ユヌス新党正式結成。山は動くか?

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昨日、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏が、正式に新党立ち上げを宣言しました。2月11日の公開書簡発表後、新党結成の決意や党名の構想などを語ってはいましたが、正式な立ち上げは昨日。今朝、二通目の公開書簡(英語の全文はコチラ)が新聞に発表されました。2月21日の言語記念日の直後、人々の愛国心が盛り上がっているタイミングに合わせたのでしょう。
公開書簡の仮訳を文末に掲載します。かなり長い手紙なので、ところどころはしょっています(特に「最初の準備チームのつくり方」の部分は長いので半分カット。それでもまだ長いですね)。前回同様、訳が下手なのにはご勘弁を。面白いのは、党設立後の今後の動きについて、「共鳴する人はこんな風に動いてほしい」という依頼が事細かに書かれていること。以前からユヌス氏の熱心な支持者の多くは学生と海外在住バングラデシュ人だろうと思っていましたが、やはりそのようですね。若者たちや在外の人々にとくに配慮した文面になっています。
私自身はユヌスさんの出馬には懐疑的でした。政治経験のないユヌスさんが、政治の世界でもみくちゃにされ、ちょっとした失敗を機に引きずりおろされて批判され、バングラデシュの人々がノーベル賞受賞の英雄も失うことになったら、目も当てられないじゃないか、と思っていました。知識人やNGO関係者が案外冷ややかなことを見ても、これは難しいんじゃないか、と思っていました。
でも、現在の選挙管理内閣の改革の中で、汚職に染まった過去の大物政治家たちの逮捕が容赦なく進み、今までアンタッチャブルだった超大物もどうやら射程距離に入ってきたらしいこと、軍もユヌスさんを支持しているらしいこと(はっきりはわかりませんが、たぶん)などを考えると、これに海外在住者の資金投入や若者の大きなムーブメントが重なれば、山は動くかもしれない、という気がしてきました。
歴史が動くのは様々な人々の思惑や意思が偶然の力も得て重なり、ひとつの大きな流れができた時。バングラデシュの地殻変動が、もしかしたら起きるかもしれません。
今後の人々の反応についても、追々、お伝えしていければと思います。
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ユヌスさんの公開書簡第2弾 (抜粋仮訳:藤岡)
また皆さんに手紙を書くことにしました。2月11日に私が書いた書簡に対し、これほどにも多くの返事が寄せられるとは想像もしないことでした。深く感謝します。皆さんが私が政界入りすることについて、これほどの論理と思いをもって後押ししてくれたことについて驚き、あらためてアッラーの祝福を感じています。(後略)
●私は皆さんのアドバイスに従い政治に参加します
皆さんの熱意に導かれ、私は新たな政治を作り出す皆さんの努力に加わることを決めました。私は政治に参加し、新しい政党をつくります。皆さんの願いを満たし、アッラーが私を祝福してくれるよう祈ってください。私の新しい政党の基盤づくりは、今回政界入りの決断に至ったプロセスと同様、皆さんの意見を聞きながら少しずつ進めたいと思います。
党の名前については、たくさんの提案をいただきましたが、「ノゴリク・ショクティ(市民の力)」に決めました。これは、すべての市民の中にある隠された力が放たれてこそ新たな政治を創造できる、ということを常に人々に思い出してもらうためです。縮めた愛称としては「ショクティ(力)」を使おうと思います。「前進せよ、バングラデシュ」のスローガンの元に、我々の愛する国を優秀な国々の仲間入りをさせたいと思います。また、党の中心となるモットーであり、今日の誇りある市民の心の中にこだまする公約としたいのは、「WE CAN(私たちはできる)」です。(中略)
私たちの党の政治は、過去のように人々を分断するものではなく、町や村の活動家がその意志決定の中心を担うものとしたいと思います。法を破る者はこの党のリーダーになることは許されません。国会議員選挙を含め、すべての選挙へのこの党からの候補者は、地域ごとの委員会で選出され、その人物の誠実さと能力を考慮して決定されます。公にアピールするためには、大規模行進以外の方法を選びます。女性と若者がこの党の生命線です。多くの若者・女性が党のリーダーとなるでしょう。この党はなにもかも自分の党の考えだけで決めるのではなく、他の全ての党や、市民や、専門家、国外居住者らと相談して決めます。(後略)
●私たちの政治
私たちの政治は、独立戦争の夢を実現する政治です。団結の政治、平和の政治、誠実さを打ち立てる政治、労働の政治、人々の運命をできるだけ早く変え、貧困を博物館入りさせる政治です。この政治は特定の宗教によらず、民主的で、汚職や、物事を不要に政治化させることと無縁の政治です。女性に平等をもたらし、若い世代の未来をつくり、外国の圧力に屈せず、高く頭を上げて世界に立つ政治です。(後略)
●この政治に関心をもつ人にやっていただきたいこと
今からこの政治を打ち立てる仕事を始めましょう。まずは今あるもので準備をすることから始めましょう。それぞれの選挙区、村や地区で、できるだけたくさん、20人のメンバーからなる「最初の準備チーム」をつくってください。もしあなたが自分の選挙区の外にいるなら、自分の地域を訪れ、そこの人々の連絡をとって、そこでのチームづくりのイニシアチブをとってください。誠実で能力のある候補者を選びだし、その人物を国や地方の選挙で勝たせることもあなたの仕事です。あなたのためにそれを代わりにやってくれる人は誰もいないのです。あなたの出来る範囲に応じて、資金やリソースを提供してください。可能な人は、「市民の力」の準備事務所やコミュニケーション・センターを自らのイニシアチブや資金で設立してください。必要なら、あなたの店や、個人の事業所や、家に看板やバナーを掲げてください。これがひとつの地域に多ければ多いほどいいのです。看板には、党の名前と、私たちのスローガン、「前進せよ、バングラデシュ」を書いてください。出来る限り、電話、手紙、ファックス、Eメールを受け取れる態勢をつくり、人々に情報提供し、人々の意見を集め、私に知らせてください。(後略)
