《コラム》シンガーソングライター・佐野 碧さん

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“ネパールに歌と光を届けたい”

シンガーソングライター・佐野碧さん

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ネパールで野外ライブを開いてものすごい数の徴収を集めている日本人アーティストがいる。」2016年から1年間ネパール赴任していたこと、そんな噂をきいたことがありました。その時は「そうなんだすごいね」くらいの感想しか持たなかったのですが、そのアーティストこそ今回インタビューする佐野碧さんだったのです。

2015年に起きたネパール大地震の後、チャリティ音楽フェスティバルをネパール各地で開催し、同時にソーラー・ランタンを届ける”HIKARI SONG GIFT”プロジェクトを続けて2019年で5年目を迎えた佐野さん 。同じネパールで活動する仲間として、2018年に東京で行われたライブにご招待いただいたのがきっかけで知り合い、今回のインタビューをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。佐野さんがネパールを支援するようになった経緯やネパールに対する思いを伺いました。

インタビュー 小松豊明(事務局長)


ーネパールでの活動のきっかけ、2015年の大地震
小松
:普段はどんな活動をされているのですか

佐野:日本では東京や神奈川、大阪などを拠点に音楽活動を行っています。出身地である仙台にもよく仕事で行きます 。アジアではネパール以外にも、タイのバンコクでライブを行ったり、先日はミャンマーにも行ってきました。

小松:日本にとどまらずアジアでも活躍されているのですね 。そんな佐野さんがネパールにかわるようになったきっかけを教えてください。

佐野:実は母親が年ほど前からネパールの子どもたちを対象とした学資支援を行っていて、9年前からはネパールに住みながら活動を行うようになりました。成績は良くても、家庭の経済状況などにより学校へ通うことができない子どもたちに対して、学校へ通うために必要な資金を提供しているのです。母はそれ以外にもいろんな活動をしているのですが、子どもだった私は「ネパールの子どもと私とどっちが大切なの!?」と母親を問い詰めることもありました。

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私は仙台出身ということもあり、東日本大震災のあとインターネットラジオやライブにて募金活動なども行ったのですが、納得するまで支援活動をやりきることができませんでした。そんな中、2015年にネパールで大地震が発生し、「出来ることを全力でやるぞ!」と心に誓ったのです。日本で寄付を募り、集まった寄付をもって地震発生から2カ月後に現地へ行きました。

はじめは衛生状態の改善を目指してトイレの普及活動に取り組みました。その活動を通じて、「外から支援物資を持ち込むのではなく、現地にあるものを最大限活用する」という活動スタイルを学びました。

そんな中、「ストリート・ライブ」をやらないか、と声をかけられたのですが、最初は「地震の被害で苦しんでいる人々がたくさんいるのに不謹慎じゃないだろうか」と思い躊躇しました。しかし、実際にテントが並ぶ避難場所で歌い始めると、みんなテントから出て来て、4,000ルピーもの寄付をくれる人もいて、驚きました。

ネパール地震から2ヶ月後、2015年6月タメル旧王宮広場にてストリートライブを行った。 最初は不謹慎ではないかと迷った末の決断であったが、お年寄りから子どもまでが、テントの中から出てきてくれ、一緒に歌い、踊った。

ネパール地震から2ヶ月後、2015年6月タメル旧王宮広場にて行ったストリートライブの様子

そして、暗くなってから歩いていると、全く灯りがなく真っ暗だったため何度も転びそうになった経験から、復興のためには足元を照らす灯りが必要だと考えたのです。

そうして、光と音楽を融合した”HIKARI SONG GIFT”というプロジェクトを開始しました。シンガーソングライターの私ができること、つまり歌を届けるということと、どこででも誰でも平等に照らしてくれる太陽の光を利用したソーラー・ランタンを必要な人に届けることを掛け合わせた活動です。

ー支援する難しさ、ものを提供する難しさを痛感
小松
:佐野さんのネパール支援のルーツはお母さんにあったのですね。ネパールでの活動はスムーズに進んだのでしょうか。

佐野:一回目はソーラー・ランタンを295個持って行ったのですが、配ろうとしたところ、暴動のような状態になってしまいました。数が限られていたため、事前に本当に困っている世帯へ配る予定で段取りをしていたのですが、もらっていない人たちがどこからか情報を得て、騒ぎになってしまったのです。
地元の人が協力してくれて最終的にはなんとか配り終えることはできたのですが、私は唖然としてしまいました。支援する難しさ、ものを提供する難しさを痛感しました。

