「子ども支援を行う活動家に聞きました」荻上チキさんインタビュー CHAPTER.2『子どもの権利』を守るためのアクション

荻上チキさんインタビュー

社会論やメディア論など評論家、ラジオパーソナリティ、ときには書籍執筆など多方面で活動している荻上さん。一方、「いじめ問題」に取り組むNPO法人「ストップいじめ!ナビ」の代表理事も務め、いじめに悩む子どものための情報発信に力を入れている。今回は、荻上さんの子どもたちの命や尊厳を守る活動、なぜいじめが起きるのか、私たちの生活に潜むストレスとの付き合い方など、統計データやご自身の経験を基にお話しいただきました。
PROFILE

荻上チキ(おぎうえ・チキ)
特定非営利活動法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事、評論家、ラジオパーソナリティ。ラジオ番組「荻上チキ・Session-22」(TBSラジオ)では、2015年度、2016年度とギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティ賞およびラジオ部門大賞)。

キャンペーンTOP»「子ども支援を行う活動家に聞きました」荻上チキさんインタビュー CHAPTER.2 『子どもの権利』を守るためのアクション

【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
【CHAPTER.3】子どもが自分らしく生きられるように

 

CHAPTER.2 『子どもの権利』を守るためのアクション

「いじめはなくせる!」ことを広めるために

 私たちの主な活動は「ストップいじめ!ナビ」のウェブサイトの運営とステークホルダーに対する情報提供です。一緒に活動するのは、弁護士が数十人、図書館職員、ジャーナリスト、NPOスタッフ、いじめ対策で活動している方、デザイナー、精神科医などです。それぞれが知見を活かして、学校関係者や保護者などの大人に向けて、いじめがつくられない生活環境についての講演会を行い情報共有したり、いじめの原因の一つとなるストレスの校則の変更について政策提言を行ったりしています。

 

コロナ禍、「チャイルドライン」の需要が高まる社会で子どもたちは…?

 「ストップいじめ!ナビ」のウェブサイト上では、子ども達がSOSを出せる場として、NPO法人チャイルドライン支援センターが運営する電話やチャットでカウンセラーと無料で話ができる仕組み「チャイルドライン」などを紹介しています。また、数百あるいじめに関する活動をするNPOからあなたにマッチした情報を見つけられますよ、といったサービスも提供しています。こうした活動の情報は、小中学校で直接子ども達に、どうしていじめが起きてしまうのか、やストレス軽減の方法などを話しながら提供しています。

あとは子ども達が使うTikTokやFacebookなどのSNS上でも「ストップいじめ!ナビ」の情報リンクを貼ってもらったり、SNSを安全に利用してもらうガイドラインやいじめ防止と対処のガイダンスを設定しネット上でのいじめ防止の強化をしてもらったりするよう働きかけています。

 電話相談事業については、相談件数は年間20万件程と、増えてきているようです。相談は電話かチャットでできるようになっています。チャット相談はスマホがないと利用ができないのですが、家の電話だと家族に聞かれてしまうなど心配もあるので、以前より増えてきているそうです。一方、電話相談も一定の利用者がいると聞いています。チャット相談は、自分の痛みを言語化して伝えないといけないので、難しい場合は電話相談を利用するという重要な役割になっています。

ただ現状は相談需要が上回り、ボランティアカウンセラーの人手が足りていません。話を聞くにはしっかりと専門的知識を持って接することが必要となるので、「ストップいじめ!ナビ」の私たちが全国の「チャイルドライン」の地域支部などを対象にカウンセラー研修も行っています。

18歳までの子どもが相談できる無料電話サービス「チャイルドライン」

18歳までの子どもが利用できる無料相談サービス「チャイルドライン」公式サイト。

 

過度な校則がいじめを引き起こすストレスに

 今、特に意識して活動しているのが「校則」の問題についてです。校則が厳しいとストレスを増やしてしまうので、色々アプローチをしています。例えば、どうして学校でいじめが起きてしまうのか、検証データや心理学的視点をもって話したりして、ストレスの原因となる学校の環境改善を提案しています。世の中のストレスって全てストレスになるわけではなく、「ストレス体験」を介してとストレスになるんですね。今、心理療法の世界では認知行動療法というのがメジャーになってきています。

