こんにちは、事務局スタッフ・広報担当の長瀬です。日頃よりシャプラニールへ温かいご支援をいただき、ありがとうございます。
10月末より始まった『全国キャラバン2025』では、前バングラデシュ駐在員・内山が、バングラデシュの児童労働、特に「家事使用人」として働く少女が歩んできた10年のストーリーをお伝えしています。彼女をを取り巻く社会状況も交え、長年支援を通じて見えてきた変化と成長も紹介しています。全国15箇所以上を訪問する予定で、会員やマンスリーサポーターの皆さまをはじめ、今回初めてお会いする方々とも交流する機会となっています。

さて、私たちは紅葉の美しい札幌市では(札幌でのキャラバン開催は10年ぶり。前回はネパールのフェアトレード団体WSDO代表ラムカリさんが来日しました)、北星学園大学・北星学園大学短期大学部にお招きいただき、午前は講演会、午後はバングラデシュの伝統刺しゅう「ノクシカタ」展示とキーホルダーワークショップを実施しました。児童労働の現実に向き合い心が揺さぶられた講義と、フェアトレードに触れて生活を振り返る時間──“自分ごと”として考える一日となりました。
北星学園大学の講演:「少女たちにとって幸せとは何か?」を考える
午前の部では、「フェアとは何かーバングラデシュの児童労働から考える」をテーマに、バングラデシュの児童労働の現状や複雑な社会背景、そして私たちの大切にしている少女たちが「子どもらしい時間を過ごせる場所(支援センター)」での取り組みや雇用主や保護者(おとな)への啓発活動とともに、元使用人であったタスリマさんの10年の軌跡についてお話をしました。

学生の皆さんは、タスリマさんと歳が近いこともあり、幼少期からの経験を自分の生活や育った環境と照らし合わせながら真剣に考える様子が印象的でした。
<講演を聴いての感想>
・「家事使用人」の存在をはじめて知った。普段使っている物・食べ物も児童労働によってつくられているかもしれないと知り、自分たちがその子たちの力になれることはないかと考えた。
・バングラデシュと日本では生活の質がちがうため今までは他人事のように考えていたが、自分より小さい子が働いているという状況を知り、他人事のように考えてはいけないと感じた。
・児童労働の話は聞いたことがあったが、ここまで過酷なことだとは思っていなかった。
・生きてきた環境でこうも倫理観や常識が変わるものかと驚いた。児童労働を止めないおとなにがっかりした。
・女性が多く雇われていることに同じ女性として悲しくなった。
・リアルな内容で胸が痛くなった。家事使用人の児童期の生き方が驚いた。
・この問題を解決することは一筋縄ではいかないが、シャプラニールのような団体が一人でも多くの子の人生を豊かに変えるきっかけになっていることは確実であり、尊敬の意である。
もし自分が○○だったら、どう行動する?
多くの皆さんが印象に残ったと話してくれたのが、ロールプレイ体験。
3つのグループに分かれ、もし自分が、「子ども(ルビナ)」「子どもを働かせに行かせたい父親」「学校に通ってほしい母親」「仲介人」「雇用主」「村の校長先生」だったらと役になりきり与えられた情報(セリフ)を読み上げます。そして「ルビナを働きに出せるか」 or 「出さない」を議論しながらも、「子どもらしく生きる」ことや「ルビナにとっての幸せとは?」を一緒に考えました。
結果は三者三様に。全会一致で働きに出すを選択したグループ、多数決で働きに出すと決断したグループ、そして母親が勉強をしたいというルビナの意思を尊重し働きに出さないとしたグループ。異なる立場を理解した上で、経済面と気持ちの面とを葛藤をしながら答えを導きだしていました。
<ロールプレイを体験して>
・「失われた子どもの時代」という言葉が印象深かった。子どもらしく生きる重要性について考えた児童労働のロールプレイが印象に残った。
・働き出す側と出される側の両方の面から考える機会ははじめてだったので学びになった。
・ロールプレイでは(働く少女ルビナを演じた)、個人的には働きに行きたくないと意見を出したが、自分がルビナの立場だったら働きに行くと言ってしまうと思った。
・児童労働について考えることはあっても、当事者になりきることはなかったのでより深く考えられた。


