自宅で仕事をするビヌさん。自宅が被災して借りた家の家賃が家計を圧迫した被災者は多い。

自宅で仕事をするビヌさん。自宅が被災して借りた家の家賃が家計を圧迫した被災者は多い。


ビヌ・マハルジャンさん (40)は、13年間裁縫をして、義母、夫、娘の家族3人を養ってきました。自分の裁縫道具がなかった頃は、自宅から離れた仕立て屋で働き、1枚40ルピー(※)のTシャツを1日に3枚仕立て、月4,000ルピーを稼いでいました。彼女は、外で働きながら家事もこなさなければならず、多くのお金を稼ぐことはできませんでした。その上、彼女の夫には定職がありませんでした。

2015年に起きた地震によって、カトマンズ盆地内にある彼女の自宅は大きな被害を受けたため、地震直後は月3000ルピーの一部屋を借りざるをえませんでした。しかし、地震直後の数カ月間、ビヌさんが仕立ての仕事を続けることができなかったため家賃が払えなくなり、ビヌさん家族は結局、危険で本当は人が住める状態ではない自宅に戻り、今もなお住み続けています。

彼女の家族が基本的な生活水準を満たすためには、月10,000~15,000ルピーが必要です。しかし、地震前後で彼女の収入額に変化はない一方で、地震後は麻痺に苦しむ義母の薬代が嵩み、支出が多くなっていきました。

そのような中で、シャプラニールとパートナー団体のSOUPによる生計向上支援が彼女の元に届きました。支援により、彼女は仕立て用のミシンを2台購入することができ、家事や義母の世話をしながら自宅で働くことができるようになりました。彼女は現在、月に5,000ルピーを稼いでいます。彼女の家族が基本的な生活を送るにはまだ足りない額です。それでも、彼女はとても幸せそうです。自宅で自分の裁縫道具で仕事ができることを喜び、感謝しています。

ビヌさんに特別大きな夢があるわけではありません。ただ、より良い人生を送るために一生懸命働きたいと言っています。この先に成功があるとは限りません。それでも、「一生懸命」がその可能性を高めてくれることは間違いありません。

スリジャナ・シュレスタ(カトマンズ事務所プログラムオフィサー)


※1ルピー=1.06円(2018年2月6日現在)