国際母語デーによせて

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先週、事業中間評価のためノルシンディ県の東にあるチョール(河の中洲)を訪問した。

バングラデシュでは「チョール・ハオール(低湿地帯)」とまとめて呼ばれることが多い。四方を水に囲まれて交通の便が悪いために、教育や医療、その他の行政サービスが行き届きにくいという共通項がある。

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<人も生活物資も移動はすべて小舟を利用する>

県庁所在地から車で一時間かけて船着場に行き、その後エンジン付き小舟で1時間半。ミルジャルチョールという地区に到着した。ここにある公立小学校では1年生から5年生までの約360人が、午前と午後に別れて授業を受ける。学校には小さな教室が3つ、そのうち1つには机もイスもなく子どもたちは床に座って教師を待っていた。

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バングラデシュは各国ドナーやNGOとともに、初等教育の完全普及をめざして様々な取り組みを行ってきた。その結果、国全体として就学率は大きく向上し90%前後となっているが、そこには地域間の大きな格差が存在する。今回訪問したチョールはそんな格差を象徴する地域でもある。

全体に就学率が上がったとはいえ、小学校5年生を終えるのは就学した児童の約7割しかいない。基本的な読み書きを学ぶ前に学校を辞めていく子どもたちの存在を忘れてはならない。教室や教師の不足、記憶優先の詰め込み教育、貧困や未だになくならない早婚の問題などが複雑に絡み合ってこの状況を作り出している。

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さらにバングラデシュにはベンガル語を母語としない数多くの先住民が住んでいる。この子どもたちは言葉の壁だけでなく、時には生活習慣や宗教などを理由に特別扱いされながら、ベンガル語で学んでいる。そうしなければ、進学も就職も難しいからである。

この国において基礎的な教育の普及に必要なのは、貧困削減や親の意識を変えていくだけでなく、地理的に、そして社会的に不利におかれている人々の状況に配慮した施策を行うという明確な意思と強い実行力が必要なのだ。

母語を守るために多くの犠牲を払い独立を獲得したバングラデシュだからこそ、ここに生きる人々の多様性を尊重した社会を作っていくことに力を尽くして欲しいと強く願う。

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