児童労働にNO!の意思を示す「レッドカード」を掲げて

毎年6月12日は、国際労働機関(ILO)が定めた「児童労働反対世界デー」です。そして今年2025年は、児童労働に関する世界推計が4年ぶりに発表の年で、さらにはSDGs目標8.7「2025年までにあらゆる児童労働を撤廃する」の目標年でもあります。

6月12日に院内集会を開催

シャプラニールも運営委員を務める児童労働ネットワーク(以下CL-Net)では、この節目の日に、国会議員、ILO駐日事務所、国際協力機構(JICA)、企業、NGOなど一が堂に会し、最新の児童労働の推計や、参加組織・団体からの児童労働削減に関する取り組みについて話し合う、衆議院会館での院内集会を開催しました。

開催冒頭には、CL-Net代表・堀内光子さんから、「子どもたちが子どもらしく過ごせるような活動を皆さんとご一緒に強化してまいりたい思います」と決意表明がありました。シャプラニールの事務局長・藤岡からは、法的に守られない労働環境(インフォーマルセクター)で働くバングラデシュの家事使用人の少女たちの実例を挙げ、「サプライチェーンのみならず現地社員や取引先の人たちが、家庭で子どもを使用人として雇用しないようにする、ということも海外とくには途上国でビジネスや業務を行う日本人として、気にかけていく必要がある 」と、児童労働削減をめざす参加者に向けたメッセージを発信しました。

ILOとユニセフが発表した最新の報告書サマリー

さて、今回の児童労働に関する報告書にはどのようなことが強調されていたのでしょうか。
・世界の児童労働者数は約1億3,800万人。うち5,400万人は健康や安全、発達を脅かす可能性のある「最悪の形態の児童労働」(強制労働や人身売買、売春やポルノ、戦争や犯罪行為など)に従事している。

・2020年よりは2,200万人以上減少。2000年に比べると半減しているとはいえ、これまでに各国で子どもの保護などの対策がなされたにもかかわらず、世界の12人に1人(世界の子どもの人口およそ8%)が依然として働かざるを得ない状況にある。

・SDGs目標8.7「 2025年までにあらゆる児童労働を撤廃する 」の達成は、残念ながら達成できない見込み。今後5年以内に児童労働をなくすには、現在の11倍のスピードであらゆる対策をしなければならない。

・UNICEFとILOから各国政府へ、すべての子どもが教育を受けられるように、特に農村部や危機的な影響下にある地域における質の高い教育へのアクセスを提供すべきである、とも呼びかけている。

●参考● 報告書児童労働の世界推計 2024年版はこちら
(原文/Child Labour: Global estimates 2024, trends and the road forward)

院内集会の様子

今回の院内集会で特に強調されていたのは、「教育の欠如」は児童労働を助長しかねない要因であり、子どもたちが教育を受けられる環境を子どもたちを取り巻く人々(ステークホルダー)が、児童労働の根本的な社会の仕組みを協働して解決しなければならない、ということでした。

具体的には、児童労働に取り組む団体・組織等からのタイムリーな情報発信により、困りごと(連携が必要な事柄)や活動成果を感じてもらうことで、協働したいと考える企業や消費者、NPO、自治体などの皆さんの行動につながる仕組みへと発展させることができるということでした。子どもたちが経済的な負担がない状態で平等に教育を受けられる環境づくりが重要で、それは学校の役割の一つであり、「子どもたちがいつでも戻れる場所」であるというお話もありました。

子どもたちが学び続けられる環境を ーシャプラニールの児童労働 予防・削減の活動

報告書では、アジア太平洋地域において児童労働に従事する子どものうち42%が学校に通っておらず、それは子どものより良い未来への道を阻むと警鐘を鳴らしています。そして、就学を児童労働に対する最も効果的な防御策の1つとして挙げています。 

シャプラニールは、ネパールの児童労働に従事する子どもの送り出し地域である農村で地方行政、コミュニティへの意識啓発や子どもの保護の政策・活動支援を行っていますが、児童労働に陥りそうな家庭に対し、その状況に合わせた個別支援も行っており、その中で就学支援も行っています。さらに2024年からは、学校も重要な関係者として支援しています。子どもたちが学校に通い続けて児童労働に陥らないように、学校が子どもにとって行きたい、学び続けたいと思われる環境にし、また教員や学校周辺の地域住民が、子どもが中途退学しないよう、子ども一人ひとりや家庭状況に気を配るよう働きかけています。 

ネパール 児童労働反対のレッドカードを掲げる児童労働削減事業 事業地の学生たち

バングラデシュで支援している家事使用人として働く少女たちは一日中、他人の家で働き、学校に通っていません。そのため、ベンガル語や算数など基礎教育が学べる支援センターを運営し、少女たちが通えるよう雇用主らを説得しています。これまでに1400人以上が支援センターで学び、そして、200人以上が学校へ編入することができました。 

バングラデシュ 児童労働反対のレッドカードを掲げる支援センターに通う家事使用人の少女たち

ネパールでの教育支援は、児童労働に陥らないようにするための予防策であり、一方バングラデシュの支援は、児童労働を強いられ教育が受けられなかった少女が勉強する機会を得る支援です。方向は異なりますが、その先にめざすのは、子どもたちが今、学び、遊び、そして未来を自分たちの手で選べるようにすること。 

今回、2025年までに児童労働をなくすというSDGsの目標8.7は達成できないことが明らかになってしまったことを悔しく思います。2030年までに達成するためには今の11倍、2060年まででも今の4倍の行動のスピードと規模が必要だと言います。ここであきらめるのではなく、この目標達成に向けて、バングラデシュ、ネパールの人たちとこれまで以上につながりながら、一緒に社会を変えていきます。 


お知らせ

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シャプラニールでは毎年6月を児童労働反対月間とし、「なくそう!児童労働キャンペーン」を実施しています。日常から手軽にできる、児童労働に「NO!」というアクションを一緒に考えてみませんか。一人でも多くの皆さんの意思表明が児童労働削減の一歩となります。

6月22日には、バングラデシュの家事使用人として働く少女支援に関するオンラインイベントを実施します。バングラデシュから中継し、駐在員が事業のこと、また少女たちも話します。お申込みはバナーをクリック!