ネパールの南部に位置し平野部が多いチトワン郡ですが、その北端は今回の大地震の震源地でもあるゴルカ郡と接した中山間地帯となっています。そのため、多くの家屋が倒壊するなどの被害が発生しましたが、絶対数としては他の郡に比べて少ないために、ほとんど外からの支援が入っていません。

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シャプラニールではそういった被災世帯へ初期に食糧パックや毛布、タルポリンシートの配布を行いました。その次のステップで必要なものは生活再建のための「お金」ではないだろうかと考えました。チトワン郡は被災したエリアが限定されていることもあり、物流が滞ってはおらずお店も開いていましたので、物資の配布よりも被災者自身が自分の家族に必要なものを必要な量だけ入手できる「お金」のほうが地域経済のためにも被災者自身のためにも良いのではないかと考えたのです。しかし、お金そのものの配布はお酒などに消えてしまったりと適切に活用されないのではないかということで行政からも許可は下りず、代わりにクーポンの発行をすることとなりました。

山崩れの危険があるため移住勧告が出された63世帯に対して、1世帯5000ルピーのクーポンを発行するという支援です。

ポイント1:使えるお店を特定(食品、衣類、日用雑貨などの店)
ポイント2:酒、煙草は購入不可
ポイント3:1クーポン500ルピー×10枚を2回に分けて配布
ポイント4:お店側は500ルピーに対して10ルピーを手数料として得られる
ポイント5:クーポン1枚ずつに村の行政官のサイン入り(信用性を高めるため)
ポイント6:期間限定

クーポンそのものが初めてというネパール人スタッフに理解してもらうのだけでも大変だったため、住民そしてお店の人に理解して適切に使ってもらえるかという新しい試みです。

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そして、最初のクーポン配布開始日から9日目の5月23日、配布エリアを訪問して、その使用状況を確認してきました。意味がよくわからないから使われない、お酒を買おうとした村人とお店がケンカになったなどが起きていないか心配しながらの訪問でした。しかしながら、びっくりするほどスムーズに使われていました。

村の人が買ったものを聞くと、お米、豆、油といった食料品、石けん、サンダルといった身近な日用雑貨でした。二回目のクーポンで子どもの学校の制服や文房具を買うつもりだと話してくれました。「最初は本当にこの紙きれで買い物ができるのか不思議だったよ。お店で本当に使えてびっくりした」、「必要なものを必要なだけ買えてよかった」という感想が聞かれました。

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お店の人に仕組みが分かりづらかったのではないかと聞くと「全然大丈夫さ」、「いつもよりもお客さんが増えたしね」とのこと。お店の人にも手数料が入り、かつお客さんが増えたということで、Winwinの協力関係でクーポンシステムがまわったようです。こういった反応を聞いて、一番胸をなでおろしていたのは住民やお店の人に説明して回ったネパール人スタッフでした。