【報告】講演会「テロのない社会に向けて -ダッカ襲撃事件から3年」開催

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こんにちは!国内活動グループインターンの青柳沙恵です。

2016年7月に起きたダッカ事件から丸3年が経つのを機に、テロの頻発する世界情勢の背景を考え、改めて国際平和のためにできることを見直そうという趣旨のもと、先日7月26日(金)に講座シャプラバ!として講演会「テロのない社会に向けて -ダッカ襲撃事件から3年」を開催しました。ゲストスピーカーとして、特定非営利活動法人パルシック代表理事の井上礼子さんと、聖心女子大学教授の大橋正明さんをお招きし、当会事務局次長の藤﨑文子と3人の講師がお話しました。
当日は多くの方にご来場いただき、ありがとうございました。

 

ダッカ襲撃事件

 

2016年7月に発生したダッカ襲撃事件と記事「I was (almost) a terrorist」

まず、藤﨑文子事務局次長より、ダッカ襲撃事件についてのお話がありました。

藤﨑さん

 

藤崎さんによると、事件発生前から治安の悪化を感じており、2014年以降急増した知識人を狙った暗殺事件を皮切りに外国人を標的とした襲撃が度々発生していたそうです。

そして2016年7月、日本人7名を含む多数の外国人犠牲者を出すダッカ襲撃事件が発生しました。シャプラニールでは、現場のプロジェクトは通常通り実施しつつ安全管理や今後の方針決定など様々な対応に追われた様子、当時の心境を聞くことが出来ました。

中でも印象的だった話は、バングラデシュの英字新聞“Dhaka Tribune”にて2016年7月16日に掲載された「I was (almost) a terrorist」(シャプラニール会員の安田千恵子さん訳)という記事についてです。日常に嫌気がさしていた少年が直面した、何気ない日常に潜むテロリストへの誘いが赤裸々に描かれていて、「自分もテロリストになっていたかもしれない」という少年の心理を紹介していました。

イスラム過激派が生まれる社会的背景として、経済成長に伴う競争の激化や貧困の固定化、不安定な家庭や社会環境、伝統的・宗教的価値観への脅威など様々な要因を挙げて、そこから生まれた「取り残された人たち」が感じる阻害、排除、低い自己肯定感、不公平・不正義への憤りが大きな原因となっていると話していました。

「自分にとっての正義」とはどのようなものなのか、その正義を貫くことはいいことなのか、「取り残された人たち」のために何かできることはあるか、様々なことを考えるきっかけになりました。

2019年4月に発生したスリランカ同時爆破テロ事件について

次に、特定非営利活動法人パルシック代表理事の井上礼子さんより、スリランカ同時爆破テロ事件についてお話しいただきました。

井上さん

 

事件は教会やホテルなどを狙ったもので、死傷者のうちの多くがスリランカ人だったそうです。数日後にはIS(武装組織「イスラム国」)による声明が出され、支配地域(バグズ)が奪われたことへの「報復」であると述べていることから、教会をターゲットとした理由が明確となりました。9人が自爆、約200人が逮捕されましたが、自爆した人々は高学歴で裕福な家庭の出身者が多いことも指摘されています。

井上さんによると、元来スリランカでは、仏教、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教が平和裏に共存していたそうです。10年くらい前からイスラム原理主義として知られているワッハーブ派の影響が見られるようになり、様々な宗教的な背景から事件の予兆が感じられたとお話ししていました。さらに、事件の後にも社会的な緊張が広がっており、各地でイスラム教徒やモスクを襲う事件が起きていたそうです。

その一方で、スリランカ社会では「2回目」を防ぐための様々な取り組みも行っていました。この中でも特に私が驚いたことが2つあります。1つ目は、イスラム教徒に抑制を促すために公の場で顔を覆う服装を禁止する政策が出されたのですが、捜査に協力するためにイスラム原理主義者の中にも積極的にニカブやブルカと呼ばれる目の周り以外を覆う衣服の着用を避けた人々がいたことです。2つ目は、反イスラム暴動のさなかであるにも関わらず、イスラム教徒の家族をかくまったキリスト教徒や仏教徒も多くいたということです。行政だけでなく市民の立場からも積極的な活動が見られたことに、「絶対に2回目は起こさせない」というスリランカ社会全体としての強い気持ちが表れているように感じました。

2つの事件の背景・構造から見えてきたもの

聖心女子大学教授で、元シャプラニール代表理事の大橋正明さんより、ダッカ襲撃事件とスリランカ同時爆破テロ事件の共通点やそこから見えることについてお話いただきました。

大橋さん

 

2つの事件の共通点として、事件を起こしたのが高学歴の若者のイスラム教徒が多いことや非イスラム教徒の外国人をターゲットにしていることを挙げ、正確な動機はわからないが、背景にはどちらのテロリストにとっても許しがたい「大きな不正義」が存在していて、それへの強い反発があったと推定しています。

