今夜はショベ・バーラト。アラビア語ではライラ・アルバラーアというそうです。ラマダン(断食月)が始まる前の満月の夜、ムスリムの人々にとっては聖なる夜です。バングラデシュでもムスリムの人々は一晩中礼拝をしてこの夜を祝い、翌日は亡くなった親族のお墓参りをします。甘いお菓子やパンをつくって、貧しい人たちに分け与えたり、断食をしたりもします。今日は朝から近所で牛を捌いている人を見かけました。午後にはお線香かロウソクのようなものを売っている屋台も出ていました。

先ほど見たテレビ中継では、国立モスクで祈りをささげる男性たちにインタビュアーが「何をお祈りしていますか」と尋ね、おとなたちは「来年安心して暮らせるように」「平和を祈りました」、子どもたちは「勉強がよくできるように」などと答えていました。

お墓参りをするというのでムスリムにとってのお盆みたいな日なのかなと思っていたら、ちょっと(かなり)ニュアンスが違いました。今夜は聖なる「祝福の夜」であると同時に、アッラーが生ける者すべての来年の運命を決める「布告の夜」なんだそうです。誰が生き、誰が死ぬのか。誰が罪に問われ、誰が許されるのか。そういったことが毎年この夜、神に決められるのだと。それでは確かに夜を徹して祈らずにはいられませんね。

私のバングラデシュ駐在の日々はいつまで続くのか、あとにどんな人が来るのか、来年どんなことがあるのか、そんなこともアッラーは今夜決めるのかな。

アッラーよ、どうか悔いのない日々を過ごさせてください。人々に役立つよい仕事をさせてください。離れて暮らす家族をお守りください。よい後任をみつけてください。バングラデシュにも、日本にも、他の国々にも大きな災害が起こりませんように。

イスラム教徒ではありませんが、思わずおごそかに祈りたくなる夜です。

参考文献:「イスラームを知る32章」ルカイヤ・ワリス・マクスウド著(明石書店)