況の点検、子どもの権利条約や国内法の勉強会などを行なっています。

ナソップの運動の目的は、子どもの権利を守ること、特に働く子どもの権利擁護です。ナソップは、子ども自身が社会を変えていく存在、主役であるという意識を、働きながら、活動しながら、互いに深め社会での役割を認識していく運動なのです。

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2019年月に来日し、シューレ大学に来訪・交流したタニア・パリオナさん。タニアさんは1985年生まれ、ナソップに参加し、その後大学進学。現在は国会議員に当選し働く子どもたちのアドボカシー活動を精力的に行っている。

 

多様な学びが選べる社会を目指して

今年は子どもの権利にとって重要な節目の年です。東京シューレでは、特に不登校に関して子どもの権利を改めて考え直す取り組みを始めています。「不登校の子どもの権利宣言」採択10周年の取組です。

この宣言は、10年前、東京シューレの子どもたちが子どもの権利条約を学ぶ活動の中から生まれ、採択されたものです。子どもの権利条約は、自分たちの ためのものでもあるはずだ、とのきづきから学習会が始まり、それを宣言として、大人に、社会に、仲間に訴えかけました。「一、教育への権利 学校 へ行く・行かないを自身で決める権利がある…」、「二、学ぶ権利 学びたいことを自身に合った方 法で学ぶ権利がある…」、「学び・育ちのあり方を選ぶ権利 学校、フリースクール、フリースペース、 ホームエデュケーションなど、どのように学び・育つかを選ぶ権利がある…」と続きます。

私たち大人は、この声に応え責務を果たす必要がある、そう考えて、多様な学びを保障する法律をつくる運動を加速していき、それが冒頭紹介した「教育機会確保法」となって議員立法で実現しました。この法律も、今国会から3年以内の見直し作業に入っており、私たちは多様な学びを選択できるしくみや公費支援のしくみを盛り込むような改良を目指しています。

ぜひ読者の皆さまも、今年の子どもの権利をめぐる動き・取組にご注目いただき、伴走していただきたいと願っています。

「子どもの権利」専門家に聞きました 今注目すべき、子どもの権利に関する国内・海外の課題 その2

2002 年に東京シューレで行ったナソップ全国代表の子どもたちとの交流パーティー。

※この記事は2019年3月に発行したシャプラニールのオピニオン誌「もうひとつの南の風」Vol.21「子どもの権利でつながる東京シューレとペルーの働く子どもたち」を一部編集して転載しています。

 
 
 


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