日本でも報道されていましたが、ネパールでは2026年3月5日に下院議員選挙が行われました。
通常ネパールの国政選挙は5年に一度行われますが、2025年9月に起こった若者たちによる抗議活動の結果、閣僚が辞任に追い込まれ、下院が解散したことに伴って今回の選挙が行われることになりました。
投票日の前後2日間も公休日となり、投票のため多くの人が故郷に帰省し、カトマンズは閑散としていました。
ネパールの投票所
ネパール事務所のスリジャナ職員が投票所の様子を撮ってくれました。投票所では大きな混乱もなく、平和的に投票が行われたそうです。

投票所の多くは日本と同様に学校が使われています。障害者や高齢者、女性専用のレーンが設けられ長時間並ばずにすむようになっています。また各政党にはロゴマークがあり、文字の読み書きができない人でも政党のマークを覚えておけば投票できます。例えばRSP(日本の報道では「国民独立党」)は鐘のマーク、NC(日本の報道では「国民会議派」)は木のマークです。

投票を終えると二重投票を防ぐため親指の爪の付け根に印がつけられます。

今回の選挙への関心の高さ
最新の情報では今回の選挙の投票率は約60%でした。ネパールの選挙権は18歳以上、有権者数は1,890万人ですが、海外居住者は投票できません。ネパールでは海外への出稼ぎが若い世代を中心に毎年増え、全人口約3,000万人のうち少なくとも350万人以上が国外に住んでいると言われていることを踏まえると、この投票率は決して低い数字ではありません。まだ課題はあるものの障害者、高齢者、非識字者、女性などに配慮した投票所運営は投票率の維持につながったとも言えると思います。
これからのネパールの政治
汚職の撲滅、雇用創出などを訴えた新しい勢力であるRSPが小選挙区・比例代表ともに圧勝し、過半数を超え3分の2まで迫る議席を確保しました。ネパール国内でも既成政党との差がこれほど開くとは予想されておらず驚きの声が上がっています。私自身もRSPが躍進しそうだと思ってはいましたが、結果は予想を超えていました。古い政治に不満を持っていた若い世代の多くがRSPを支持したと言われています。
2025年9月の抗議活動は、もともと前政権によるソーシャルメディア禁止措置が発端となったものです。若者たちは、仕事さえあれば家族が離れ離れになる必要はないのに出稼ぎに行くしかない厳しい現実の一方で、特権を持った一部の人たちだけが機会を独占していることをソーシャルメディアから感じてきました。若者たちはソーシャルメディアの遮断を不都合な情報の隠蔽と受け取り、また離れて暮らす家族や友人とのコミュニケーションという心の支えを奪われて「自分たちの置かれている状況をなんとか良くしなければ」という思いを噴出させた結果、今回の政権交代につながったものと思います。
2015年の憲法制定以来、単独で過半数を確保した政党はなく、これまでの政権は連立協定によってつくられてきました。今回はじめて下院で過半数を占めるRSPの党首が首相に任命されることになります。RSPに対してこの国の政治を変えてくれるに違いないという期待の声も大きいですが、この国の産業育成や雇用創出が難しいのもまた事実であり、すぐに人々の暮らしにわかりやすい変化が起こるかどうかは不透明です。
シャプラニールがマクワンプール郡で実施している児童労働削減事業においても、保護者の出稼ぎによって家族がばらばらになってしまうことが、子どもを取り巻く問題をより深刻に複雑にしていると感じています。新しい政府が若者たちの声を反映したクリーンな政治を行い、人びとの暮らしを良い方向に導けるか、ネパールの人びととともに引き続き見ていきたいと思います。
ネパール事務所長 横田 好美
