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共生を、交響に言い換える
「『交響(シンフォニー)』と言った方が近いかな」福澤さんはシャプラニールのキーワードである「共生」について、このように答えてくれました。「共生は、一緒に取り組むという同時感は伝わるが、異質性や多様感がいまいち伝わってこない」福澤さんにとっての共生は、オーケストラのように、曲を表現するという目標を共有して、多様な楽器が、それぞれに響き合いながら、曲を奏でることなのです。また、交響は、こうきょう。公共という意味もそこには含まれているようです。

違いよりも同一性に気づく
共生を交響という言葉にあえて言い換えた背景には、福澤さんがバングラデシュに関わり始めた当時の経験があるのかもしれません。「初めて行った海外がバングラデシュ。バングラデシュに行く前は、外国とはどこか異次元のような思いで、日本との違いばかりに目がいっていた。でも、実際に行ってみると、違いよりも同一の感覚に気づくようになった」
シャプラニールが考える共生は、辞書に載っている以上の意味を持っています。「日本との違いよりも、同一性に目を向ける」という経験は、シャプラニールの共生につながる考えです。福澤さんはバングラデシュに関わり始めたときから、共生を感じていたのでしょう。だからこそ、あえて共生を言い換えたのだと思います。

シャプラニールは出会いの場
交響を実感する瞬間を、次のようにお話いただきました。「交響ということは、事務局を見ていても実感する。事務局に集い、また、去っていった人々の考えも実に多様。しかし、今の社会の状況をなんとかしたいという想いは皆に共通している」
シャプラニールには、スタッフに限らず、会員、ボランティアなども含めて、多様な人々が集ってきます。福澤さんにとってシャプラニールは「人と文化との出会いの場」です。「私たちは、貧困を解決することはできない。ただ、貧困の問題を解決しようとしている人々を集めることはできる」との考えからもそれがわかります。
自らの感性を信じて
これからのシャプラニールに対して、「(理論だけでなく)もっと自らの感性を信じて、自分の言葉で伝えること」と「NGOの立場から、教育や地域を問い直し、創っていくこと」に福澤さんは期待しています。私たちが奏でようとしている交響曲に向けて、さらに持っている楽器(=感性)と腕に磨きをかけていく必要がありそうです。


福澤郁文(ふくざわ・いくふみ)
株式会社デザインFF代表、グラフィックデザイナー。シャプラニールの前身である「ヘルプ・バングラデシュ・コミティ(HBC)」創立メンバーのひとり。1987年6月から1995年5月まで、シャプラニール代表を務める。今は、監事として、また、会報「南の風」のアートディレクターとしてシャプラニールと関わっている。「デザインは、情報に白い紙に息をふきこみ、生命を与えていくこと」