明日は外出禁止令が朝5時から夜11時まで解除されることになりました。昨日は朝8時から夜10時まで、今日は朝6時から夜11時までだったので、少しずつ解除の時間が長くなっているわけですが、一気に完全解除とはいかないようです。しばらくこの状態が続くのでしょうか。

今日はJICAの専門家として3年5ヶ月滞在され、間もなく帰国されるK先生の奥様、ミセスKの、お別れ会を兼ねたタゴールソングのコンサートがありました。ふわっとした雰囲気で、シックなサリーをさりげなく着こなされているミセスK。タゴールソングと出会ってその素晴らしさに魅かれ、音楽学校の門をたたき、こちらの先生に弟子入りされたそうで、今日はその先生方と一緒に11曲のタゴールソングを披露されました。耳に心地よい、のびやかなお声で、ベンガルの農村風景や、雨や風、おさげ髪をたらした村の少女の姿が目の前に広がるような、タゴールの世界に引き込まれました。きっとずいぶん歌いこまれたのだろうと思います。1曲ごとに朗読のように日本語で詩の解説をされたのもよかったです。

詩聖、ラビンドラナート・タゴール(ベンガル語読みではロビンドロナート・タクール)が残したタゴール・ソングとよばれる歌は千曲以上あるといいます。その歌はベンガルの自然や生命の輝きを讃えるものや、神への思い、人生の悩みや歓びを歌ったものなど、タゴールの深い精神世界を反映しています。シンプルで滞りのない流れをもつベンガル語の詩は、歌のタイトルを読むだけでも、なんてきれいな響きなんだろう、と感じます。

私は恥ずかしいことに、最初から最後までちゃんと歌えるベンガル語の歌がろくにありません。童謡でさえも。今日は何曲ものタゴールの歌、それも深い哲学的な詩をもつ歌の数々を、気持ちよさそうに歌っていらっしゃるミセスKを見てとても羨ましく思いました。

私は以前インドのデリーに住んでいた頃は、近所の子どもたちに交じってインドの歌を習いにいったりしていたこともあるのですが、インドの歌のレッスンには楽譜がないことにまず面くらい、かなりご年配の女性の先生の気まぐれな教え方にもリズムが合わず、そのうち他のことに忙しくなって足が遠のいてしまいました。普段の練習は無伴奏でしたが、ほんの1、2回だけ、タブラーの伴奏でほかの子どもたちといっしょに歌ったことがあって、その気持ちよさはなんともいえないものでした。

ミセスKが通っていらした音楽学校は我が家から目と鼻の先にある女子カレッジの隣にあるそうで、金曜・土曜もクラスをやっていると聞いて、ちょっと心が動いています。この女子カレッジからはベンガル新年の日に学生たちのタゴールソングの歌声がずっと聞こえてきて、私はそれを独り自宅の窓を開けて聴いていたのでした(あとで聞いたらミセスKも「あの時私もあの中で歌ってたのよ~」とのこと)。タゴールソングは大勢の人が声をそろえて歌うと、大地から歌が湧いてくるように聴こえて感動的です。あの中に入って歌ったら気持ちいいいんだろうなあ...と思います。

あと1年あるんだから、ちょっとはベンガルの芸術に触れてみるのもいいなあ。でもやるならちゃんとやらないと中途半端な生徒じゃ先生も迷惑だろうし、休みの日はひっくり返って遅くまで寝てるような私じゃ無理かしら...。

現実は歌うどころか7月からの咳とカスカス声がまだ治らない私。コンサート会場で出会った知人・友人たちとお喋りしていたらますます声が出なくなってしまいました。ちゃんと続けて薬を飲まないからいけないんだ、タゴールソングに憧れる前にまずは喉の治療だ、と思ってコンサート会場からラーマン先生の病院に直行したのでした。