《コラム》スパイス料理研究家・印度カリー子さん

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“スパイスを日本文化に根付かせたい!”

スパイス料理研究家・印度カリー子さん

スパイスの魅力を伝える活動を精力的に行う印度カリー子さん。東京大学大学院で スパイスの研究をする傍ら、初心者向けの スパイスショップの運営やレシピ本の執筆、企業との共同商品やメニューの開発、メディアへの出演など、活躍の場を広げています。

カリー子さんがインドカレーを 広めることになったきっかけや活動に対する想いなどについてお話を伺いました。 インタビュー/京井杏奈(国内活動グループ)

スパイスの可能性は無限
京井:本格的にスパイスを使ってカレーを作る ようになったきっかけや、スパイスショップを 始めた経緯を教えてください。

カリー子:インドカレーが好きな姉のために作 り始めたのがきっかけです。作ってみたら簡単 だし、素材を変えるだけで無限の味わいができるということに、どんどんはまっていきました。 大学生の私でも簡単にできるのに、どうして日 本では広まらないのだろう?という疑問から、 もっとたくさんの人にスパイスカレーを作って もらえるよう、インターネット上で初心者のた めのスパイスショップを始めました。

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京井:もともと海外や異文化に興味があったん ですか?

カリー子:小さい頃から海外に行く機会は多かったです。でも昔は異文化に抵抗感があって、新しいものとか珍しいものとかが嫌いな子 どもでした。今は新しい文化や異国にものすご く興味があるし、大好きです。インドにはスパ イスカレーに出会ってから何度か行っています が、日本人に遭遇する機会も少なく、あのアウェ イ感が心地よくて、すごく好きですね。

京井:シャプラニールは、カレーという誰にで も身近な食を通じて、その国に興味を持ってもらい、そしてその国が抱える課題についても知っ てもらいたい、カレーがそのきっかけになれば と思い、ベンガルカレー作りワークショップや スパイスの販売をしています。カリー子さんの 目指していることを教えてください。

カリー子:スパイスを使うことが特別 なことではなく、日本の食文化に根付 かせたいと思っています。当たり前の ようにスパイスが広まってきたら、食 文化にとどまらず、思いもよらない発 展をとげるかもしれません。例えば、 化粧品会社がスパイスをベースにした アイシャドウを開発するかもしれな い、都市開発をしている人がスパイス をモチーフにした公園を作るかもしれ ない。文化は掛け算で派生していくと思うので、まずは基準になりうる文化を根付か せることが重要だと思うんです。カレーにはそ のポテンシャルがあると思っています。

また、ベーシックな文化が根付きやすいとい う意味で、子どもたちにも広めていきたいです。 方法はいろいろあると思いますが、私が狙っ ているのは学校給食。給食で美味しかったメ ニューって、不思議と覚えていませんか?子ど もたちには「楽しい」「美味しい」というポジティ ブな経験と一緒に伝えていきたいですね!これ は 10 年以内に必ずやります!

京井:給食を通じて、子どもたちに食とともに その国の文化なども伝えていけたらすごくいい 体験になりそうですね。
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社会福祉法人「はらから」と共に
京井:カリー子さんのスパイスセットは社会福 祉法人「はらから」で梱包されており、それが 障害者の自立支援につながっているそうです ね。その想いを聞かせてください。

カリー子:私のポリシーとして、障害者が作っ ているということを、前面に出すことはしてい ません。障害者が作っているから買うという図 式を作りたくないんです。それはお客様に甘え ていると思うから。たまたま手に取ったものが、 実は障害者の自立支援につながっていた、とい うように消費者にとってあくまでもプラスαの 要素になるようにしています。プラスαの要素 だからこそ、こんなことでも支援できるの?と 興味をもってもらえるのだと思います。でもそ れは、私の活動の理念がスパイスを広めること であり、障害者の自立支援がメインではないか らこそ、できることかもしれません。お互いに 依存することなく、独立した形で協同していく 今の関係性がベストですね。

もう一つ目標があります。はらからは月額 7万円の賃金 ( 障害者年金と合わせて月額 15 万 円前後 ) の支払いを目標としているのですが、 私はスパイスセットを作ってくれている方々の 賃金を8万円まであげることを約束していま す。スパイスによって、はらからを世界で一番の障害者施設にすることが夢ですね。障害者が 社会的に弱い存在として、その人たちができる ことしか与えないのではなく、世の中に受け入 れられる、需要が高まるものを私たちがよく考 え、作ってもらうことが活動を継続する上で必 要なことだと思っています。
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コミュニケーションという価値
京井:カリー子さんの活動を見ていると、お客 様やSNSでのコミュニケーションをとても丁 寧にしているように思います。スパイスを広め る活動をする上で、大切にしていることはあり ますか?

カリー子:興味を持ってくれた人や質問をして くれた人などには、なるべく丁寧に対応するこ とを心がけています。今はインターネットでなんでも買い物ができ てしまうので、商品が自分の元に届くまでの過 程が見えづらいですよね。あたかもすべてロボッ トがやっているように見えるけど、そこにはた くさんの人の手が加わっているし、結局は人が やっているんだと思うんです。人と人がすべて をつないでいるので、その過程やコミュニケー ションは大切にしていきたいと思っています。

コミュニケーションが少なくなっている現代 だからこそ、その価値は重要ですよね。私がこ こまでやってこられたのも、たくさんのご縁に 恵まれたから。まさにご縁の賜物です。

京井:スパイスカレーとの出会いから約3年 半、ものすごい躍進を遂げていますね!学業と の両立など、大変な面もあると思いますが、そ の原動力はなんでしょうか。

カリー子:カレーが本当に大好きなんです (笑)。私、カレーに出会うまでは本当につまらない人生だったんです。料理を作ることは好き だったけど、小さい頃から特に夢もなく、大学 生になっても学校と家の往復だけ。そんな時に カレーにハマって、まさに人生が変わりました。 夢中になれること、夢があるってこんなに楽し いんだ!って思いましたね。カレーにものすご く助けられました。私と同じように将来の夢が ない子どもたちは、たぶん夢を聞かれることがとても苦痛だと思うんです。そういう子たちに は、一つハマることを作ってみたら、きっと楽 しいことが起こるって伝えたいですね。

著書を持って

印度カリー子さんの著書を持って

インタビューを終えて
可愛らしさの中に凛々しさと聡明さを持ち合わせるカリー子さん。カレーに対する情熱や行動力、芯の強さ、その魅力にどんどん吸い込まれました。
お話を伺って、カレーやスパイスにたくさんの可能性を感じると共に、シャプラニールでは今後も南アジアが持つ豊かな文化や生活を伝えることで、多様性を認め合い、共に生きる社会を作っていきたい、カレーがそのきっかけの一つになればと改めて感じました。(京井杏奈)

会報「南の風」286号掲載(2019年12月発行)
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PROFILE
vol286_curryko印度カリー子 (いんど・かりーこ)
スパイス初心者のための会社香林館(株)代表取締役。 1996年生まれ。「スパイスカレーをおうちでもっと 手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパ イスセットの開発・販売をする他、商品開発マーケティ ング、コンサルティング、料理教室運営など幅広く活 動。現在は東京大学大学院で食品科学の観点から香 辛料の研究中。著書に『おもくない!ふとらない!スパ イスとカレー入門』(スタンダーズ株式会社)、『ひとり ぶんのスパイスカレー』(山と渓谷社)などがある。

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