本人のブログでも紹介されていましたが、わが事務所の小嶋駐在員の初めてのお子さんが10日前に生まれ、日本から送られてきたデジカメの写真を皆で見せてもらっては、お父さんとお母さんのどちらに似ているか、ひとしきり話題にしてワイワイしていました。「おでこの髪の毛の生え際の形が小嶋さんと同じだ!」という私の意見に、スタッフたちも、「アパの言うとおりだ!」と同意。生まれたての赤ちゃんというのは、本当にいろんな人に幸せな時間を運んでくれますね。

P1020064.jpg昨夜、私はもう一人、べつの赤ちゃんのお祝いに行ってきました。訪ねた家はミルプールにあるバングラデシュ人の友人、ディプとジュムルの家。彼らは夫婦とも別々のNGOのスタッフとして働いています。ちなみにベンガル人は皆小さい頃から本名以外にニックネームを持っていて、ディプ、ジュムルというのも彼らのニックネームです。

写真=ディプに抱かれたディップ。8ヶ月です。

ディプとジュムルは二人ともクリスチャン。結婚してから長い間子どもを授からなかった二人は、オールド・ダッカにあるマザー・テレサ孤児院から男の赤ちゃんを養子にもらうことを決め、様々な手続きを経て、晴れて一昨日この子を家に引き取ったのです。赤ちゃんにはシスターがつけた名前がありましたが、二人は父となるディプのニックネームに音が似たディップ(灯火)という名をあらためてこの子につけました。

二人はベンガル人ですがディップは少数民族のトリプラの子ども。本当の両親もクリスチャンだったそうですが、貧しさのため、6番目の子どもだったこの子を育てきれずに手放し、孤児院に預けたのだといいます。

ディプとジュムルは最初女の子を養子に、と思っていましたが、ディップと会って一目惚れ。シスターに「男の子を引き取ってくれる人が少ないので、ぜひ男の子を」と頼まれたこともあり、この子を養子にすることを決めたのでした。

昨日、ディプとジュムルは晴れて彼らの子どもとなったディップに教会で洗礼を受けさせ、孤児院のシスターやほかの子どもたちにお別れの挨拶をしに行き、夜は親戚一同が集まってこの子を家族に迎えるお祈りをしました。その夜の集いに私を招いてくれたのです。

P1020067.jpgその夜、集まってきたディプの親戚にはいろいろな人がいました。クルナからやってきたディプの伯父さん、伯母さんはバングラデシュの独立直後から戦争孤児たちのための孤児院を立ち上げ、今もたくさんの孤児院や学校を運営しているNGOの創設者。PKOでイラクに行っており、数日前に帰ってきたばかり、という叔父さんもいたし、その息子は私もCDを持っている人気ロックバンド、BLACKの元キーボーディストだったのにはびっくりしました。(彼らはギターとキーボードを持ってきており、私がリクエストした曲をその場で演奏してくれました)

写真=即席コンサート。黒いTシャツの彼が元BLACKのメンバー。

親戚がひととおり集まった後、イタリア人の神父さんもやってきました。ボリシャルから来た元銀行員のジュムルのお父さんが「一生の中でこんなに特別な、嬉しい日はまたとない。」と挨拶すれば、クルナから来たディプの伯母さんは「自分が生んだ子どもを育てることもどれだけ苦労が多いことか。血のつながらない子どもを育てることを決めたこの夫婦にはこれから様々な苦難があることでしょう。どうか、夫婦と幼子が困難に打ち勝ち、災いから守られますように」と祈り、最後に神父さんのお祈りで終わりました。

P1020068.jpg孤児院の子どもを家族に迎えたことを心から歓び、親族が一同に集まって夫婦と子どもを祝福し、彼らの未来のために真剣に祈る姿にはとても心を動かされました。決してお金持ちではない、中流階級の一家です。クルナの伯父さんはパーキンソン病を患っているし、ディプのお母さんも入院しているしで、いろいろ大変そうなのですが、赤ちゃんは「灯火」という名前のとおり、皆の心を明るくしてくれているようでした。

写真=ディップを抱いているのはジュムルのお兄さん。ジュムルは台所で料理中。

いつもながらジュムルのつくるベンガル料理はおいしく、苦しいほどお腹いっぱい。ディプ、ジュムル、家族の大切な日に招いてくれてありがとう。

ディップが健やかに育ち、あなたたちと家族全員に大きな幸せを運んでくれますように。