私たちは、途上国が努力すれば先進国に追いつき、宗教は表に表れないようになり、西欧型民主主義をみんなが堪能するという単純な発展史観を抱きがちですが、その単純な発展はすでに破局しており、長く苦しむ人たちや変わらない不正義に怒りを持つ人たちが多く存在しています。そのような見えにくい深刻な不正義が世界各地に存在し続けていて、それを許せないと強く思う何人かが絶望して暴力的な行動に移しているのです。

それは決して他人事ではなく、日本でも起こりうることです。日本でも、貧困層(特にシングルマザーや低年金老人の世帯)の増加、所得格差の増大、環境汚染など深刻な諸問題に直面していますが、当事者かその身近でない限りは見えにくい問題となっています。結局は他者(弱者)にとっての不正義への無理解・無関心がこのような事態を許していると考えられるため、これらの問題に関心を持つこと、諦めないで公正を求める発言と(非暴力の)行動をすることが大切であるとお話ししていました。

3人の鼎談

大橋さんの話を受けて、藤崎さんは「NGOで働いている私でさえ、自分で体験するまで日本での諸問題を自分事として考えることができなかった中で、自分のできることは他に何があるのだろうということを問うている。来てくださった方には伝わることがあると思うが、大半の方々には私たちの声は届いているのだろうか、声を出している私は本当にそれをわかっているのだろうかと思った」と話しました。

井上さんは、「問題がグローバルになっていろんな国々が支えざるをえない状況に対して日本は完全に閉じてしまっていて、この態度はこれから先通用しないだろう。世界が良くも悪くも支えあって、あるいは被害をもたらしあっている構造の中に日本だけ免れているわけにはいかない、自分たち自身を開きながら準備していかなければならない」とお話ししています。

三人

 

参加者の方々からいただいた質問を一部ご紹介します。

Q:(藤崎)3年経ってバングラデシュ社会での事件の受け止め方はどうなりましたか?特にメディアやバングラデシュ社会全体で事件のことをどのように振り返りましたか?

A:7月1日に追悼式が行われて多くの人が参列し、新聞でも一面で取り上げられていました。バングラデシュの人々にとって今でも忘れられない大きな傷となっていて、バングラデシュのために働いていた人たちを思う気持ちは今でも強くあります。テロなどの注意喚起はありましたが、特に事件などはなく町は普通でした。

Q:現在のバングラデシュの治安状況はどうですか?

A:(藤崎)バングラデシュに住んでいた人々の生活は、事件前後で特に変わっていません。外国人だけが自己規制や警戒をしていました。事件の後に特に治安が悪くなったということはないですが、個人的には夜は早く帰るようになったなど警戒は解けませんでした。

(大橋)このようなテロリズムがまた簡単に起こるとは思えないので、早く外務省の危険レベルを1に戻してほしいと思っています。バングラデシュを中東のような危険な国のように思われてしまうのは嫌です。そういう風に見えますが、現実にはそんなことはない。

Q:スリランカのテロ事件の背景や社会状況はどうですか?

A:(井上)2009年に民族間の紛争が終わり、2011年には難民が帰還し、2015年くらいから問題が発生し始めています。経済的な背景よりも日本では理解しづらい多文化社会、多民族社会、多宗教社会の難しさのような社会の中の問題が、グローバルな問題と結びついたことが背景としてあると思います。

 

参加者の方々からは、

「イスラム原理主義などを問題としてつきはなすのではなく、彼らの存在によりそって彼らにとっての不正義に目を向けるというお話が印象に残った」

「バングラデシュとスリランカの状況を理解できて、改めてテロを生み出す背景やテロをなくしていくために必要なことについて考えることができた」

「世界で起きている様々な社会要因と、身近な問題によって過激的な思想などが生まれてしまうということが印象的だった」

「世界は助け合いながら、傷つけあいながら、生きている。日本は閉じていていいのか。という井上さんの言葉が刺さった」

など、様々なお声をいただきました。

ダッカ襲撃事件とスリランカ同時爆破テロ事件から、世界的に「取り残された人たち」の思いやその原因、今後もテロの要因となりうる様々なことが見えました。また、他国の人々や他宗教との関わり合いについて改めて考える機会になりました。

 

講演の様子

 

今後もシャプラバ!は、SDGsや子どもの権利など様々なテーマで開催されますので、みなさま奮ってご参加ください。

またみなさまとお会いできることを楽しみにしています!

次回の講座シャプラバ!は、8/17 講座シャプラバ!国際協力入門編

バングラデシュ事業担当の峯ヤエル職員がお話します。

 

国内活動グループインターン 青柳沙恵

 

 

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