先月マクワンプール郡での児童労働の予防と削減の活動のメディア取材を受けました。さまざまな角度で児童労働の問題を伝えていただけるよう、いろいろな関係者へのインタビューを設定し、児童労働の経験のある子どもとその家族へのインタビューも3組実施しました。

そのうちの1人は2024年5月に終了した児童労働削減事業の実施中に、カトマンズのカーペット工場から救出された少年、ディーパックさんです。当時の報告書では雇い主からの暴力を受けていたことなどから、カウンセリング支援をしていると書いてあり、写真も顔が隠されていたため、インタビューを受けられる状態かどうか少し不安がありました。

自宅に招き入れてくれたディーパックさんは、すっかり立派な青年になっていて私の心配は杞憂に終わりました。当時の話のほか、救出されたあと復学したものの、働いていた期間学校に行かなかったせいで勉強についていくのが難しく、年下の子どもたちと一緒に授業を受けることになり通学や勉強のモチベーションが下がってしまい結局学校をやめてしまったこと、弟(現在16歳)といつか海外に働きに行こうと思っていることなども話してくれました。

現在彼が心穏やかに家族と暮らせていることがわかり、外から来た日本人の記者さんに笑顔を見せて話し、写真を撮ることを許可できるまでに快復していることに安堵しました。また、心理ケアを担当したパートナー団体のカウンセラーに対するリラックスした様子から、彼女がディーパックさんや家族にとってどれほど支えになってきたのかを知りました。インタビュー後の帰り道、救出当時のことを振り返って、カウンセラーは泣いていました。

今は明るく話せるようになったディーパックさんとそれを見守るカウンセラー

児童労働は、働いている現場を見つけて子どもを救助するだけでは終わりません。働くのをやめた子どものその先の生活や人生を支えていくこと。家族や雇い主、地域の人たちに児童労働による弊害を知ってもらい、子どもが子どもらしく暮らせるように働きかけること。社会を変えていくには長い時間と根気強い活動、あきらめない気持ちが必要です。

スタッフや関わってくださる方々のあきらめない気持ちがこの活動を支えていることを、彼女の涙から改めて感じました。報告書でしか知らなかったディーパックさんに出会えたことは、私にとっても活動を振り返り、さらにこれからもあきらめずに活動を続けていくための貴重な機会となりました。

取材の様子は5月4日の朝日新聞朝刊のGLOBEに掲載されました。
ウェブ版はこちらからお読みいただけます。ぜひご覧ください。
https://www.asahi.com/withplanet/article/15736283

ネパール事務所長 横田 好美