1月18日、「事例から学ぶ『わが子の在留資格』~キャリアとライフステージに合わせた選択肢」をテーマにネパール人のお母さん向けおしゃべり会「チョウタリ」を開催しました。当日は大人22名、子ども14名の計36名にご参加いただき、活気ある会となりました。
背景:日本で育つ子どもの「進路・キャリア」と「在留資格」の課題
今回このテーマを選んだ背景には、日本で育つ外国にルーツを持つ子どもたちが、将来のキャリア形成において困難に直面するケースが少なくないという現状があります。
例えば、成長した後に「家族滞在」の在留資格のままではフルタイムの仕事に就けないといった制約に気づき、学校卒業後も自立する道が遠のいてしまうようなケースも見聞きします。こうした課題は、子どもが大きくなってから直面してやっと動きだすのではなく、幼少期から家族で長期的な展望を持ち、準備をしておくことが理想です。
しかし、外国籍の子どもたちは在留資格に基づいて日本に暮らしているため、数年先の見通しを立てること自体が容易ではないという人もいます。「中長期のライフプランを描くことが重要だとわかっていても、制度の壁によってプランそのものを作りづらい」という状況が、この課題をより複雑で難しいものにしています。
複雑化する進路選択と教育環境
特に新宿区周辺に住むネパール人世帯にとって、子どもの教育環境には主に3つの選択肢があります。
- 地域の公立学校
- ネパール教育省認可のネパール系インターナショナルスクール
- インド系のインターナショナルスクール

インターナショナルスクールは学費が発生しますが、英語で教育をしています。親自身の在留資格の安定性や、将来的に日本に定住するか母国へ帰国するかといった見通しが不透明な中で、学校選びやキャリア形成を考えなければなりません。日本人の子どもと比較しても、考慮すべきポイントが非常に多く、複雑な状況にあります。
専門家と経験者の声から「将来」をイメージする
イベントでは、JICA海外協力隊の元ネパール隊員で、行政書士・社会保険労務士の村岡大輔さんに、在留資格の仕組みや独立した資格の種類について、最新の動向を交えながらネパール語で解説していただきました。
また、NPO法人CINGAのエスニックコーディネーターで、ネパールルーツの子どもたちのキャリア支援に携わるミナ・サッキャさん や、実際に日本で育ったネパール人の若者2名にも登壇いただきました。子ども時代に感じた苦労や楽しかった経験など、等身大のエピソードが語られ、参加者の皆さんにとって「日本の学校に子どもを通わせ続けること」の具体的なイメージを持つきっかけとなったようです。

交流を通して見えてきた3つの課題
参加者同士の意見交換やヒアリングからは、切実な悩みが浮かび上がってきました。
- 在留資格と進路をリンクさせる難しさ 「子どもの教育」に悩む方は多い一方、それを「在留資格」とリンクさせて長期的なプランを立てているケースは意外と少ない印象を受けました。背景には、制度の不安定さから「先のことが約束されていない以上、長期的な計画が立てにくい」という構造的な問題もあり、「ひとまず家族滞在で」という選択に留まらざるを得ない現状と、今の状況が行き詰った場合のプランBはあまり考えられていないことを感じました。
- 家庭内のコミュニケーションと日本語学習 「子どもが学校のことを話してくれない」「学校からのお知らせを見せてくれない」といった、親子のコミュニケーションに課題を感じている保護者も一定数いました。そのため、保護者自身が日本語を学ぶ機会を求めているという声も多く聞かれました。
- どの言語を優先させるか?(ネパール語・日本語・英語) 「母語、居住地の言語、将来のための英語」のどれを、どの段階で学ばせるかという悩みです。ひとまずインターナショナルスクールに入学させたものの、通学負担や学費の面から、途中で公立校へ転校せざるを得ないといった実例も共有されました。


「ベターな選択」を共に支えていくために
「子どもにとって最善の選択をしたい」という願いは、国籍を問わず共通の親心です。 しかし、不安定な状況や制度の壁がある中では、必ずしも「ベスト(最善)」な選択肢を選択できるとは限りません。
大切なのは、たとえ満点の選択肢を作り出すことが難しくても、正しい情報に基づき、子どもや家族の状況を深く考えた上で、今よりも「ベター(より良い)」と思える道を選び取っていくことだと考えます。
日本で子育てをする世帯が、自分たちで納得のいく選択を積み重ねていけるよう、私たちはこれからも情報共有と対話の場を届けていきたいと考えています。
(この事業は令和7年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業を受けて実施しています。)
事業推進部 宮原麻季
