昨夜クルナ入りしたダッカ事務所の職員、ポリモールは、今日、第1弾の救援のパートナー団体であるJJSの職員と、同じくJJSをパートナーとして緊急救援活動を検討しているSave the Children UKのスタッフとともに被害の大きかったバゲルハット県に向かいました。バゲルハット県はクルナ県の東隣にある南北に長い県で、南側は海に面しており、沿岸部には世界最大のマングローブ原生林であるシュンドルボン(ベンガル語で「美しい森」の意)が広がっています。

ポリモールたちはこのバゲルハット県の中心都市であるバゲルハットの町を通り過ぎて南下していき、事前にJJSのスタッフから被害がもっとも大きいと聞かされていたショロンコラ郡に入りました。ショロンコラ郡はバゲルハット県の最南端にある人口約25,000人の郡で、その土地の半分以上はシュンドルボン、という地域です。

このショロンコラ郡には5つのユニオン(行政村)があるのですが、その中のひとつ、サウスカリ・ユニオンに入ってその被害のひどさにポリモールも圧倒されているようでした。

電話で「こんなにひどい被害は見たことないよ、アパ」といいます。ここでは99%の家が破壊されているというのです。トタンの家が見渡す限り倒壊して瓦礫の地となり、川や池には家畜の死骸が放置され、ひどい悪臭が漂っているとのこと。サウスカリ・ユニオンの、選挙で選ばれた代表であるユニオン・チェアマンは、このサイクロンで一度に24人の家族・親戚を亡くし、茫然自失の状態だといいます。ほとんどの家庭で誰かしら家族が亡くなっており、中には一家全滅の家もあり、人々は亡くなった家族を埋葬したくても、遺体を包む布も手に入らない状況だというのです。

子どもたちも多くが亡くなり、生き残った子どもたちの中には、帰らない両親を呆然と待ちながら何が起こったのかわからない小さな子どももいるとのことです。バングラデシュの観光名所であり、ベンガルタイガーはじめさまざまな野生動物が棲む自然豊かな「美しい森」が、一夜にして死の土地となってしまいました。

この、もっとも被害のひどいサウスカリ・ユニオンで、まずは救援活動を行おうということになりました。ポリモールは今夜一度クルナに戻り、詳細をJJSのスタッフと相談した上で、連絡をくれることになっています。

サウスカリ・ユニオンは車では行けない場所にあり、モレルゴンジの先で車を降りて、フェリーで川を渡り、そこからバイクなどで行かなければならないとのこと。物資の輸送も車ではできないので、途中から荷車に自転車がついた「バンガリ」と呼ばれるものを何台か借りて積み替えるなどして運ばなければなりません。輸送に手間がかかり遠いので大変ですが、バゲルハット県の中でも援助団体の救援はもっと市街地に近い場所で行われているものがほとんど。今サウスカリ・ユニオンで救援を行っているのは、ここに地域事務所があるバングラデシュのNGO、BRACのみで、まだまだまったく救援の手が足りない状況だというので、ぜひそこで救援を行うべきだと思いました。

東京事務所ともやりとりした結果、ポリモールと同行したSave the Children UKとも役割分担して、この地で救援を行うことにほぼ決まりました。今のところ考えているのは食料や衣料の配布と、池の水を飲み水として使えるようにするためのフィルター・ポンプ装置の設置です。

物資を調達して救援活動ができるのは明日以降になります。

追記:23日から筒井事務局次長が東京事務所から駆けつけてくれることになりました。筒井次長は私の前の前のダッカ事務所長で、二度の駐在経験があり、協力隊時代も合わせるとバングラデシュ滞在歴10年というベテラン。ダッカ事務所のスタッフも「チュチュイ・バイ(ベンガル人は「つつい」の「つ」が言えない)」が来てくれれば勇気倍増でしょう。心強い限りです。