人は情報を認知、解釈をして反応をしています。反応の中でも4種類あって、重要なのが認知と行動です。これはほかの2種類の感情と身体的な反応と違って意識的に変えることができます。ストレス体験をよりヘルシーな方向に認知し行動して対処していく、という意味で「コーピング」と言っています。私たちはストレス体験に対して心にも体にも良い(ヘルシー)=害のないコーピングレパートリーを増やしていくことで心理的成長につなげています。

ストレス対処のベーシックな考え方・認知行動療法コーピング(対処)

ストレス対処のベーシックな考え方・認知行動療法コーピング(対処)

 厳しすぎる学校の校則は子どもにとって抑制になることがあります。例えば、ゲームや音楽の持ち込み禁止、他のクラスに入ることは禁止、帰り道に買い食い禁止とか、校則の存在がストレス発散できる手段=コーピングレパートリーを子ども達からも奪ってしまっています。結果的に学校での選択肢は少なくなり、友達と話すか、無言で過ごすかの2択となった場合、友達と楽しく過ごせる人はよいけれど、普段ストレス発散を友達と発散するというよりはマンガ読んだり、映画見たり、ゲームしたりとかカルチャー系のコンテンツでコーピング対応している人にとっては教室の環境はすごいアウェイになるんですね。

同じ教室いる人とコミュニケーションしてね、という無理やりの人間関係がつくられると、ストレス発散の場がなくなり、いじめが人為的に生まれやすくなります。他人をいじめるという悪しきコーピングという行動を取る人が増えていくわけです。こうした悪しきコーピングは長期的になると有害になってくるので、それをどう良いコーピングに置き換えていくかが大切になってきます。

 そもそも子ども達にストレスを与えなければ揉め事って生じないんですよね。余裕がでればおのずと減っていくわけですよ。先生たちにはベーシックなストレスの原因をつくらないようにすることや認知情報療法の考えをもって子ども達に対してアプローチをしていくことが大切と伝えています。
 

「まずは相談してほしい」いじめ相談で7割が改善している

 いじめ問題には、知識を整えることで手応えを得てもらって少しずつ状況改善していくことが一つだと思っています。統計によると、いじめの相談をすると状況が良くなったという子どもが7割もいるんですよ。ところが、世の中の多くでは、いじめの問題なんて相談してもしょうがないと思いがちです。なので、「相談してほしい」ということを大多数がより良くなっているという検証データをもって伝えています。いじめは長引けば長引くほど悪化していくのが特徴なので、早期対応が必要です。

相談後のいじめの変化について検証データをもって説明してくれた荻上さん。

相談後のいじめの変化について検証データをもって説明してくれた荻上さん。

私たちはいじめが育っていく環境を「不機嫌な教室」と呼んでいます。例えば、体罰が蔓延していたり、先生の対応が理不尽だったり、校則が厳しかったり。先生が生徒の話を聞いてくれると感じている学校はいじめが減るというデータもがあります。あと特に先生や保護者には、いかに子どもたちのストレスを除くことに加えて、自分たちが「ストレッサー(不機嫌因子、ストレスを与える原因)」にならないことが重要と伝えています。
そして、子ども達にもそれぞれ役割があります。いじめ仲裁者になることだけが重要なのではなく、通報する人、スイッチャー(嫌な話題になりそうなときにその芽を摘む人)、シェルター(親身になって話を聞き、味方がいると安心させる)となり、直接いじめを止めることができなくても回避できる方法がありますよ、と伝えています。

ほかには、小中学校向けに「いのちの生徒手帳プロジェクト」の導入を呼びかけてかけています。シールに印刷して自分の生徒手帳に貼ってもらいます。そこには、地域のいじめ対策規定提言やいじめ被害を報告する学校内外の連絡先を記入できるようになっています。あとはいじめを受けた時に、どこで誰に何をされたかを記録する「あしたニコニコメモ日記」を提供して、SOSを少しでも発信しやすい環境をつくっています。

 

>>>【NEXT】CHAPTER.3 子どもが自分らしく生きられるように

 
 
 
キャンペーンTOP»「子ども支援を行う活動家に聞きました」荻上チキさんインタビュー CHAPTER.2 『子どもの権利』を守るためのアクション

【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
【CHAPTER.3】子どもが自分らしく生きられるように