このところ出張もあってインドづいていましたが、バングラデシュの政情が気になる方のために最近の情報を少し。

カレダ・ジア元首相の長男でBNP幹部のタリク・ラーマンが逮捕されたのと前後して、選挙管理内閣はあらゆる政治活動の禁止令を出しました。これが出る前までは、外向きの政治活動は禁止されてはいましたが、政党内部の室内会合とか、文化行事に政治家が出席する、といったことは許されていました。でも、今はこういう「室内政治」さえダメ、ということになって、政党の事務所はもう空っぽで鍵がかかってるような状態です。

そんな中、アワミ連盟党首のシェイク・ハシナは、病気の親戚を見舞うとかいう理由で、1ヶ月アメリカに旅立ってしまいました。しかも旅立つ前に、「アワミ連盟が次に政権をとったら選挙管理内閣のやったことは全て是認する」と意図のよくわからないコメントを残して。

ハシナ女史が旅立ったと思ったら、数日後、新聞の一面に、ハシナの父で建国の英雄、シェイク・ムジブル・ラーマン(愛称:ボンゴ・ボンドゥ=ベンガルの友)とその一族を1975年に暗殺した犯人と目される元軍人が、アメリカで捕らえられ、近くバングラデシュに引き渡される予定だということが報じられました。

奇しくもこのニュースが報じられたのはボンゴ・ボンドゥの誕生日。この日、選挙管理内閣のフォクルウッディン主席顧問は、ボンゴ・ボンドゥの墓前に花を供え、5月のジアウル・ラーマン元大統領(元軍人でBNPの創設者。カレダ・ジア元首相の夫。1981年に暗殺された)の命日には、同様に墓前に花を供えると発表。今後も両党と同等の距離を保つ、ということのアピールなのでしょうが、普通に私のような素人が一連のニュースを読むと、「選挙管理内閣(&軍)とハシナの間に何か取引があったのかしら」などと思ってしまいます。

一方、新党結成のユヌスさんも、20日間の予定でヨーロッパ、アメリカを外遊中。ワシントンではゴールデン・トレイルブレイザー賞という賞の授賞式に出席、プレゼンターはヒラリー・クリントンでした。帰国は4月1日とのことです。

選挙管理内閣の法務担当顧問は、室内政治活動禁止は近日中に解除する、と発表しましたが、近日といっても2ヶ月なのか3ヶ月なのか。ユヌスさん、どうやって新党の政治活動をするんでしょう。

そんな感じで、選挙管理内閣(と軍)がこれから何をしようとしているのか、どこを着地点にしようとしてるのか、さっぱりわかりません。政治・集会の自由をここまで制限するというのは基本的人権の侵害で、長く続けていいわけがないですが、だからといってそれに対して普通の人々の怒りがたまってきている様子もなく、妙に静かで変に平和。庶民の関心は目下クリケット・ワールドカップだし。

その一方で、最近軍の飛行機などの演習が盛んに行われている、というウワサもあります。また、昨年全国で爆弾テロ騒ぎを起こしたイスラム過激派、ジャマトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)の幹部の処刑も近く、在住外国人には「報復テロにご注意」のお知らせが回っています。現地の人々はどこ吹く風、という感じですが。

何か起こりそうで、何もなさそうな、なんだか本当に先が読めない日々です。