スタッフの想い

シャプラニールには、東京事務所、バングラデシュ事務所、ネパール事務所でおよそ40名の職員が働いています。国際協力NGOの職員が今、考えていることを語ります。


「自分らしく働けるNGO」

東京事務所 海外活動グループ バングラデシュ事業担当
峯 ヤエル(みねやえる)

現場から学ぶ国際協力に憧れて

私は学生の頃から国際協力にかかわる仕事をするのが夢でした。国際協力の分野で役に立つだろうと思い、大学では農学と「持続可能な開発」を専攻し、ボランティア活動を行っていました。機会があれば発展途上国へ足を運び、ブラジルとモザンビークでのインターンを経て、ガーナで農村開発にかかわる仕事に就きました。まさに自分が目指していたような仕事だったのですが、それは思い描いていた内容とは少し違っていました。実際にプロジェクトが行われている農村地にはほとんど行かずに、事務作業を行うことが多かったからです。

結局自分の仕事が何の役に立っているのか良くわからず、もどかしさを感じていた中、外国人がほとんど行ったことのないガーナの農村地で、日本人の青年海外協力隊員(注)が村の人たちと一緒に田植えをしながら活動していることを知りました。私は「それだ!」と思い、自分が求めていることが「現場から学ぶ」ことだと実感しました。これをきっかけに日本の「草の根」を意識した国際協力に興味を持つようになり、そのような活動を行う団体について調べていくうちに、シャプラニールに出会いました。

バングラデシュ北西部に住むサンタル民族の子どもたちから伝統的な踊りを学ぶ様子(右端が峯)

シャプラニールで働いていて思うこと

高校卒業後は海外で暮らしていたため、社会人として日本で仕事をするのは今回が初めてです。入職前は日本語で仕事がこなせるか、職場環境に適応できるかなど、さまざまな不安があったのですが、実際にシャプラニールで働いてみると、そのような不安が吹き飛ぶくらい温かい職場でした。自分の意見を遠慮せずに発言することができ、自分らしく働ける居心地の良い場所だと感じています。また、バングラデシュ事業担当として日々多くのことを学んでおり、個人の成長にもつながっていると感じています。最近はCOVID-19の影響で海外出張に行くことが難しくなりましたが、以前は年に4、5回バングラデシュを訪れていました。インフラ開発が進み、急成長を遂げているバングラデシュのエネルギーにはいつも圧倒されていました。現地の人たちはとてもフレンドリーで、出張に行く度にこちらが元気づけられて帰ってくる感覚がありました。これからも出張に行って、バングラデシュのことをもっと知りたいと考えています。

防災事業をともに進める現地パートナー団体スタッフと(右から4人目)

NGOだからこそできること

最近は多様なアクターが国際協力に取り組んでいますが、NGOならではの強みやNGOにしか果たせない役割があると考えています。利益を追求せずに、市民を代表して支援を行ったり声をあげたりするところがNGOらしさであり、スポットライトが当たらない課題や人々に正面から向き合あっている点では、現代社会において欠かせない存在であると思います。シャプラニールはまさにそのような役割を果たしており、例えば、バングラデシュでは家事使用人として働く少女の問題に取り組む数少ない団体の一つです。特に住み込みで働く家事使用人の少女たちは、家庭という閉ざされた空間で働いているため、誰も知らないところで過酷な状況に置かれています。シャプラニールは現場で活動する中でこの問題に気づき、なかなか玄関のドアを開けてくれない少女たちの雇用主を説得するのに苦労しながら、あきらめずに支援を行ってきました。このような「誰も取り残さない」活動を行うNGOの一員として、より良い社会の実現に少しでも貢献できることを、とても誇りに思っています。

(注)日本の政府開発援助(ODA)の 一 環 とし て 、JICA(独立行政法人国際協力機構)が実施する海外ボランティア派遣制度。隊員は開発途上国で現地の人々とともに生活し、同じ目線で途上国の課題解決に貢献する活動に従事。

家事使用人として働く少女が通う支援センターにて(最後列左より2人目)

PROFILE
フランスの大学在学中にブラジル、モザンビークでインターンを経験。ガーナで農村開発に携わる仕事を経て、2019年に入職。現在は海外活動グループにてバングラデシュ事業・ドナー対応を担当。

会報「南の風」295号掲載(2022年3月発行)