2025年9月8日の若者たちによる、政治腐敗やSNS禁止令に対する政府への抗議活動に際し、警察が発砲するなどした結果、その犠牲者は74名にのぼっています。学生を含む多くの若者が犠牲となったことへの怒りなどから、9日以降、一部市民によって全国各地の主要な行政機関などが放火、襲撃されました。そのような中、オリ首相は退任しましたが事態は正常化せず、全国に軍が治安維持のため配備されるなど、緊迫した状態になりました。しかし、大統領、軍、若者たちが断続的に話し合いを行い、12日深夜にはスシラ・カルキ氏が若者たちの期待と支持を受けて首相となり、下院は解散されました。スシラ氏は元最高裁判所長官で、ネパールでは初めての女性首相です。その後、彼女は組閣を続けつつ、自分たちの役目は2026年3月5日までに選挙を実施することであると明言しています。 

現在、ネパールでは外出禁止令も解かれ、徐々に学校も再開し、9月23日から始まったダサインをお祝いするために実家に帰省する人々のニュースが例年通りあふれるようになりました。焼失、破壊されてしまった行政機関の建物や警察署などを地域の人たち自身が掃除、修繕する姿も見られています。 

シャプラニールが2023年から南東部のモラン郡で行っている洪水防災事業の現地事務所は、区事務所内に間借りをしていたため、区事務所への放火の影響を受け、残念ながら一部の設備、備品等が焼失、損壊してしまいました。スタッフや地域住民は無事であり、現在、事務所内の清掃を進めつつ、在宅や他事務所を利用しながら支援活動を進めています。 

マクワンプール郡で行っている児童労働の予防・削減事業では直接的な被害はなく支援活動は継続できているものの、能力強化を行っている市村の役場庁舎が放火等の被害にあいました。 

クラフトリンクのパートナー団体や生産者の無事も確認できています。各団体の店舗の営業も再開しています。 

今も、9月8~9日の混乱の最中、脱走した受刑者の多くがまだ再収容されていないなど、治安の不安はあります。3月の選挙が安全かつ公正に実施されるまでは予断は許さないでしょう。 

ネパールは2008年に王政を廃止し、2015年の連邦共和制を採用した新憲法を難産で生み出しました。今回の経験がネパールの歴史の中でどう位置付けられることになるのか、それはまだわかりません。しかし、ネパールの人々の持つ柔軟な力強さを信じ、私たちは、今後も現地の政情、治安を注視しながら支援活動を続けていきます。 

2025年9月26日
認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会