議論した後は、「あなただったらどういう意見をいう?」というと投げかけに、「家族のことやお金の心配をすると働きに出さざるを得ない状況(仕方ないのかもしれない)と思ったが、本当は勉強を続けて欲しかった」「ルビナが働けば彼女の子どもも働くことになるかもしれない。勉強して負の連鎖を断ってほしい」「若いだけでルビナの意思が尊重されないのはどうなのか。結婚させることが優先されるのは今の価値観にあっていない」など、積極的な議論、意見が聞かれました。
講演のお話の中で、タスリマさんは「子どもは勉強し、遊び、人生を楽しむべき。月末に親にお金が入っても、子どもの心に平安は訪れません。いかなる状況下でも子どもを働かせないで」と自身の経験を踏まえて話しています。


シャプラニールは「子どもにすべての責任を負わせている」ような社会構造や考えは変えていく必要があるとと考えます。今回は、多くの学生の皆さんと意見交換することができ、とても貴重な時間になりました。子どもたちが当たり前に持つべき、勉強をする権利、家族と暮らす権利、意思を表明する権利など、働かされることで奪われてしまう権利を守るため、今後も現場の声を伝え、共に考え、行動していきたいと思います。
◆本講演の様子は毎日新聞社と大学内ウェブサイトに掲載されました。ご取材をいただきありがとうございました。
・毎日新聞社 北海道版「隠れた児童労働」知って バングラデシュで支援のNPO 北星学園大で公開講座
・北星学園大学ウェブサイトはこちら
バングラデシュの伝統刺しゅうノクシカタとストラップづくり
ご存知でしょうか。札幌市は、2019年に日本で5番目のフェアトレードタウンに認定されています。市民、企業、教育機関、行政などが一体となって「まちぐるみ」でフェアトレードの輪を広げる活動を推進している自治体なのです(詳細)。そして、北星学園大学は「フェアトレード大学」と認定を受けており、「北星フェアトレード」のメンバーを中心にフェアトレード普及活動が長年続けられてきました(詳細)。
午後の部では、北星フェアトレードの皆さんと協働でフェアトレードにまつわる企画を実施。この度シャプラニールのフェアトレードブランド「クラフトリンク」で再販をすることとなったバングラデシュの伝統刺しゅう「ノクシカタ」大判の展示と、北星フェアトレードの皆さんが長年実施しているガラスビーズを使ったブレスレットづくりを行いました。


会場に立ち寄った学生の皆さんにクラフトリンクの商品を手に取ってもらいながら、活動についてご紹介。「ネパールでコーヒーが採れるのは知らなかった」「イエティがかわいい」「北星フェアトレードの活動をインスタでフォローするね」と興味を持つ機会につながり嬉しい限りです。


ガラスビーズは数十種類の中から選ぶも作業が楽しい!その場にいた参加者の皆さんと会話を弾ませながら、組み合わせは無限大で随分悩みながらビーズを5つ、それに合う紐を選びました。皆さんお気に入りの世界に一つのストラップをつくれてとても満足されていました。会場へお越しいただいた皆さま、ありがとうございました!


「フェアトレード」はかわいい、楽しい、美味しいという入口が生活の身近なところにあります。ふらっと立ち寄ったスーパーには今時期ですとチョコレート、コーヒーや紅茶も販売されています。ぜひお手に取って、どこでどんな人たちがつくっているのか、関心を寄せてもらえると嬉しいです。これからも、東京と北海道と場所は離れていても、フェアトレードの普及していこうという共通の想いは同じ。これからも協働して活動を盛り上げて行けたら嬉しいです。

<おまけ情報>
北星フェアトレードが12月7日(土)開催の「あつべつフェアトレードまつり(新さっぽろサンピアザ1階 光の広場)」に出店されます!お近くの方はぜひお立ち寄りください。ストラップづくりや、クラフトリンクの商品をお手に取ってご覧いただけます。最新情報は北星フェアトレードの公式インスタグラムをご覧ください。
そして、まだまだ盛沢山の札幌講演では、夜の部を、フェアトレード雑貨&レストラン「みんたる」 さんで実施しました。開催レポートの続きはもう少々お待ちくださいね。
