バングラデシュの教育制度は5-5-2制です。5年間の初等教育のあと、5年間の中等教育、その上に2年間の上級中等教育があります。日本では中学1年生、とか高校2年生、といった言い方をしますが、バングラデシュでは中等教育(High School)に行っている生徒の学年を言うとき、初等教育の学年から続けて、7年生とか10年生、という言い方をするのが普通です。

5年間の中等教育、つまり10年生の課程を終了すると、「SSC試験」と呼ばれる全国共通試験があります。S.S.C.はSecondary School Certificate(中等教育修了証)の略。SSC試験に受かるとこの修了証がもらえるのですが、この試験に受かるかどうか、またどんな成績で受かるか、ということは子ども本人にとってはもちろん、家族にとっても一大事で、試験初日はたいてい親が会場まで付き添い、合格発表の日は親も朝からそわそわと結果を待ちます。子どもにとっては相当プレッシャーのかかる試験らしく、試験に失敗して自殺する子が毎年数人出ます。

このSSC試験に受かると、カレッジと呼ばれる2年間の上級中等教育に進む資格ができます。カレッジでの11年生、12年生を終えたあとは、今度は「H.S.C.(Higher Secondary Certificate)試験」という共通試験があり、これに受かるとまたこの修了証をもらえます。大学教育を受けるためには、HSCを取得していなければなりません。

SSC取得、HSC取得は履歴書に書ける資格で、これらの試験に受かるかどうかは、進学するにせよ、就職するにせよ、その子の今後の人生に大きな影響を及ぼします。ハイスクールやカレッジの生徒たちは、これらの共通試験のために何ヶ月も必死で受験勉強をします。1年目に受からず、2年目に再挑戦する子も少なくありません。受験料や参考書代が払えず、働いてお金を貯めてから試験を受ける、という子もいます。

今回サイクロンで被災した地域にも、当然ながらこのSSCやHSCに向けて、必死で勉強していた生徒たちが大勢いました。しかし、高潮で家や家財が流されてしまった家庭では、この子どもたちの試験準備の参考書も流されたり、水に濡れたりして失われました。

シャプラニールでは、今後も継続していく救援・復興支援活動のひとつとして、被害の大きかったバゲルハット県ショロンコラ郡で、SSC試験受験生500名に英語・数学の試験準備参考書とノートを、HSC試験の受験生120名に同じく英語・数学の参考書とノートを配布することにしました。ショロンコラ郡では被災した一般児童や生徒が学校で学ぶための教科書は政府から配布されるそうですが、受験生のための参考書は対象にならないため、配布を決めたものです。

今年のSSC試験は当初2月27日から始まる予定でしたが、サイクロンの影響を考慮して1ヶ月延期され、3月27日から始まることになりました(試験は1日では終わらず、数日続きます)。HSCの試験はSSCよりだいぶ後になります。

SSC試験まであと2ヶ月半。被災地の受験生たちにも、最後まであきらめずがんばってもらいたいと思います。