スタッフの想い

シャプラニールには、東京事務所、バングラデシュ事務所、ネパール事務所でおよそ40名の職員が働いています。国際協力NGOの職員が今、考えていることを語ります。


「地域の人たちと共に目指す、災害に強い地域づくり」

バングラデシュ事務所 防災・教育ユニット コーディネーター
モハマド アニスザマン

地域に根付いた持続的な支援を目指して

私は子どもの頃から文化や社会活動に関心がありました。大学では文化人類学を専攻し、 学内の性暴力や学費の高騰に反対する運動や、社会から取り残された人々の権利を守る運動などにも参加していました。私はバングラデシュ、 ネパール、日本で脆弱な立場に置かれている人たちに目を向け、地域の人たちと共に課題解決に取り組むシャプラニールの価値観に強く共感しています。

バングラデシュ北西部に住む少数民サンタルの人たちと(最前列左から4人目)

2009年に発生したサイクロン・アイラの被災地、バゲルハット県ショロンコラ郡での緊急救援活動にかかわり、その後同じ地域で復興、開発、防災・減災分野での事業に携わりました。緊急救援活動後に撤退せずに、地域住民との対話を重ねて丁寧な支援を継続した結果、地域住民との信頼関係を築くことができました。地域全体の防災・減災に対する 主体性を高める上で非常に重要なことは、地域住民の防災能力の強化です。その成功事例として、サイクロン常襲地であるショロンコラ郡で は、防災知識の向上、さらに防災にかかわる行 政関係者や地域との連携が強化されたことにより、シャプラニールの支援終了後も地域の人たちが防災活動のための資金集めを行うなど、極的に行動を起こしています。このように根気よく地域との信頼関係を築き、地域に根付く持 続可能な支援に取り組むシャプラニールの姿勢は、とても大切だと思います。

サイクロン常襲地で地域の人たちと植地をする様子

日々の学びを活動に活かす

現在は、防災・教育事業のコーディネーターとして、サイクロン防災、気候変動、教育分野の事業を統括しています。事業管理、アドボカシー(政策提言)活動、イベント運営、パート ナー団体や事業関係者との関係構築、スタッフ の能力強化など、さまざまな業務に携わっています。日々の業務から学ぶことや気づきはとても多いです。特に印象に残っているのは、2017年に「ぼうさい甲子園」(※)について学ぶために日本に渡航したときのことです。 過去のグランプリ受賞校や、兵庫県立大学院減災政策研究科、兵庫県災害センターなどを訪問し、ぼうさい甲子園の式典でその運営状況を視察しました。学生を巻き込み、地域が一体となり、楽しく防災に取り組むことはとても斬新で味深かったです。その後、学びを持ち帰りバングラデシュ版の「ぼうさい甲子園」を実施しました。実践的な防災教育を通じた取り組みは地域全体の防災意識向上にもつながり、日本での学びを活動に活かすことができました。このような機会を与えてくださった日本の方々に、感謝しています。こうした学びのおかげで、バングラデシュの取り残された人々への支援をより良くすることができています。私自身も、シャプラニールでの仕事を通して成長することができていると感じています。

※「ぼうさい甲子園」とは、阪神・淡路大震災の経験と教訓を未来に向かって継承していくため、学校や地域で防災教 育や防災活動に取り組んでいる子どもや学生を顕彰する事業です。((特非)さくらネットウェブサイトより)

バングラデシュ版「ぼうさい甲子園」の準備の様子(右端)

おわりに

シャプラニールは今年50周年を迎えました。 その貴重な瞬間に立ち会えたことをとても喜ばしく思います。バングラデシュでの50周年記念イベントのスローガンに「人々を信じ、人々と共に、シャプラニールの50周年」を提案しまし た。シャプラニールはたくさんの方々のかかわりや支えがあったからこそ、50周年を迎えることができたのです。この団体の設立者、同僚たち、支援者の方々、パートナー団体、事業地の地域住民の皆さんや関係者に、感謝の気持ちを伝えたいです。これからも、こうした皆さんと共に取り残された人々への支援を継続していけることを願っています。

子どもたちに勉強を教えている様子(左端)

PROFILE

モハマド アニスザマン
2009年にシャプラニール入職。現在は防災・教育ユニットのコーディネーターとしてサイクロン防災、気候変動、教育分野の事業を統括。趣味はボランティア活動、詩の朗読や創作など。あだ名は英語で宝石という意味を持つ「ジュエル」。

会報「南の風」298号掲載(2022年9月発行)