●最初の準備チームのつくり方
(前略)準備チームは様々なグループの人々からなるものをつくってください。女性メンバーによる準備チームが、必ず同じ数だけ作られるようにしてください。女性チームづくりのため特に努力が必要でしょう。チームづくりをグループ分けするとしたら、以下のようになるでしょう。1.男子学生 2.女子学生 3.働く少年 4.働く少女 5.若い男性労働者 6.若い女性労働者 7.若い男性ソーシャルワーカー 8.若い女性ソーシャルワーカー 9.若い男性公職者 10.若い女性公職者 11.若い男性専門職 12.若い女性専門職 13.若い主婦 14.農民 15.労働者 16.専門家 17.公職者 18.小規模企業家 19.ビジネスマン 20.若い男性ビジネスマン 21.若い女性ビジネスマン 22.主婦 23.高齢者男性 24.高齢者女性
この全てのグループでチームを別々に作らなければならない、というものではありません。もしあるグループで人数が少なければ、ほかのグループに加わっても構いません。(後略)
●選挙区以外の場所で働いている人へ
選挙区の村から離れて仕事をしている人は、1週間の休みをとってあなたの村に帰ってください。村へ行き、そこで「最初の準備チーム」をできるだけたくさんつくり、それから帰ってきてください。これらのプロセスは、あなたが行かないことには始まりません。(後略)あなたの居間で政治を批判していても、何の望みもありません。今こそ過去の政治体質を覆すときです。あなたこそがこの変化の創造者なのです。もしできれば、長い休みをとって故郷へ行ってください。こんな風に政治を変える機会がまた来るかどうかわかりません。怠惰のためにこのチャンスがすり抜けてしまうことのないようにしてください。あなたの運命も、未来の世代の運命も、あなたの手にあるのです。
●サポーター・グループ
個人的な理由でこのような政治的組織づくりができない人は、どこでもあなたのいる場所で「市民の力」サポーター・グループをつくるか、サポーター・グループに入ってください。そしてグループをつくったことを私に教えてください。離れた地域にいる友達同士でも、Eメールや電話、ブログを使ってグループづくりができるでしょう。(後略)
●親愛なる国外の兄弟、姉妹たちへ
あなた方には特に感謝します。私は膨大なEメールや電話をあたなた方から受け取りました。あなた方は私への信頼を表し、政治の変化への関心を明確に示してくれました。今こそ動き始めるときです。お住まいの国でサポーター・グループを作り、その事務所やコミュニケーション・センターをつくってください。インターネットを有効に活用しましょう。あなたのバングラデシュの故郷の村や町でもサポーターグループづくりの一歩を踏み出してください。もしできれば1週間か2週間、一時帰国して、あなたの故郷でサポーターグループをつくり、彼らに資金援助してください。(後略)
●親愛なる若者たちへ
あなた方こそがこの国の偉大な力です。あなた方はこの国の未来をつくることができます。あなたは政治の分野の大きな変化を確実に欲しているでしょう。それならば、革新と熱情をもって一歩を踏み出すべきです。若者の全国的な組織を作らなければなりません。そして学校や大学で「市民の力」サポーター・グループをつくり、効果的な支援を作り出さなければなりません。そして「前進せよ、バングラデシュ」のスローガンを響かせてください。
●この国の女性たちへの呼びかけ
国民の半分は女性です。しかし、あなた方の意思決定プロセスの中での役割は無視されています。あなた方はバングラデシュの新たなアイデンティティの宣伝のためにも前へ出てこなければなりません。あなた方は新たな国の夢を現実にするための、非常に大きな勢力となることができます。あなたの親戚や友人を集めてください。「市民の力」サポーター・グループをつくってください。農村の女性から都市の女性まで、教師、医者、看護士、学生、皆が前に出てこなければなりません。今こそあなた方の抱えるジレンマや、怖れや、不安や、分断を払い落とし、毅然として前進すべき時です。この美しい国を平和の国にするため、前進してください。
●あなたが「市民の力」です
準備チームが各地に作られたらとても嬉しく思います。自らの労働や資金や資産をもって新たな政治の夢を実現するために前進する人々、あなた方こそが「市民の力」です。私はあなた方と共に働きたいと思います。多くの人々があなたの足跡の後ろに続いてくれると強く信じています。あなた方の前にある挑戦は大きく、時間は少ししかありません。しかし、市民の力は非常に強力であることを忘れないでください。あなた方すべてが心の中に「I CAN(私はできる)」という強い信念を持っています。私たちは「前進せよ、バングラデシュ」の宣言とともに国中を目覚めさせたいと思います。慈悲深いアッラーも私たちを助けてくれるでしょう。(後略)
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注:このユヌスさんの公開書簡の仮訳をこのブログに掲載したことは、バングラデシュの政治状況に関心を持つ皆さんに駐在員として最新情報をお伝えしたい、という藤岡個人の考えに基づくものです。シャプラニールの組織としての意向あってのことではありません。訳の間違いなどの責任も藤岡個人にあります。

