ロックダウンで行政との手続きがとまっていた児童労働削減事業開始に向けて奔走している現地職員、スリジャナは10代の子ども2人を抱える母でもあります。そんな彼女が見た今のネパールの子ども、教育について書いてもらいました。

<ロックダウン下の子どもの教育>
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大はかつてないほどの混乱を教育にもたらしている。ネパールも例外ではなく、ネパールの学校、教育機関が長期間にわたって閉鎖されている。通常、ネパールでは新学年は4月中旬(ネパールの新年)に始まるが、今年は新型コロナウィルスとロックダウンの影響でまだ学校は閉まったままで、公立・私立学校ともに入学、新学期開始さえできていない。そのため、700万人以上の子どもが学校に行けず自宅待機の状態にあり、また、いつ再開されるのか確かな情報はない。

何ヵ月にも及ぶ教育の完全停止は近い将来子どもの発達に大きな影響を及ぼすだろう。そもそも農村部や都市部の貧困世帯の親は子どもの教育、成長のための選択肢は公立学校に送り出す以外にない一方で、都市部の私立学校はすでにオンライン授業を始め、そこに通う子どもは学習を進めている。教育格差が広がっている。

公立学校に通う子どもはオンライン授業の機会はなく最近始まったラジオを通じた授業だけが教育を受ける唯一の機会だ。ラジオ授業はインターネットへのアクセスがない子どもたちにとって有効となってきている。さまざまな郡で多くの子ども関連の団体と地方のラジオ局が共同して週5日1日最長2時間の授業を放送し、子どもたちが実際に学校に行かなくても教育を受ける機会を逸しないようにしている。ラジオ教育はいろいろなトピックについて教えることができる、危機下における普段の学校教育のよい代替的アプローチだと思う。教師は各学年の1週間の授業計画を準備して授業を行っている。地方自治体も親や子どもにラジオ授業を聞いて勉強するように促している。しかし、ラジオ授業を受けるように監督したり子どもと双方向での授業はできないため、子どもが関心をもって勉強しようと思わないとラジオ授業は活用されないという難しさもある。

このような状況はフラストレーション、ストレス、緊張をすべての子どもたちにもたらしている。ただ、興味深いこともある。ロックダウンが3月24日から始まって2ヵ月ほどは、子どもたちはコンピューターゲームで遊んだり、家族とおしゃべりしたりして楽しんでいたと思う。私の周りでは10代の子どもたちが母親から教わったりYoutubeを見たりして新しいレシピに挑戦し、できた料理をSNSに投稿するのに夢中だった。少なくとも都市部では。また、親が子どもに対する教師という新しい役割を担い始めたことも興味深い。親は子どもと一緒に過ごし、おじいちゃん、おばあちゃんのこと、出身地のことなど家族の歴史を振り返る時間を持ち、親と子どもの間に強い絆が生まれている。最近では学生が家庭の中で学んでいく機会はなかったが、くしくもロックダウンは家庭内の学びのプロセスを今一度呼び起こし、学校で教えてくれることとは異なる、子どもたちの新しい興味や能力を広げる機会にもなっているように思う。

ネパール事務所 プログラムオフィサー
スリジャナ・シュレスタ