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「小さいおとなのようだった」 家事使用人として働く少女たちが通う支援センターを訪れた日本の高校生がつぶやいた言葉です。

2012年の3月、中学生・高校生スタディツアーで、日本の中高生を連れてバングラデシュを訪れました。旅のテーマは「バングラデシュで同世代の少女たちに出会う」こと。首都ダッカの高校生や農村部に暮らす少女たち、そしてダッカで家事使用人として働く少女たちとの出会い。

少女たちと交流するスタディツアー参加者

少女たちと交流するスタディツアー参加者

家事使用人として働く少女たちが通う支援センターで、身振り手振りや指差し会話帳を使いながら楽しそうにコミュニケーションをとる彼らを見ていると、ベンガル人も日本人もみんな同じ子どもたちのように見えました。おしゃれや楽しいことが大好きな、ごくふつうの女の子たち。でもそこにいる少女たちは家事使用人として働く子どもたち。家族と離れ、学校にも通えず、雇用主の家で朝から晩まで働いているのです。

 

1日にたった2時間、同じ境遇にいる仲間たちやお母さんのように優しく接してくれる先生たちと過ごせる大切な時間を支援センターで過ごしていました。私たちの前では辛い表情ひとつ見せず、明るく元気に質問に答えてくれましたが、その時いた6歳~18歳の少女たちのほとんどは、家の誰よりも早く起きて、誰よりも遅くまで働く生活をしていました。その現実を目の当たりにし、自分たちとはあまりにも異なる世界を知った日本人の高校生には、少女たちがまるで「おとな」のように映ったのです。

少女たちの明るさから、自然と笑顔になります

少女たちの明るさから、自然と笑顔になります

子どもが働かなければならないことへの疑問、まだ小さな「子ども」であるはずの少女たちの中身が「おとな」のようであること、周囲から「おとな」のように扱われていることに強い違和感を抱いたのだと思います。それでも家族のために働き、明るくふるまう少女たちの姿は彼らに大きな衝撃を与えました。「「おとな」であることがいい事か悪い事かはわからないけど、「子ども」でいられる時間が短いことはしんどそうだと思った。いつかあの子たちがもう少し、「子ども」でいられる時間が多くなるといいな」、そう話してくれました。

あれから8年。当時の参加者の多くは社会人になり、私は2人の女児の母になりました。あの時とはまた違った視線で働く少女たち、そして子どもを大切に思うがゆえに働きに出さざるを得ない少女たちの親の気持ちに思いを馳せます。

お料理でもお掃除でも、私のお手伝いが大好きな5歳の娘を見ていると、今この瞬間も誰かの家で使用人として働かされる子どもたちがいることを忘れてはいけない、そしてこの事実をたくさんの人々に伝えていかなければならないと強く思います。 まだまだ親や大人に甘えたい年頃の少女たちが、自分の未来の選択肢を与えられないまま、雇い主などから大人のように扱われて仕事をする、そんな社会は変えていかなければなりません。

私たちにできることは限られているかもしれませんが、どうか一緒に、働く子どもがいない社会を目指していきませんか。

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京井杏奈(きょうい・あんな)
国内活動グループチーフ
民間企業勤務を経て、2008年シャプラニールに入職。プライベートでは二児の母。

 

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<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>