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5件のコメント

  1. j、フォキール on

    ありがとう!藤岡さん。ユヌス氏の呼びかけを見て、バングラは大きく動くぞ!と思います。動いて欲しいですね!今は世界中で瞬時に繋がる時代ですから、100年の時間をかけて手作業から徐々に大量生産へと変化してきた日本人には、ひょっとして理解できない変化かも知れないと思います。そんな激動の時と所に居るというのはのはすごいことですよ!多分、日本のいや世界中のマスコミはバングラに半常駐駐在員を置くのではないでしょうか?!このブログは藤岡さん個人発・責とのことですが、シャプラニールは、是非とも有効に活かして欲しいと思います!1972年からバングラデシュの発展の為に活動を続けているのですから! ユヌスさんとはNGO仲間でもあるし!  一種、世捨て人の感があるフォキールですが、バングラに行きたくて少し熱くなっています!
    また、書きます!

  2. ふじおか on

    j、フォキールさん、いつもコメントありがとうございます。今後どんな動きになっていくのか、ここへ来て2年足らずの私レベルの者では正直全然読めません。もしかしたら、政治の混乱の中、漁夫の利で原理主義政党が大きく票を伸ばす、といったこともあり得るのかもしれないですし…。でも、とにかく地道に一生懸命生きるバングラデシュの普通の人々にとって、よい方に政治が変わることを心より願っております。

  3. うっしぃ on

    早速の報告、ありがとうございます! ホントに速報、ですね。私もユヌス氏が政治家になることには懐疑的でしたが、今回の公開書簡をみて、ユヌス氏らしい、政治のやり方ができるのでは、とも思えてきました。このような動きが政治につながるのであれば、本当の民主主義といえるのではないでしょうか。これからの動きが、楽しみですね。

  4. ホントですか? on

    藤岡さん、お忙しいのに本当にありがとうございます。
    言葉にできない震えがあります。どうなるか、変なことにならないか、うまく行ってもその後大丈夫かなどいろいろ考えてしまうと不安に駆られてしまいますが、とにかく前を向いて見守って行きたいと思います。バングラデシュのみんなが自分たちのことを自分たちで考え行動しそして正しい選択をすることを信じて。
    われわれ外部の者に何ができるのか、何をすべきなのか、あるいはすべきではないのか。新党に肩入れしすぎるのも、また外部の者が強制するのも正しくないですが、しかし、バランスを忘れないよう気をつけつつ、バングラデシュがよりよい国になるためのお手伝いが少しでもできればいいですね。具体的ないいアイデアはなかなか思いつきませんが、例えば各種情報をバイアスをかけずに農村の人々に伝えるとか、外国政府・国際機関関係者も含めて言うと、選挙が真に公正に行われるよう支援をするとか、それから首尾よく行っても実際に新党が政権を運営するとなると内部で不協和音が出たりまた未経験がゆえの失政も出るでしょうから、予めそういう事態を想定した支援を準備するとか・・・。
    不謹慎かもしれませんが、今バングラデシュに居る藤岡さん他の皆さんがうらやましいです。直ぐにでも駆けつけて、バングラデシュのみんなに少なくとも「国をよくするまたとないチャンス。よく考え、自らの判断を!」と声を掛けまくりたい・・・。

  5. ふじおか on

    うっしいさん、ホントですか?さん、コメントありがとうございます。今日、家賃を払いにいったとき、大家さんのお母さん(推定年齢60代前半)に、ユヌスさんの出馬についてご意見を聞いてみたところ、「いいんじゃないかと思うよ。とにかくもうこの国の代表は女はやめたほうがいいよ。『正直な男』がいいよ」ですって。うーーん、性別の問題じゃないと思うけど、確かにここしばらく首相は女性、しかも暗殺された政治リーダーの娘や妻でしたからね。この世代のおかーさんがそういう考えでユヌスさんを支持するのか~、と興味深かったです。
    こういうふうに漠然と支持する人はけっこういても、ユヌスさんの呼びかけに答えて本当に自ら動く人はどれぐらいいるんでしょうね。今日の昼食時、スタッフたちがまた熱く議論してたようですが、話を聞きそびれました。今のところ「1週間休みをくれ」と言ってくる人はいないです(笑)

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