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大学1年次は国際協力に関心を寄せた仁藤さんでしたが、高校生のときに家庭にも学校にも「自分にはどこにも居場所がない」と感じ渋谷で月25日を過ごすという街をさまよう生活を送った経験から足元にある課題解決に目を向け、現在は10代の少女たちを支える活動を行っています。誰にも「助けて」と言い出せず社会で孤立してしまう少女たちを「支援する・される関係ではなく“共に考え、行動する”こと」を大切しながら、安心できる生活の場を提供し、危険な目に遭うことのない社会を目指し活動されています。

今回は、少女たちの尊厳や権利を守る活動、困難に立ち向かい希望を持って生き抜く少女たちの現状、そして今社会で必要とされている支援とは何かなどについて伺いしました。

PROFILE

仁藤夢乃(にとう・ゆめの)
虐待や性暴力被害を受けた10代の少女を支える活動を行う一般社団法人Colabo(コラボ)代表。夜の街でのアウトリーチ活動、シェルターでの保護や宿泊支援、住まいの提供などをしながら、10代の少女たちとともに虐待や性搾取の実態を伝える活動や提言を行っている。第30期東京都「青少年問題協議会」委員や厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員も務め、2019年には「Forbes Under 30 Asia 2019 社会起業家部門」を受賞。

キャンペーンTOP»「子ども支援を行う活動家に聞きました」仁藤夢乃さんインタビュー CHAPTER.2 『子どもの権利』を守るためのアクション

【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
【CHAPTER.3】子どもが自分らしく生きられるように

 

CHAPTER.2 『子どもの権利』を守るためのアクション

少しずつ、自分のペースで生活をつくっていく少女たち

 Colaboが出会う少女たちは、今日泊まる場所や食べるものなど、毎日、「今日をどう生きるか」で精いっぱいです。これまで自分の気持ちを大切にされたり、意思が尊重される環境で生活していなかった子も少なくありません。そんな少女たちが急に自分の部屋をもって好きなことをしていいよ、と安心できる場所ができると、「自分がしたいことは何か?」と悩んだり、自分に向き合う時間ができることで、これまでの辛かったことを思い出して苦しい時間を過ごすこともあります。何もできない時があったり、すごくやる気に満ちている時があったり。私たちはそうした気持ちの揺れにも付き合いながら、いろんなことを一緒に経験していく環境づくりをしながら一緒に過ごす時間や関係性を大切にして少女たちに関わっています。

無料のバスカフェを開催したときの様子

無料のバスカフェを開催したときの様子

 

フィリピンで遭遇した信じたくない日本人の児童性搾取の現場

 私が高校を中退してひと月のほとんどを渋谷で過ごす生活をしていたとき、前を向いて生きていくきっかけをくれた阿蘇さんという男性に出会いました。当時、彼は日本とフィリピンにルーツのある母子を支援する団体の理事長をされていたので、一緒にフィリピンに行くことがあったんですね。そのとき、マニラの夜の街で女の子たちが日本人相手に売られていたのを見たんです。リサとかアヤとか日本人っぽい名前をつけられて。彼女たちを買いに来ている日本人男性をたくさん見たときに「この人たち知ってる!渋谷で私たちを買おうとして声をかけてくるような人たちがここまで女の子を買いに来てるんだ!」ってびっくりしたんです。女の子たちは、本当は学校に行きたかったけど地元には仕事もないし、貧しいから自分が稼いでいる、と話してくれました。その時は「なんでこの子たちには他に選択肢がないんだろう。どうして日本人男性は堂々と少女たちを買いに来るのか」って疑問に思ったんです。社会の仕組みを知り、女性たちに性搾取される以外の選択肢のある社会にしたいと、この経験が大学に行く動機になりました。

 大学では国際協力ボランティアサークルに入りました。実はシャプラニールのフェアトレード商品を貸してもらい「若者」と「国際協力」をつなぐきっかけをつくるファッションショーも行ったんですよ。海外支援に携わるなかで「日本でも同じように貧困や性搾取に少女たちがさらされている」と周りの学生たちに話しをしたのですが、みな他人事で「日本は恵まれている国だからみんな大学に行けるんだよ」などという反応が返ってきました。海外のことについては、妙に「かわいそう、支援しなきゃ」と言ったりするのに、身近な日本の同世代の問題には他人事のように語ったり、自己責任論や「援助交際も好きでやってるんでしょ」と悪気なく言う人が多いことにびっくりしたのを覚えています。

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 そこで、私はこの日本の現状を知っている者として活動するようになりました。日本では1990年代から児童買春について、「援助交際」という言葉で語られていますが、海外では「児童性搾取」と呼ばれています。「援助」じゃないし、「交際」と呼べる関係性でもない。「支配と暴力」なのに、それを大人から子どもへのサポートみたいに言われてしまう。その頃から女の子たちは好きで体を売るようになったという風にメディアでも取り上げられるようになりました。でも「私たちは『買われた』展」を開催したとき、1990年代に「そうせざるを得なかった」と40代、50代の大人たちから、当時の自分たちも同じ状況だったという声が数多く届いたんです。社会的な構造を見ず、大人の責任に目を向けないで、子ども自身に責任を押し付けることは問題だと思います。
 

人の痛みは自分の痛みでもあること、権利の問題は身近にある

 日本社会では人権の意識が低かったり、自分のことを大切にできなかったりするのは、学校や家庭、公的機関などで大人同士でも、大人と子どもの間でも、対等な関係に触れたり、経験することが少ないことが問題と感じでいます。例えば、日常生活で体罰や理不尽な規則を強制させられていると、それらが人権侵害だと認識できなくなってしまいます。家庭で親から虐待を受けていたり、意見を尊重されない環境では、子どもは親の所有物とされ、一人の人格として見られていないこともある。子どもを保護するはずの機関でも、子どもの権利が守られているとは思えない状況もあります。

 

関係性の貧困-支配と暴力に苦しむ子どもたち

 私は年上だし、経歴も違うし、メディアに出ているし、10代の子とは完全には対等にはなりきれないことを自覚した上で、いかに対等でいられるかを大切にしています。私自身が支配と暴力ではない関係を少女たちと築いていくことで、自分自身や相手を大事にしあえる関係を実感できるようになっていくといいな、と思います。経済的に余裕があって名門校を卒業するような家庭でも、親の過干渉で家に居場所がないと感じて街に出てくる子もいます。「自分はどう考えるのか」「自分は何者なのか」と問われるよりも、大人の言うことを聞きなさいという環境だと、対等な関係もわからず、自分に向き合う時間もないままに過ごしてきています。

一人ひとりと向き合い、これからの選択肢を一緒に考える仁藤さん

一人ひとりと向き合い、これからの選択肢を一緒に考える仁藤さん

 

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【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
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