ショヒドミナール.jpg今日2月21日はバングラデシュの言語記念日、そして国際母語の日。この国がまだ新国家パキスタンの一部だった1952年の今日、ウルドゥー語を共通語として押し付けられることに反発するベンガル語公用語化運動が盛り上がる中、警察の発砲により4人の学生が犠牲になりました。それ以来、この日はバングラデシュの重要な記念日となっています。4人の学生への追悼を表した記念碑であるショヒド・ミナールには国の要人ほか多くの人が訪れて花を捧げ、国中で言語・教育・文化に関するイベントなどが行われます。

写真右:ショヒドミナール。別の日に撮ったもの。今日はモニュメント前の広場に花が敷き詰められ、華やかに飾られていました。

これらのイベントの目玉のひとつが、毎年この日の前後1ヶ月にわたってダッカ大学構内のバングラ・アカデミーで行われる、エクシェイ・ボイメラ(21日のブックフェアの意)。今日は仕事は休みなので遅く起きてテレビを見ていたら、ブックフェアに行く人たちや、路上で顔にショヒドミナールの絵やベンガル語の文字をペイントしてもらう子どもたちが映っていました。そういえば、去年はこのブックフェアに行きたいと思いながら結局行かなかったなあ。去年の今頃はまだイスラム過激派の爆弾騒ぎの不安が拭えていなかったし…。今日なんか行ったらものすごく混んでて大変だろうなあ、と思いつつ、賑やかに記念日を楽しむ人々の映像を見ていたら行きたくなってしまいました。

行列.jpgよし、行くぞ、と決意したのがもう3時半すぎ。自宅近くからCNG(天然ガスで走るオート三輪)を拾い、バングラ・アカデミーへ行ってみると、ダッカ大学構内のずっと手前、国立博物館の前あたりから長い長い行列が続いています。「これってもしかしてボイメラの列ですか?」と聞くとそうだとのこと。最後尾をようやく探し出して列に加わりました。 

写真左:ブックフェアに並ぶ行列。ようやくダッカ大学手前まで来たところ。

じりじりと前進しながら前後の人たちと世間話。私の前はオールドダッカで電気屋を営むカレックさん親子、後ろは日本に10年いて5年前に帰国したという日本語の話せるお兄さん。お名前を聞きそびれましたが、彼はラベル印刷の仕事を6年、赤坂のイタリアンレストランで4年働いたそう。帰ってきて自分で事業を起こしたけれど、支払いを滞らせる客が多かったりしてあまりうまくいかず、近々閉じるつもりだ、と言っていました。

カレックさん親子.jpgカレックさんは「あなたみたいな外国から来たお客さんをこんな風に並ばせるのは申し訳ないなあ」とずいぶん気を遣ってくれ、うしろの兄さんも「みんな日本人には好意的だからたぶん前のほうで入れてくれるよ」と言ってくれたのですが、「まあでもこうやって世間話しながら並ぶのも得がたい経験だからいいよ。前に割りこむのもずるいし」といって一緒に並んでいたら、二人ともずいぶん感心してくれた様子。割り込もうとする人を協力して阻止したり、来年はもう来ないぞー、とわめいたり、このまま日が暮れて明日になっちゃうんじゃない、などと冗談を言ったりしながら並ぶこと2時間。ようやくブックフェアの入り口をくぐったときには本当に日が暮れて6時すぎになっていました。

写真右:カレックさん親子。子どもたちも辛抱強く並んでよくがんばったね。 

ボイメラ.jpgカレックさんは「私たちの国の言語記念日のブックフェアに並ぶのに苦労をかけましたねえ。1冊本をプレゼントしますよ」と言って、恐縮する私に最初に入ったブースにあった「バングラデシュの独立における日本の役割」という本を買ってくれました。後ろのお兄さんも門をくぐったあとの押しくら饅頭状態の中、すれ違いざまに身体を触ろうとしたりする連中から私をガードしてくれました。本当にどうもありがとう。

夜になっちゃったけど、本を愛する者としては山のように本が並ぶブースの間を歩くだけでも楽しい。見たところ、一番人気は、フマユーン・アフメッドやイムダドゥル・ミロンなど人気作家のベンガル語小説をたくさん出しているオンノプラカーシュ社のブース。近づけないぐらい混んでいました。

写真左:夜になってもにぎわうブックフェア会場

今日ゲットした本.jpg私はバングラデシュの開発や文化に関する英語の本を出しているUPLのブースで、バングラデシュの女性作家の短編小説のアンソロジー、“Galpa: Short Stories by Women from Bangladesh”、書評を見て読みたいと思っていたイギリス統治時代のベンガルでのインディゴ栽培についての本“Global Blue”、そしてバングラデシュでのテロリズムについてここ2年ぐらいの間に主要紙に載った論評をまとめた“Faces of Terrorism in Bangladesh”、そして別の本屋のブースで大河の中洲(チョール)に住む人々の状況についてまとめた“Charland in Bangladesh”をゲット。あとは知り合いの団体のブースを覗いたりして夜8時ごろまでうろつき、またCNGで帰ってきました。その頃になってもまだブックフェアへの行列は続いていました。

写真右:今日手に入れた本たち

疲れたけど満足。あとは買った本を積んどくだけじゃなくてちゃんと読むことですね。