小松:物資の配布は、きちんと準備をしてやらないと、混乱を招いてしまいますね。私たちも緊急救援の現場では事前に配布対象者や世帯の数、配布方法を確認するといった手順を踏みます。ライブには多くの人が集まったんですよね。

佐野はい。一年目の2016年は首都カトマンズの隣に位置する古都バクタプルで開催しました。あんなに広い場所だとは知らず、当日会場へ行ってみて驚いたのですが、その会場を埋め尽くすほどの人が集まり、およそ千人が参加してくれたのです。次の年はカトマンズのタパタリ、その翌年は開発から取り残された山奥で暮らすチェパンの人々の村でライブを行いました。

2016年4月、第一回目の"HIKARI SONG GIFT" in バクタプールの様子

2016年4月、第一回目の”HIKARI SONG GIFT” in バクタプールの様子

ー楽しいことが好きなネパール人、ライブでもものすごく盛り上がります
小松
:そんな遠隔地の村で、日本人の歌手が歌う歌にどのような反応があるのか興味があります。私の経験からすると、どう受け止めて良いかわからあまり盛り上がらないのではないか、と思うのですが。

佐野:それが、盛り上がるんですよ。大体どこでも数日間同じ場所に滞在するのですが、一日目は確かに、見慣れない私の姿を見ると子どもたちは逃げていきました。二日目には双眼鏡を使って子どもたちに授業を行ったり、ソーラーキットを使い、自身でソーラー・ランタンを作る授業などを通し、村の人々とかかわっていきました。すると、みんなの対応は少しずつ変わって、ライブでもものすごい盛り上がりを見せてくれるようになるんです。基本的に楽しいことが大好きな人たちなんだなあと思います。だから私も楽しくなります。

2016年4月、トイレ造りなどに関わっていたブンガマティでの HIKARI SONG GIFTのイベントの様子

2016年4月、トイレ造りなどにかかわったブンガマティでの”HIKARI SONG GIFT”のイベントの様子

ー音楽の素晴らしさを改めて学んだ、ネパール
小松
:そんなネパールに対する想いをきかせてください。

佐野:複雑ですね。母親がネパールのことしか考えていないみたいで、子どもの頃はネパールのことが嫌いだったのに、結局インド声楽をネパールで勉強したりしているのです。ネパールのどこが好きかと訊かれたら、「人が好き」と答えます。人懐っこくて、笑顔が素敵な人たち、絶対に一人にはしておいてくれない人たち。そして、活動を通じて音楽の素晴らしさを改めて学ぶことができたのも、ネパールのおかげです。

小松:私も、同じ答えをします。ネパールは港も資源もないのでなかなか発展しないと言われてきました。でも、ネパールには「人」という素晴らしい資源がある。観光で世界中の人々を惹きつけるのも、ネパールの人たちの素敵な笑顔やホスピタリティがあるからこそだと思います。これからの活動の展望などについて教えてください。

佐野:2020年3月1日に、1,000人チャリティ・ライブを東京で開催します。日本とネパールの人々による合同のイベントで、有楽町のよみうりホールを会場に1,000人集めるという、これまでにない挑戦です。ぜひ来てくださいね。そして、将来はアジアを代表するシンガーソングライターになって、そのさらに先には世界を代表するシンガーになるという夢があります!
※「1,000人チャリティ・ライブ」は中止となりましたが、無観客LIVEとして配信されています。詳細

小松:世界を見据えているなんて、すごいですね。応援しています!

 

konohito_vol287_skインタビューを終えて
「活動家かアーティストかどっちかにしろ」と言われることがある、と佐野さん。アーティストだったら音楽活動に集中しろ、そんな中途半端なことをしていたら売れるものも売れなくなる、ということのようです。私には、音楽もネパールの人々への支援活動も全力で取り組む佐野さんの姿に中途半端さなどみじんも感じられません。「周りの声など気にせず、そのまま突き進んでください」と伝えました。

会報「南の風」287号掲載(2020年3月発行)
佐野碧さんのインタビュー掲載号をご購入はこちらから


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佐野 碧
(さの あおい)
仙台出身のシンガーソングライター。作詞、作曲、プロデュースを自身で手掛ける。幼少期より世界各国を訪れ、異文化に触れる。学生時代は野球に明け暮れ、リトルリーグで女子初の東北選抜に選ばれる。大学卒業後、上京。インド声楽を学ぶ。Jリーグ国際貢献活動PR動画のBGMに自信の楽曲が採用されたほか、プロ野球の試合で国家斉唱を務めるなど多方面で活躍中。

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