3月20日、「ネパール人ママのための『日本の小学校安心ガイド』~1日の流れから日本語授業まで」というテーマでネパール人のお母さん向けのおしゃべり会「チョウタリ」を開催しました。今回は2025年度最後の実施回となります。

知っているようで知らない日本の小学校
前回のチョウタリでは「わが子の在留資格~キャリアとライフステージに合わせた選択肢」と題して開催しました。
その際、保護者からは、インターナショナルスクールか日本の公立学校のどちらに通わせるかという悩みが聞かれました。
その選択理由として、経済的な事情を挙げる方が多い印象を受けました。例えば、「本当はインターナショナルスクールに通わせたいが、学費や交通費を考えて日本の公立校にした」「今はインターナショナルスクールに通わせているが、学費が高いのでので、来年から転校させるかもしれない」というような意見が多く見られました。また、在留資格の更新が叶わない場合は母国に帰ることも想定し、現地に馴染みやすいインターナショナルスクールを選ぶというケースもありました。
その一方で、往々にして日本の小学校について知る機会が十分ではなく、同胞のネパール人コミュニティからの口コミを頼りに日本の公立学校を理解しているという現状もあります。(もちろん、日本に住んでいるからこそ、積極的に日本の学校を選択する保護者の方もいらっしゃいます)。
そのため、第3回のチョウタリで、実際に日本の小学校に通い、日本の大学まで卒業したネパール人の若者が「小学校時代の思い出」を語ってくれた際には、多くの人が興味深く聞き入っていたことが印象的でした。
そこで今回のチョウタリでは、日本の小学校についてより具体的なイメージを持ってもらうためのプログラムを企画しました。小学校の一日の流れや、日本語の「取り出し授業」がどのように行われているかについて、実際に取り出し授業の講師をされている元JICA海外協力隊の田中 文絵さんをゲストスピーカーにお迎えし、お話を伺いました。
おしゃべりをしながら知る日本の小学校
田中さんのお話の中では、「通学路」の仕組みや、持ち物すべてに名前を書くルール、給食当番の「給食着」の使い方など、ネパールの学校にはない日本独特の文化・ルールが共有されました。また、防災訓練や校内音楽会、運動会など、最近のネパールの学校でも少しずつ取り入れられ始めているイベントが、日本の小学校にもあることが紹介されました。ただ、これらはネパール国内でも比較的新しい取り組みであるため、保護者が子ども時代には経験してこなかったものです。

今まで日曜日に開催していましたが試験的に今回は初めて祝日に開催したことや、あいにくの天候も重なり、参加者は6名に留まりました。しかしながら、事後アンケートでは「日本の小学校について、より具体的にイメージできるようになった」という嬉しい声が多く聞かれました。

ヒアリングから見えてきたこと
後半では、個別にヒアリングを実施し、プログラムの感想に加えて、個々の興味関心や生活の中での困りごとなどを聞き取りました。
今回に限らず、毎回のヒアリングで(ご本人かその友人かは明言しないものの)「DV」についての困りごとを抱えている回答が見受けられます。また、孤独感を抱えていると回答する方もいました。安心して自分らしくいられる場や、人とのつながりのニーズを強く感じています。
それ以外にも特徴的だったのは、家庭内における子どもとのコミュニケーション言語です。今回は参加者が少なくヒアリングが限定的であったため一般化することはできませんが、片方の親が子どもと日本語で話し、もう片方の親が主にネパール語で会話する、というような世帯が見られました。
日本の公立校に子どもが通う場合、子どもが思春期を迎える頃に、ネパール語が話せない子どもと、日本語が不自由な保護者の間でコミュニケーションが取れなくなってしまうケースがよく聞かれます。こうした「家庭内での断絶」は、子どもが家庭で自分の考えや悩みを相談できず、親もどう接していいか分からないという悪循環を生みます。親の経験した思春期と今の日本での子どもの現実が異なるため、アドバイスが的外れになって子どもが頼ることを諦めてしまうのです。結果として、子どもは誰にも相談できずに家庭内でも深い孤独を抱えることになります。こうしたリスクを未然に防ぎたいという思いもあってか、チョウタリに参加する保護者の間で、日本語学習へのニーズが一定数あることも改めて分かりました。

4回のチョウタリを終えて
ネパール人母子向けに、必要とされている情報をわかりやすく、楽しい安心できる雰囲気で伝える場を作る――。この目的で始まった「チョウタリ」は、2025年度でのべ64名(大人41名、子ども23名)の方にご利用いただきました。
各回で振り返りを行い、「協力隊ネパール会」との連携の中で、地域でネパール人支援をしている元協力隊員や、現役で研究を継続されている方など、多様な視点からインプットをいただき、多くの学びを得ることができました。
日本に住むネパール人母子が抱える困りごとには、「日本語学習」「キャリアと在留資格」「生活情報の入手難」といった多くの人が共通して抱える課題があります。その一方で、一部の方は、人には相談しづらい「DV」「アルコール依存」「不妊症」といった私的な課題を抱えつつも、専門の相談窓口に繋がりにくくなっている現状も見えてきました。
ルールや制度などの生活情報と合わせて、当事者が本当に必要としている情報を、個人の状況に寄り添って伝えられる環境を整えること。それこそが「多文化共生」を進める上で、非常に重要なエッセンスであると考えます。
(この事業は令和7年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業を受けて実施しています。)
事業推進部 宮原麻季
