ネパールの経済に関する統計を見ていて、すごいなぁと思うのは、海外に出稼ぎに行っている人からの送金額がGDP(国内総生産)に占める割合の高さです。2年ほど前の実績で、約17%にものぼります。それも90年代の末からの10年ほどで急激に増えてきていて、新規に出稼ぎで出国する人の数も、98年に約1万人だったのが今や23万人近くになるなど、その変化の激しさは尋常ではありません。これだけ増えてくると、統計には表れてこない「ヤミ送金」もかなりの規模になるのでしょう。実際、こうした出稼ぎによる送金が、人々の生活や社会の変化を大きく促しているのだろうと思います。
バングラデシュに駐在していた頃も、出稼ぎのインパクトの大きさはよく感じることがありました。もちろん、いいことばかりではありません。無理して借金をつくってまで出稼ぎに行き、だまされたり失敗したりで、かえってどん底の生活に落ち込んでしまう人もたくさんいました。バングラデシュの出稼ぎ送金額がGDPに占める割合はいま、約11%ほどのようですが、これは国全体の経済が順調に発展しているため、ネパールほどは大きく見えないだけ、という側面もあるようです。
国家の経済に占める出稼ぎの重要性が世界で一番高いのはフィリピンだと言われてきましたが、このままではネパールやバングラデシュも、リスト上位の常連になってくることは必死でしょう。いずれにせよ、「出稼ぎ」というものをどう考えればいいのかは、これからネパールという社会を勉強しつつ、何をすべきか考えていかなければならない私にとって、大きなテーマになりそうです。